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鉱石種と報復の相手
作者は根が単純なので、陰謀とか考えるのはムリだった!
陰謀とか期待してたひと申し訳ないです!所詮は農業メインの小説ッス。
一夜が経過しました。
宿はクリフの定宿【葦毛の子馬】亭。王都に四軒しかない高級宿の一つらしい。なんと全個室に風呂とトイレ付き。さすがは高級宿。通常の宿は大風呂があるだけで割高になるのに。風呂専用魔道具は中々お高いのである。通常一般庶民は大衆浴場を利用するものなのだ。造りは他の宿のように一階は食堂、二階と三階が宿泊出来るようになっている。あとは馬の世話をするための馬小屋もある。一泊のお値段にヴィクターが目をむいていた。中級宿の四倍近いお値段をぽんと払うクリフ。さすがはA級冒険者といったところか。稼ぎはかなり良いようだ。
ヴィクターといえば、道中ずっとフード付きマントを着用。怪しすぎる。注目の的である。一緒に歩くほうが恥ずかしいわ!
リンは宿について部屋に入るなり、オルトとメルと蚊トンボに指示をだし終わるとそのまま眠ってしまって、気がついたら朝だった。思ったよりも疲れていたようだ。
朝起きて一階に行くと、すでにクリフとヴィクターがいた。ヴィクターは相変わらず厚手のフード付きマントを着用している。見回すと、他の客は三組しかいなく、食堂はがら空きである。三人は早速朝食を取りながら話をすることにした。
今回の報復の報酬としてリンに提示されたのは鉱石種というものだった。リンとしては巣箱を造ってもらえればそれでいいのだが、それは仕事として依頼してあげてほしいとのこと。だが、無報酬と言うわけにはいかないので、ヴィクターに残された唯一の財産(?)に白羽の矢がたったようだ。
鉱石種とは迷宮産の植物の種の一種で、宝石のように美しい種だ。現在確認されているだけで五十以上の種類がある。魔化植物に分類されるが、一般の魔化植物とは違い育てられる者がほとんどいないので、主に種としてよりも宝石として人気がある。そのほか、魔力伝導率が高く、触媒として使用したり魔道具の核にしたり意外と用途は幅広い。が、触媒や魔道具の核に使特定のスキルとかなりの熟練度が必要なため、宝石として以外はあまり需要がない。ヴィクターが集めていたのは宝石として使えないクズ鉱石種なのだ。これは価値がないためただ同然で手にはいるのである。その為、借金とりも持っていかなかったのだ。
だが、本来は魔化植物の種であり、リンなら育てられるだろうとクリフは言った。鉱石種から採れるモノは食べられる食材であれば幻の最高級食材と言われるバハムートの肉と並ぶほどの美味しさだと言われている。そのほか万能薬や秘薬の材料ができたり、爆裂剤や溶解剤の材料ができたりと今はもうほとんど手にはいらない幻の素材が目白押しだ。もっとも過去の文献からの推測ではあるが。それにどの種がどんな実をつけるのかはまったくといっていいほどわかっていない上、魔力の流しかたや与えた総量によって同じ種でもちがう実がなるという話だ。どちらにしても育てられさえすれば一攫千金間違いなしである。
ちなみに、四年ほど前鉱石種を一つだけだが育てる事に成功した某学者によると、「二度はムリ」とのこと。その時採れたのは幻の高級食材、ウィレィの実でそれはもう言葉では表現しきれないほどの極上の味だったそうだ。ほかにも何人も挑戦者はいたが開花する前に大抵は干からびて死んでしまうらしい。たまに育てられる者がいても某学者と同じで種を一つか二つが限度だという。
そんな恐ろしいブツ、鉱石種。なぜリンなら大丈夫だとクリフが言ったのか。理由は単純でリンの魔力量があり得ないほど多いからだ。
つまり、鉱石種は成長する過程において必要とする魔力量がハンパないのだ。一つの鉱石種が開花し実をつけるのに必要な魔力量は一般人の平均含有魔力の約百倍と言われている。一般人の平均がMP十といったところなので、実をつけるまでに単純計算で千は必要ということだ。
もっとも一度にそれだけ必要ではなく、開花まで最低一年、実をつけるのに更に半年近くかかり、総MP量がそれだけ必要ということなのだが。しかしそれほどの魔力の持ち主となると、宮廷魔導師くらいの実力が必要な上、成長中常に一定量の魔力を吸いとられ続けるため、ポーションの使用もものすごい量になる。その上、調整を間違えると持っている魔力を全て吸いとられて干からびてしまうのだ。つまりまったく割に合わない。
リンの魔力量はそれはもう常識では考えられないほど多い。その上竜と妖精がいるのでいくつかは育てられるのではないかとクリフは考えたらしい。育て方(というより魔力の与え方)は某学者に聞けば良いと言われてリンは首を傾げた。
「知ってる人?」
「メイスン・フロストだ」
クリフはリンがメイスン・フロストのところに研修に行っていたことを知っているらしい。ルイセリゼから聞いたのだろう。
どうやらメイスンの混血としての特殊能力は植物の友という称号と魔力回復(大)、魔力増大というスキルらしい。それでも一つがやっとと言うのだから鉱石種恐るべし。
ともあれ、誰も育てられない種とはリンにはこれ以上ない魅力的な報酬であることは確かだ。ゲーム時代に培った魔王すら凌駕するかもしれない魔力がついに役立つ時がきたのだ!
リンのきらきら輝く瞳を見て、クリフが報酬は決まったな、と一人頷く。
「クリフ!」
三人があらかた食事を終えた頃、四人の男女がやって来た。
「紹介しよう。俺のパーティー組んでいる仲間で右から順にミネア、ウィドクライ、リアーナ、レックスだ」
ミネアは銀髪のエルフだ。額に護りのサークラルをつけている。一度だけ致命傷となる攻撃を肩代わりしてくれるエルフ族特有の魔道具だ。エルフ族なだけあって美しい整った容姿。弓使いとのことで、その命中率はほぼ十割とか。よほどの事がないかぎり外すことはない。
ウィドクライは竜人族。竜というより鰐っぽい顔にがっしりした体躯の前衛職。それも守護師という少々特殊な職業で、挑発系統のスキルを多用し敵を引き付け、大きな盾で攻撃を防ぐのはもちろん、身代わりのスキルを使用し、仲間の受ける傷を肩代わりできる。体力と屈強な肉体に加え、強い精神力がなくてはとても務まらない職である。ゲームでならともかく、現実だと珍しい職業だ。
リアーナは魔導師。人族であり、攻撃に特化した魔法使い。顔立ちは特筆すべき点はなく、つまりはごく普通。その辺を歩いている村人Aといった感じの大衆に混じると完全に埋没しそうな一般人的作りだ。しかしその殲滅力はパーティー随一。魔力も宮廷魔導師に引けをとらない。ヒトは外見では判断出来ないものなのだ。
レックスは獣人族であり、等身大のネコが二足歩行で服を着ていると言えば分かりやすいかもしれない。シルクハットに燕尾服を着用。美男かどうかはリンでは判断がつかないが、同族にはモテモテ(本人談)らしい。彼はいわゆる盗賊技能の持ち主で、罠の解除から隠密行動、情報収集に迷宮などのマッピングなどを担当している。武器は仕込み杖。
ヴィクターはパーティー全員と知り合いらしいので、リンだけ自己紹介する。
「ああ、あなたがあの変態たち…じゃなくて『吹き抜ける風』に目をつけられ…ええと、」
リアーナが言葉を選ぼうとするがことごとく失敗している気がする。
「アリスたちと知り合い?」
「彼らを知らぬ者はこの街にはあまり居ませんよ。実績云々よりも『幼女趣味の集まった変態パーティー』としてね。幼い子供をもつ親はまず食材ギルドには近づけませんね」
そこまで!?レックスの言葉にリンは目を丸くする。
「勘違いしないでくれ。彼らはとても人柄はいいんだ。腕もよい」
ミネアが言えばウィドクライも頷く。ただ全員の共通の趣味が問題なだけなんだ、と。いや、そこ重要よね?!というかその変態ぶりは街中に知られていたのか。隠せよ!少しは隠そうよ!
「気にするな。彼らは見て楽しむタイプだし、実害はない」
クリフの言葉にリンはガックリうなだれる。そういう問題でもない気がするが、この話題は精神衛生上よろしくない気がするので、話題を転換しよう。
「それでパーティーメンバーまで呼んでなにする気なの?」
クリフのパーティーは全員がA級冒険者なので、パーティーとしてはS級の実力がある。
「こんなところでする話でもないでしょう。クリフ、貴方の部屋へ行きましょう」
レックスの言葉に七人は移動することにしたのだった。
「俺たちは明日からとある仕事を受けることになっていた」
部屋に落ち着くとクリフがそう話始めた。
彼の話を要約すると、仕事は指名依頼で、彼らのパーティー『はみ出し者』を指名してきた。依頼人はキレイン公爵。王族に次ぐ権力と財力を有する大貴族だ。今までキレイン公爵などという大物から依頼を受けた事などありはしないが、名前が売れてくると風評だけで指名しくれる人もいるので、今回の依頼もその類いだろう。もっともレックスはキレイン公爵の評判が良くないとあまりこの依頼を受けたくないようだったが。それでも内容が簡単だったことと報酬が良かったこと、なにより相手が権力を持ちすぎていることが決め手となって、依頼を受けることにした。
依頼の内容はある人物の護衛とその人物を伴っての素材の調達。護衛期間は明日から一週間後の舞踏会終了まで。時間があったのでレックスは情報収集をすることにした。
「レックスから裏事情を聞いたとたんに今回のヴィクターの詐欺事件だ」
ヴィクターの件をレックスに話すと、レックスは合点がいった、としきりに頷く。
「??どういうこと?」
レックスが調べたところによると、キレイン公爵は護衛をさせるある人物を人知れず亡き者にしたい。だが、暗殺などすればすぐにばれてしまう。大事なのはキレイン公爵が疑われないような状況を作った上でその人物にいなくなってもらうこと。
一先ず、評判が良く、腕もたつクリフたちを雇い、その人物に対して反意がないことをアピール。裏でヴィクターを罠にかけ(選ばれた理由は恐らくは知り合いがごくわずかであることと、鍛冶屋として一流の腕を持っていること、その割に生活に困窮していること、なによりクリフたちの知り合いであること)大量の一級品の武器を入手。
その上、ならず者を密かに集めているという情報も入っている。
「筋書きは単純です。公爵はとある人物が暗殺されるかもしれないとの情報を入手したとして、宮廷内の者では裏切り者がいるかもしれないという理由をつけ、冒険者ギルドに冒険者を選ばせるのです。ここで肝心なのは、護衛と公爵が知り合いではないということ。恐らくは知り合いのパーティーにはすでにその期間仕事を入れるよう言っているでしょう。「信頼できる腕利きのパーティーを頼む。重要な仕事なので、指名にして料金は通常より割増で支払う」とね。公爵自身が冒険者を選らばないのも重要ですね。指名にしたのは相手が断れないようにするためでしょう。いくら国に縛られることのない冒険者といえど大貴族に睨まれればその国では仕事をしづらくなりますし」
レックスの説明にクリフが苦虫を噛む潰したような顔で頷く。
「でも武器とならず者と冒険者がどう繋がるの?武器をならず者が持ってその人物を襲うとか?でもクリフたちに撃退されるよね」
わざわざ腕利きを雇ったのはなぜだろう。リンが首を傾げるとミネアが禁呪か、と呟く。禁呪を行うにはエルフの力が必要不可欠だ。ヴィクターのところに現れたというエルフの青年が術者であり、武器が召喚に使えるかどうかも見ていたに違いない。
「そうです。大量の武器と人間の血で禁じられた召喚術を行うつもりのようです」
魔王と一口に言っても、実はたくさんいる。英雄や勇者が何人もいるのと同じことだ。そして武器と人間の血で呼び出せるのは王都地下深くに封印されている魔王グリースロウ。破壊と破滅の魔王である。その実力は魔王の中でも十指に入るだろう。
「魔王グリースロウの技の中には精神操作があると言われています。魔王の力で我々を隷属させ、護衛対象を殺させるつもりでしょう」
「魔王って人間に都合良く操れるモノなの?」
『ムリムリ』
リン以外の全員が力一杯否定する。
「ですが、彼らは愚かにもそれが可能だと思っているのでしょう。召喚時に犠牲にする武器の質が高ければ高いほど、量が多ければ多いほど魔王を支配下における確率は高くなると言われています」
ただ、もちろん魔王を支配下におけるなど幻想に過ぎないとレックスは肩を竦める。おそらく召喚時に全員殺されるのが関の山だと。リンはいわゆる悪魔召喚のようなものだと解釈した。
「ん?でもそれなら別に武器の調達先がヴィクターである必要はないんじゃあ」
「多分魔王の姿を見せてついでに自分に都合の悪いものたちをまとめて処分するつもりなんだろう」
「ミネアの言う通りでしょうね。つまり、雇った冒険者が知り合いの鍛冶屋と結託して魔王を召喚し、王国の転覆を企んだ。冒険者ギルドにも協力者がいるに違いない」
「邪魔者はいなくなるし、力をつけすぎて目障りな冒険者ギルドの力を削げる上、いざというとき冒険者ギルドに言うことをきかせやすくなる」
クリフの言葉にウィドクライが重々しく頷く。
「事が終われば魔王は封印しなおせばいい、か。おそらく奴らには勝算があるのだろうな」
「ええ、かつての英雄オルコット・フィラーナの造りし封印の宝玉を手に入れたようですよ。もちろん対になる操玉もね」
一つは手順を踏めば魔王を封印できるというもの。もう一つは相応の力があれば魔王を思い通りに操れるというもの。どちらも幻想級のアイテムである。
「本物なの?」
リアーナの疑問ももっともだ。本物なら一体どこで手に入れたのか、という疑問も残る。
「少なくとも彼らは本物だと信じているようですね。信じるに足る根拠があるのでしょう」
ヴィクターが騙された件も近所のヒトは誰もしらなかったし、ヴィクターもあまりにあっという間だったので、依頼のことも騙されたことも誰にも言っていない。そもそも言う相手もいない。だからこそターゲットにされたのだろうが。レックスが集めた情報も王室では今小さいが無視できないトラブルが続出していて、まったく掴めていないようだ。表面上まったく怪しい動きは見せていない公爵をわざわざほじくり返している余裕は無さそうだ。
「だが、黙って利用されてやる義理はない」
「まあ当然だよね。で、護衛対象って誰なの?」
彼らは顔を見合わせ、レックスが答えた。
「この国の第一王子ですよ」
そんなこったろうと思ったよ!

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