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野菜は出来たけど
久しぶりの上に少し短め。
中々番外編着手出来ない。本編も中々進みませんね、申し訳ないです。
来週からは時間が出来るので更新ペース上がると思います。本当に。
あっという間に時は流れて。あれからから一年がすぎた。この一年、振り替えればそれなりの出来事と変化があった。
ナヴィリア花は少し特殊な花で(見た目からしてすでに特殊だとは思うが)妖精の王族にとって大事な花らしく、栽培もしているとのことだった。蚊トンボ(思ったよりも高位の妖精だった。妖精国の地位はメルよりも高いらしい)が女王と交渉してくれて、種と専用肥料、それに詳しい育て方の本までもらってきてくれた。珍しく役に立った蚊トンボである。
ナヴィア蜂はメロウズが宣言通りバッチリ捕まえてきた。女王蜂がメロウズにしきりにまとわりついていたのが印象的だ。
ヴィクターが完璧な巣と遠心分離機まで作ってくれていたので養蜂は思ったよりもうまくいき、先日第一段の美味しい蜂蜜採れました。満足。ヴィクターのお役立ち加減が素晴らしい。恥ずかしがりやの彼のために、一時本気で蚊トンボを伝書鳩変わりに渡そうと思ったほどだ。双方から抗議と断りを受けたため断念したが。
オルトはこの一年常時召喚状態。はっきり言おう。迷惑極まりない。メロウズは契約もしていないのに、ナゼか未だにリンの家にいる。二人の関係は、メロウズがオルトをからかって構い倒しているという感じだ。もう、お前らいい加減棲み家に帰れよと思う。ちなみに、何度か帰れば、といったが右から左に聞き流されてしまった。主にメロウズに。オルトはメロウズがいる限り帰れないと頑なに棲み家に帰るのを拒んでいる。メロウズが苦手なくせに何やら思うところがあるらしい。
蚊トンボとメルは相変わらず。蚊トンボはその存在だけでリンをイラっとさせる。どれだけ役にたとうが、リンの中で蚊トンボの地位が向上することはない。主にその見た目と口調で。妖精は外見が全てです(リン基準)
ヴィクターも結局リンの家に住み着いてしまった。師匠から受け継いだという大事な店兼家も失ってしまったし、たとえ再建しようがまた潰す未来しか見えない(それはそうだろう。そもそも接客がほぼ出来ないのによく店をしようと思ったものだ)とのことで、なしくずしにここにいる。リンの前にも滅多にその姿を現すことはない。
魔王グリースロウはリンの側から滅多に離れることはない。リンのいうことは何でも聞くし、リンに仇なすモノは決して許さない。図体の大きいだけの子供である。とはいえその力は一夜でこの国くらいなら容易く吹き飛ばしてしまえるのだが。
ここ一年を振り返ってリンは首を傾げる。何かがおかしい。農園の雇い人といえば農夫とか農婦とか、農家の子供とか………とにかく妖精や竜や魔王ではないはずだ。ヴィクターに至っては鍛冶屋である。目指している方向とは微妙に違う気がする。
「いやいや、そんなことないよね!」
よく考えれば、野菜はすでに七種類も収穫出来ているし、鉱石種も試しに一つ植えてみたが順調に育っている。養蜂だって成功しているといえるだろう。ということは、方向性は間違っていないということだ。ムダに過剰戦力ではあるが、特別戦闘をするわけではないし、その辺はどうでも良いだろう。皆ちゃんと農園に役立つスキル、持ってるしね!
「なんだ、バッチリじゃないか」
農園は順調に拡大中だ。今後は動物を飼って牛乳とか卵とかお肉とか、花も育ててみたいし、布や毛糸も自給できるといい………夢が膨らみますね!
ただ、問題は肝心の野菜である。ケサ芋はどんな環境でもそれなりに育つ強い芋だし、鉱石種はそもそも魔力を糧としているので中々気付けなかったが、どうやら野菜の育ちが悪いようなのだ。出来るのはできるのだが、どうも小ぶりだとか、味が薄いとか、収穫数が少ないとか。メイスンに相談してみたところ、植物栄養剤を作ってみるといいと、いくつか既存の栄養剤のレシピも提供してもらった。だがしかし。
「こういうのはやっぱりアレンジが大事だよね」
「いやいやレシピ通りに作った方がええで?下手に手を加えるとろくなことにならへんよ。特にお嬢は」
一人言に突っ込みが入った。見ればいつの間にか目の前に来ていた蚊トンボが呆れたようにリンを見ている。
「大抵料理でもそうなんや。失敗するヤツは分量を適当にしているかいらんアレンジ加えとんのや」
レシピ通りに作れば成功するのに何でや、と遠い目になった彼には何やらあったようだ。あえて理由は聞きはしないが。しかし、誰に向かってモノを言っているのか。仮にも調合の神とまで言わしめた(ゲームの中でだが)リンに対して失礼ではないか。
「うっさいな。調合の腕前は完璧なんだから適当なアレンジとは違うの。まあ、見ててよ。完璧なオリジナル植物栄養剤を作って見せるから」
ふふん、と胸を張るリンに蚊トンボは天を仰いだのだった。
植物栄養剤のレシピは実はリンもある程度持っている。当然だろう。ゲーム時代は調合を極めたリンである。ないほうがおかしい。何度も作った経験もあるし、アレンジもしたことがある。あのときも随分と植物栄養剤には気を使ったものだ。そういえば確かに、植物栄養剤の出来で野菜の格も変わった。植物栄養剤を与えていない物と最上の植物栄養剤を与えた物では、同じ野菜でも出荷時の値段が三倍近く違ったものだ。
ストックは残してなかったので、アイテムボックスには入っていないが、問題はない。レシピは残っているのだから。蚊トンボに大きなことを言ったのは当然ながら、リンにはきちんと言うだけの根拠と自信があるのだ。
蚊トンボの心配は杞憂と言えるだろう。
というわけで早速作成を開始する。これから植えるモノはもちろん、間に合うなら今植えてある野菜たちにも与えたいところだ。制作は急ぐに越したことはない。野菜を最高品質で作りたいと思うのが、農園主として当然のこだわりだろう。
まずはアイテムボックスからオリジナルレシピの中でももっとも効果の高い自信作を取り出す。
「うーん、このままでも悪くないけどもう少し手を加えたらもっといい感じにならないかな?」
ウンウン唸って思考すること二日。制作の要はまさにレシピである、と彼女は思っているので、ここでかける時間を惜しんだりはしない。
「やっぱりここはウレンの根よりもクロスの葉を入れて、ミスクローじゃなくて神龍の鱗の粉末に、クスコの実とヘイレスの根を追加してっと」
新しく作ったレシピを見直してリンは満足げに頷く。神龍の鱗の粉末は持っているので、それ以外の素材を揃えるべく蚊トンボを呼び出す。悔しいが、素材の採取場所について農園メンバーの中で一番詳しいのは彼だったのだ。まずは素材が存在するかどうかを確認する。ここはゲームではないので、リンの知っているアイテムも存在しない可能性もあるからだ。レシピの素材のうち、リンの手元に無いものを一つ一つ確認する。全ての素材が存在するとわかった時には思わずガッツポーズをしたリンであった。
「……お嬢、何考えとんねん、戦争でもする気か?」
「何バカなこといってるの?植物栄養剤を作るんだって。それでどこにいけば手にはいる?」
難しい顔で自白剤がとか、爆薬がとか呟く蚊トンボの声など浮かれきったリンには届かない。
リンは決して忘れていたわけではない。ただうっかりしていただけだ。
ここがゲームの中でないことをちゃんと覚えていた。問題なのは、当然薬の効果も違うかも知れないということを、素材の効果そのものが違うかも知れないということを気付かなかったことだ。ゲームの知識は半分程度しか役に立たないのだと彼女はキレイに忘れ去っていたのだった。

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