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舞踏会のそのあとで
遅くなったうえに短いです、すいません。
これでひとくぎり
動かせる人員を総動員し、辛うじて修復した王宮の一角で開かれた舞踏会は無事(?)終了した。リンは報復も果たせて万々歳である。無表情でも、まとう空気が浮かれている。
しかし、やり方はどうあれこれで公爵に加担した貴族は一掃できた。末端までだ。ここまで恥をさらしては(特にご令嬢方は)もう社交界に顔は出せまい。御令嬢方には嫁ぎ先があるかどうかも怪しいものだ。不憫である。だがしかし、魔王復活までさせたからには、同情もできない。事情を知る者は皆複雑な心境である。ちなみに、丸裸にされた紳士淑女の皆様は王宮にあった布をありったけ持ってこさせて、なんとか重要な部分を隠しただけの状態で(王宮もほぼ全壊だったため、服などは全くといっていいほど補充がされていないのだ。最重要の部分から手をつけているので当然だろう)やって来た迎えの馬車に次々乗り込んで王宮を後にした。
もちろん残された疚しいことのないうえ詳しい事情を知らない紳士淑女の皆様は不思議現象と丸裸にされた貴族たちを肴におおいに盛り上がっていた。人の不幸は蜜の味なのだ。
そして、舞踏会から二ヶ月が過ぎた。
王族や各ギルド長はもとより、王族の覚えめでたくなった(不本意ながら)クリフたちパーティー『はみ出し者』も今だ王宮の修復作業に忙しい。本業はどうした、と思いきやどうやら冒険者ギルドを通して正式に依頼があったらしい。さすがに断ることもできず、できる範囲で、ということで引き受けたとか。
勇者はといえば、なぜか頻繁にリンの家に顔を出すようになった。オルト(なぜかあれ以来常時召喚させられている。魔力は自動回復の範囲内のため問題はないが、常に魔力が消費され続けるため、出来れば必要のない時は棲みかに帰ってほしいリンである)と蚊トンボと話が合うらしい。魔王とは距離をとっているが。なぜかメロウズとも距離をとっているが。それにしても近頃リンの家は人口密度(そのほとんどが人外だが)が異様に高くなってしまった。こんなはずじゃなかったのに、と首をかしげる日々。人生とはままならぬものなのだ。
そんなリンは、ここのとこひたすら王立図書館(王宮近くにあるがここは無事だった。勇者が張った結界と、魔王が勇者で遊んでいたおかげだろう)に通っている。小型化した虎の魔王グリースロウのモフモフな(さわり心地は最高である。しかも獣臭は全くないという、まさに理想のモフモフだ)毛皮を堪能しつつ眠気を耐えて読書にいそしむ日々。読書は好きだが、モフモフの魔力は恐ろしい。眠気に打ち勝つにはものすごい精神力が必要だ。だが、手放せない。既にこのモフモフがないと生きていけないような気にさせられている。恐るべし、魔王。
「うーん」
話がそれまくったが、図書館に通う理由はもちろんナヴィリア花の捕獲(?)と育て方について知るためである。蜂自体は、メロウズに任せておけば問題なく捕獲できるようだが、花となればそうはいかない。腐っても花。どんなにそうは見えなくても、ナヴィリア花は花なのである。
養蜂家は基本的に技術を外部の者に教えたりはしない。養蜂は、技術そのものが価値を持っているのだから。この世界で、ハチミツとはとても高価なものなのだ。理由は、養蜂に使われる蜂が大抵魔物のくくりに入れられる生き物だから。その中でもナヴィア蜂はもっとも凶暴で、捕獲が難しいということらしい。驚くことに、いないんですよ、日本にたくさんいたミツバチさんは!弱すぎて、淘汰されてしまったのかもしれない。この世界は生存競争が激しいのだ。
ともかく、そういったわけで蜂の方はばっちりである。繰り返しになるが、問題なのは花である。そもそもハチミツをとるための花は栽培するのではなく、花の群生地(その場所は養蜂家が代々受け継ぐらしい)に蜂を連れていってハチミツを集めるようだ。だがナヴィリア花は希少種のうえ、現在確認されている群生地はほぼナヴィア蜂の養蜂家が使っている。新参者が気軽に仲間に入れて、というわけにはいかないのだそう。となれば育てるしかない。しかし、伝を使ってこっそりと聞いてもらったのだがもともとある群生地に蜂を連れて移動する養蜂家であるが故、本職も詳しい生態は分からないらしい。であれば、まず花の詳しいことを知らなければならない、とこうして本とにらめっこをする毎日なのだが。
「ないねえ」
毎日毎日毎日本とにらめっこしているが、これといって収穫はない。そもそもナヴィリア花については、わからないことの方が多いのだ。どの植物辞典を見ても、農業に関する本や、野生の草花といった本を見ても、これといった収穫はない。食材ギルドでももちろん探したが、特にナヴィリア花に関する詳しい書物はなかった。ここが頼みの綱だったのだが。
「メイスンもさすがにわからないって言ってたし、困ったなあ」
「ところで母上はなにを調べていらっしゃるのですか?」
頭を抱えていると、グリーが聞いてきた。そういえば、何を調べているか誰にも言ってなかった気がする。ナヴィリア花について調べているのだと言えば、あっさりと解決方法が示された。
「ならば母上の使役している妖精どもに聞けばいいのではないでしょうか」
「・・・・・え?」
「妖精は植物や、自然に関することに詳しく、扱う魔術もそのあたりに特化しておりますし、奴らが知らぬでも妖精の国には母上がお探しになっている植物に関する書物があるやもしれません」
グリースロウの言葉に、目が点になる。盲点でした。完全に蚊トンボとメルのことを失念していた。
あれらはああ見えても、妖精なのだった。
リンは早速メルを呼び出し、事情を説明する。
「ナヴィリア花?それならたぶん女王様が種と肥料を持っているわよ?もらってきましょうか?ついでに育成方法と注意点も聞いておいてあげるわ」
とんとん拍子に進みました。この二カ月の苦労は一体何だったのか。
がっくり落ち込んだリンは、その後三日間部屋にこもってグリースロウの毛皮に癒されたのだった。
鍛冶屋を手に入れた!
二体目の竜を仲間にした!
魔王を手に入れた!
鉱石種を手に入れた!
家がグレードアップした!
養蜂を開始した!

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