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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

植物栄養剤を作ろう

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必要な素材は一ヶ所で

「迷宮に行きたい?」

ここは食材ギルド近くのカフェ。内装は女性好みで可愛らしく、季節のフルーツケーキが人気である。使われているフルーツは新鮮で瑞々しく、ケーキ自体もとても美味しくてリンも気に入っている。テイクアウト出来るところがなおいい。王都に来ると必ずここのフルーツケーキを買って帰ることにしている。

話がずれました。

植物栄養剤の素材について、蚊トンボが変な顔をしながらも教えてくれたところによると、全ての素材が一ヶ所で集まるらしい。なんとも都合のいい話だが、一応理由はあるらしい。

どの素材も火系統の魔素(実は魔素にはお決まりの地水火風空時光闇といった属性のある魔素がある。大半は無属性らしいが)を持っていて、火系統の魔素持ちは魔物であれ素材であれ、火系統の迷宮に集まるように出来ている。今回は素材ランクが近いため一ヶ所で揃うということだ。火系統の魔素持ちの素材はどうとか相変わらずブツブツ言っていた蚊トンボは、華麗にスルーです。

そんな設定ゲームにはなかったような?とはいえ、都合がいいのは確かなのでまあいいか、と流してしまうリン。後々、この時感じた違和感をきちんと突き詰めておくのだったと後悔したが、後悔とは先に出来ないものなのだ。

ともあれ、迷宮に行くにはリンはまだ年齢が足りない。いまはまだ成人前のため、あくまで仮登録だし、迷宮にいく許可は成人して本登録した上、ランクも上げなくてはならないのである。しかし、行きたい。冒険者ギルドか迷宮ギルドに依頼を出すという手もあるが、やはり素材は自分の目で見て自分で採取するに限る。

というわけで、パーティー【吹き抜ける風】に護衛依頼をすることにしたのだ。変態だが、腕は確かだし。護衛依頼であれば、リン一人では許可のでない迷宮も、護衛のランクに応じて行くことが出来る。ただし、足でまとい(護衛対象)がいるから行ける迷宮のランクは普段より一つ落ちるが。もちろんクリフたちでもよかったのだが、あいにく彼らは長期の依頼で少し遠くに出ていて、帰って来るのはまだ二ヶ月も先だという。【吹き抜ける風】も忙しいらしく、結局こうしてアリスと話をするのに、レシピが出来てからから一週間も待ったのだが。

季節のフルーツケーキを食べながら、アリスが難しい顔をして考え込んでいる。【吹き抜ける風】メンバーは本当は今日も仕事が入っていたらしいのだが、今回の仕事は明日には終わる上、危険もほとんどないので一人くらい抜けても大丈夫らしく、リンにもっとも馴染みあるアリスが話を聞くといってくれたのだ。

「どうしたの?」

「火系統の魔素持ちの素材を集めたいのよね?それも素材ランク4から2の」

「そう。近くにそういう素材が集まる迷宮ないの?」

難しく考え込んでいるから、てっきりそういった迷宮が近場にないのかとおもいきやそうではないらしい。

「いいえ、王都から馬車で三時間行ったところに迷宮都市マーヴェントがあるわ。そこが有する迷宮「火炎宮」なら完璧に条件を満たしてる」

近くて素材が揃う迷宮なら言うことなしだ。アリスは一体何が問題だと言うのだろうか。

「ランクの問題よ。あそこは迷宮ランク2だもの。護衛依頼だと、通常より迷宮ランクを下げての申請じゃないと通らないし、私たちでは護衛依頼でランク2の迷宮は許可がおりないわ」

「……そうなの?」

「ええ、王族とか大貴族の特別許可が取れれば別だけど、私たちのランクは……」

「ちょっと待って」

「リン?」

「王族の許可が取れれば良いの?」

「ええ、そうね。でも王族の許可なんてそう簡単には取れないわ」

「取れたらこの依頼引き受けてもらえる?」

「もちろん、他でもないリンの依頼ですもの。貴方は決して足手まといではないし、むしろ貴重な戦力だわ。護衛対象がリンであれば、ランク2の迷宮でも実力的にはなんの問題もないしね」

「分かった。だったら許可とる」

「……貴方が言うととても簡単に聞こえるわね。なんだかもうどこから突っ込めば良いのか分からないわ」

苦笑してそれでも約束してくれた。【吹き抜ける風】はここのところ忙しくしていたので、ちょうど明後日から二週間休みをとることにしていたのだとか。リンとの素材採取ならみんな喜んで引き受けるわ、と微妙にリアクションの返しづらいお言葉をいただきました。彼らの妖しい趣味さえなければ素直に喜べるのだが。






王族への伝といえばもちろんストル王子だろう。王子の割りには気さくだったしきっと聞いてくれるに違いない。早速サクサク手紙を書くと、少し考えて蚊トンボに手紙を届けさせることにした。

蚊トンボは中々帰って来ない。

「うーん、やっぱりグリーに行かせれば良かったかなあ」

だが、グリーでは思わぬ事態を招く可能性もある。彼はリンの言うこと以外は聞かないし、リンの言うことを守るためなら平気で街一つ廃墟にしてもおかしくない。グリーの世界はリンを中心に回っていて、リン以外はどうでも良いのである。というわけで、さすがに何が起こるか予測不可のため、危なくて王宮にはお使いに行かせられないのだ。

蚊トンボはウザいがあれでいて常識は心得ていて、無駄なトラブルは起こさない。一応信頼はしているのだ。これで外見と口調がまともならいうことなしなのだが。なぜおっさんなのだろう。いや、本当に。どうにも納得がいかない。

ぐるぐるリンが下らないことを考えていると、ようやく蚊トンボが帰ってきた。ついでにおまけもきた。

「お使い行ってきたで!バッチリ許可貰ってきたで!」

「……それはいいけど何で彼までいるのさ」

蚊トンボの連れてきたのは、フェイルクラウト、勇者である。

「しゃあないやん、王子に許可もらいにいったらおったんや」

「いやいやいや」

部屋にいたから、というだけで連れては来ないだろう。

「なんや、迷宮に行く理由いったら王子と勇者が変な顔しおってなあ。まあ、お嬢以外には理由は明白なんやけどな?とにかく、迷宮行くんは構わんけどそういう理由やったら勇者連れてけ言われたんや。勇者の同行があかんのやったら許可が出せんのやと」

「なんだそれ、ワケわかんないな。まあいいや。別に一人くらい同行者増えても問題はないしね」

許可もとれたことだし、早速アリスに連絡して時間の調整をしよう、と浮き浮きと(無表情だが)浮かれながら今後に思いを馳せるリンであった。

「ホンマに理由わからんのかなあ?何であの素材合わせて植物栄養剤なんや???」

蚊トンボの呟きは、残念ながらリンの耳には届かなかった。

こうしてリンたちは植物栄養剤の素材を求めて高ランクの迷宮に行くこととなったのである。

「なんか色々間違ってないか?」

フェイルクラウトの呟きに、リン以外の全員が心のそこから同意したのだった。





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