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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

植物栄養剤を作ろう

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迷宮都市マーヴェント(後編)

「ここよ!」

アリスが連れて来たのは大通りに面した、街の中心地。
目の前のこれはいったいなんだとう、とリンは首を傾げる。てっきり、アリスのことだから食材ギルドだと思ったのだが。

「?これなに」

「え……?」

予想外のことを聞かれた、とアリスが目を点にしてリンを見た。

「やあね、私が案内するといえばもちろん、食材ギルドに決まってるじゃない」

「……ここが、食材ギルド?」

「そうよ、変なこと聞くわね?」

「いや、この場合リンの反応は正常だ」

ラティスが言えば、

「そうだね」

「……」

スレイとシオンもうなずく。

「そうよ、知らない人が見たらわからないわよ~」

マナカも苦笑している。

「もう、なによ皆して」

アリスは膨れるが、目の前の建物はどう見ても大手ギルドとは思えない。

ぶっちゃけ、ただの段ボールハウスである。いや、ただの、というには語弊がある。眼前のソレは巨大な段ボールハウスであった。

どれくらい巨大かというと、三階建てのビルくらい。元の世界でも段ボールで色々作るのが流行っていたが、これは大作にもほどがあるだろう。どれだけ大きくても所詮、段ボールハウス。嫌だよね!段ボールハウスのギルドって!

「素材は何で出来てるの?」

段ボールにしか見えないが、この世界、段ボール存在するのだろうか?少なくともリンは見たことがない。

「よくぞ聞いてくれました!あれはニヴィという植物なのよ~」

なぜか胸を張って得意気に言うアリス。

よくよく聞けば、ニヴィという植物は木らしい。大きいものはそれこそ街一つ軽く覆えるくらいになるとか。

ニヴィは真四角に育つ。見た目はまさにリンの知る段ボールそのもの。ただし、強度は鋼鉄並み。ファンタジー!

特殊な技術が必要だが、中が加工できてこうして建物としても利用できる。建物として利用していても、なんとまだ生きているらしい。しっかり根をはっているのだそうだ。目が点になるとはまさにこの事。

ちなみに、ニヴィは断熱、防音にすぐれ、耐久性も抜群。この辺りでは家や食材ギルドのような施設によく利用されているという。

しかし、便利ではあるが、この植物、この辺りにしか存在しない。迷宮【湖底洞窟】の特産物である。迷宮【湖底洞窟】から遠く離れすぎるとすぐに枯れてしまって、使い物にならなくなるので、実は迷宮都市マーヴェント周辺でしかニヴィの建造物は見ることが出来ない。この建物を見るためだけに迷宮都市マーヴェントを訪れる観光客もいるのだ。

「へえ」

たとえどれだけ性能がよくても、どれだけ利点があっても、どう見ても段ボールハウスだし。住みたくはないなあ、と思うリンなのだった。

そのあと、ラティスとスレイが案内してくれた子供服&雑貨専門店にドン引きしたのはリンだけではあるまい。フェイルクラウトが氷のような冷たい眼で二人を見ていたのもうなずけるというものだ。

あえてなぜここを選らん段だ、といいたい。彼らが言うには、マーヴェントの子供服&雑貨専門店【リン】は、なんと、最近ルイセリゼがオープンさせたらしい。名前からも分かるように、リンをモデルにした作品を置いているとか。焼いてもイイデスカ?店ごと燃やしてもイイデスカ?

フェイルクラウトが「この変態が」と吐き捨てた。もっと言ってやって下さい。まあ、いい人たちだけどね?別に実害はないけどね!他のメンバーも興味津々で店をのぞきこむのは止めて!

グリースロウが「人間って意外と面白いですね。見習うべきかな」と呟いていた。そのパーティーメンバーを見る目は、獲物を見つけた肉食獣そのもの。グリーよ、変態は見習わなくてもいいと思うよ?
そのあとラティスとスレイを締めたフェイルクラウトは、なんとプラネタリウムに案内してくれた。

ニヴィと魔法を駆使した最近出来た観光名所らしい。彼は今ついでに下見して、良かったら王女サマを連れて来ると言っていた。どうやらこの情報とチケットは王女サマ提供らしい。

意外とマーヴェントは観光名所が多かった。迷宮独特の特産物も多く、あっという間に日がくれてしまった。

「今日はありがとう。楽しかった」

「どういたしまして。私達も楽しかったわ~」

やり遂げた、という爽やかな笑顔のメンバー達にフェイルクラウトが一言。

「お前らもう少し自重しろ」

激しく同意したリンだった。





翌日。

迷宮に向けて出発……する前に点呼された。

ん?

リンも集まったメンバーを見回し、シオンが居ないことに気づく。

「シオンはどうしたのかしら~?」

首を傾げる一同。

「地下図書館じゃない?」

アリスの物凄く嫌そうな声に、一行の中で唯一といっていい常識人、フェイルクラウトですら、生のカエルを丸のみしたかのような物凄い顔をしているのだ。一体何事だろうか。

「おい、確かにあそこからも【火炎宮】は行けるがこの西門から行くって話だったよな。なぜ貴様らの仲間が地下図書館にいる?」

わざとなのか、とフェイルクラウトが射殺しそうな視線でリン以外を順に睨みつける。

「いや、たぶん、聞いてなかったんだな」

「そうね~」

「地下図書館なんて私達だって行きたくないわよ」

「だな。その態度、あんたも理由は分かっているんだろう。あそこに魔法狂いの魔導師以外行きたいやつなどいやしない」

スレイの言葉にフェイルクラウトが納得したようにうなずいた。

「確かにそうだな。しかしということはそこのリーダーが言ったように、聞いてなかったと?そんなことがあるのか?」

「ここはマーヴェントだからな」

つく前からもう図書館で頭が一杯だったのだろう、とラティスが苦々しく吐き捨てる。これだから魔法狂いは、と。

「そうね~、いつにもましてハイテンションだったもの」

シオンのいつもと変わらぬ口数の少なさと、大して表情のない顔を思い出しながら、あれで?とリンは首を傾げる。自分も人のことは言えないが。

ともあれ、【吹き抜ける風】の面々はもっと気を付けておくべきだった、と消沈している。

フェイルクラウトも相変わらず苦々しい顔だ。

リンだけは何が何やらさっぱりだ。行けるなら別に、その図書館からでも良いのでは?と思っている。

数十分後、地下図書館を知ったリンは、反省した。確かにわざわざここから行きたい奴など居ないだろう。ムダに研究熱心か新しい魔法が欲しい魔導師以外は。


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