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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

植物栄養剤を作ろう

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地下図書館の秘密

迷宮都市マーヴェントの地下図書館。

それはよく言うことを聞かない子供に、親が言い聞かせる時に使われる。

いわく、言うことを聞かない子供はマーヴェントの地下図書館に閉じ込めてしまうよ、もしくは、地下図書館から鬼が来て連れていかれてしまうよ、と。

マーヴェントの図書館は、上は普通にどこにでもある図書館だ。本は迷宮からの収穫などもあり、かなり充実している。そこらの小国の王立図書館など軽く上回る蔵書量だ。当然、珍しい本や稀少本などが多いため、持ち出し禁止の物も多い。だからか、図書館には常に大勢の人が読書に来ている。

問題は地下である。

地下図書館にはまず滅多なことでは人々は足を踏み入れることはない。

何が問題かというと、まず司書である。

司書をしているのは吸血鬼、それも真祖と呼ばれる、古より存在しているモノであり、ヒトとは相容れることのない魔物なのだ。そんなものが守っている図書館に入りたいと思うモノなど居るだろうか?いやしない。通常は上の図書館で満足出来るものだからだ。

ちなみに、なぜ彼がここの司書をしているのか、その理由を知る者はない。だが、とにかく彼はここで司書をしていて、入館者を選別しているのである。何があっても彼が、地下図書館から出てくることはない。だからこそ、一般の人々は上の図書館を安心して利用出来るのだ。

次に入館者となるための資格であるが、簡単なことだ。

司書の吸血鬼が満足するような力ある魔核を与えればいい。簡単だが、難しい課題。

なぜなら魔核は魔物を倒さねば手に入らず、司書が満足するような力あるものなら、最低でもワイバーン級の魔物を倒さねばならない。実力か財力があれば手に入れるのは難しくはない。逆に言えば、ソレが手に入らなければ、この時点で引き換えすべきなのだ。

更にまだある。

入館が許可されても、ほぼ九割の人間が魔力酔いを起こす。実のところ、地下図書館に入館者がほとんどいないのはこのせいだ。司書が吸血鬼であることよりも、入館者が選別されることよりも、この魔力酔いという現象こそがヒトを遠ざける一番の要因なのである。

「魔力酔い?」

船酔いみたいなものだろうか、とリンが首を傾げれば、一斉に首を横に振られた。

「魔力酔いにあうと……」

「と?」

フェイルクラウトが重々しくリンに告げる。

「酷い頭痛、腹痛、吐き気、発熱、関節の痛み、記憶の混濁、筋力の低下がおこる」

「……何でそんなとこ行く」

むしろ入館禁止にしたらいい、とリンは思うのだが、なんと、進んで行きたがるやつもいる。『吹き抜ける風』のシオンなんかがいい例だ。彼はこれまで三度、酔わずに中に入ることに成功している。今日も予定の場所に来ないということは、おそらく図書館に入れたのだろう。先日の依頼で仕留めた、暴発パンダの魔核を持たせていたのは失敗だった、とラティスが苦々しく呟く。

魔力酔いにあうかどうかかは、実は入館してみないとわからない。魔力酔いしないことだってあるのだ。ただ、なぜ魔力酔いを起こすのかはわからない。一度入って魔力酔いしなかったが、二度目に入ったときは魔力酔いした、ということもある。もちろんその反対だってある。

入館したその時に魔力酔いを起こすかどうかは、運だと言われているのだ。

そんな危険な地下図書館に、なぜ入館したがるのかと言えば、ひとえに魔法の習得と新しい知識、それに基礎魔力アップのためだ。

地下図書館では、偉大なる先人の記憶や、古代の魔法、現代の魔法使いが魔法を使う場面、習得が非常に困難なスキルのか数々、実際に行くことの難しい遠方の地の魔法や様々な知識といったものが、映像で見られるのだ。そんな場所は世界広しといえどもここしかない。

主に恩恵にあずかれるのは魔法使いなので、新しい魔法や知識を覚えたい魔法使いがたまに訪れる場所なのだ。魔法使いとは、知識欲と探究心の塊であるからして。あとは薬師や学者など知識に貪欲なモノ達。

実際、地下図書館を利用して数々の新しい魔法や薬等も開発されている。

だが、一般人はあえて足を踏み入れようとは思わない。魔力酔いの後遺症で半身不随や、失明、難聴といった後々にまで影響する身体障害を患うモノも多いのだから。

何度魔力酔いをしてもアタックし続けるのはラティス達から見れば、ただの狂人だ。

「大丈夫ですよ、母上」

一緒に話を聞いていたグリーが、リンを見上げてにかっと笑う。どうでもいいが、仔猫サイズのモフモフは最高だ。

「何が?」

「我々が魔力酔いを起こすことはありません。今日のうちであれば」

「……そうなの?」

「はい、今日は魔力の日なので」

どうやらグリーは詳しいことを知っているようだ。むしろ、何も解明できていないリン以外の人間達をバカにしたような目で見ている。

グリーの説明によると、こうだ。

地下図書館には、古代人の結界が張ってある。

結界内に入るには、魔力や筋力、素早さなど定められた項目を数値化したときに、決められた項目の数値が一定以上必要で、けれど、基本値さえクリアしていれば入ることは可能。足りなければ別の部分を数値変換して補われる。それこそが魔力酔いと呼ばれる現象。

どの項目が必要なのかは、実は日付によって決まっている。例えば、二のつく日は魔力が100以上必要、といった具合だ。必要数値は個人でもパーティーでもかまわない。パーティーの場合、当然個人より多く数値が設定してあるが。

今日はまさに魔力の日。数値も低めに設定してある日だそうで、リンやグリーがいるため、このパーティーで入館するのは何も問題はない。だが、明日は運の日で、数値は間違いなく足りないらしい。

「あ、そう」

「ミストも母上なら魔核が無くても問題なく通してくれると思いますよ」

「……ミスト?」

「地下図書館の司書です」

さらりと言われた言葉に全員が目をむく。

「グリー、知り合い?」

「ええ」

忘れがちだが、彼は千年を生きる魔王なのである。結構博識でした。

魔王サマの言葉を信じて、彼らは地下図書館から迷宮に行くことにしたのだった。

ちなみにさっきまではもちろん、シオンは捨てていくつもりだったが。





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