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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

まともな野菜を作ろう

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メイスン・フロストの農業研修⑦

オルトは何やら面倒くさそうな話をしてくれたが、はっきり言おう。

どうでも良いです。

別に元の世界に帰りたい訳でもないし、役目とやらがなくても不便はない。基本的に引きこもりなので、どちらかというとそんなものはないほうがいい。

そもそもオルトは未来の定まらぬとかなんとか言っていたがむしろ未来は決定しているだろう!そう、リンの未来は間違いなく世界一の農園主である!そしてオルトの今もっとも重要な仕事は意味の分からない面倒な話をすることではなく、畑の水やり(今は水をやるような植物はないが)とムダにできた魔化植物の駆除ですヨ!

力説するとなぜか笑われた。なぜだ?

しばらくして準備が整うと、早速精霊を召喚する。

魔法陣が青く輝き(輝き出した時にリンにも見えるようになった)現れた精霊は、鮮やかな若葉の色の髪。榛色の瞳。白磁の肌を持つ女性だった。人で言えば三十代後半といったところか。顔立ちはごくごく平凡である。どこの村や街にも五~六人はいそうなオバチャンだ。いわゆるモブ顔。精霊、それも太古の精霊のカケラとか言う御大層な前ふりがあったので、大いに期待していたのだが、いまいち想像とは違っていた。いや、だって思わないよね!精霊がこんなに見事な脇役顔だなんて!もっとこう、ぶっちゃけ言うと物凄い美人さんを期待していました。どうでもいいけど、この世界に来てからファンタジーというものに裏切られ続けている気がするリンである。

「・・・・なんと言うか、ずいぶんアッサリした顔だな」

アッサリというか、逆にアクがあるというか。分かりやすくいえば、日本の関西地方の某都市でアニマル柄の服を着て井戸端会議していそうな。押しは強そうである。短めにカットされた若草色の髪とふくよかすぎる体型もまた、某都市に溶け込みそう。リンはテレビでしか知らないので偏見かもしれないが。

拍子抜けしたような声でぽつりと呟くリオールは、身構えていたぶん肩から力が抜けたようだ。

「あら~ずいぶんね~。あなたが~今回の契約者ね~?」

オバチャン顔に見事なバリトンで間延びした話し方。召喚された精霊はある意味ファンタジーなイキモノではあった。





「無事に契約は終了したな」

オルトの満足そうな言葉にリンは読んでいた本から顔をあげる。

契約に必要な契約石と蚊トンボとメルを提供する以外にリンがすることがない。

時間がかかるというのでメイスンが持っていた本を借りて読んでいたのだ。ちなみに題名は【栄養満点!初めての人にもやさしい肥料の作り方】という。背表紙に収まりきらないほどに長い題名である。なぜこんな本を持っていたのかは謎だが。メイスンは鉱物の採取、ザジは瞑想をして過ごしていたようだ。この機会に!とメイスンに家がカラフルすぎる理由と屋根のオブジェの秘密(?)を聞いてみたが、説明にスゴく時間がかかるというので、今は諦める事にした。このとき、ムリにでも聞いておくべきだった、と後々後悔するはめになることは、当然今はわからない。後悔とは先にはできないモノなのだ。

リオールはと見ると、存在が元に戻っている。もう透けてはいない。その足元にはこきつかわれた蚊トンボとメルが転がっている。オルトと精霊はお肌が艶々になり、やり遂げたというような笑顔でハイタッチしている。

「この契約者~中々美味しいわ~」

「ほう、アタリだったか」

「ええ~バッチリよ~」

「お前がそこまで言うとはな。少し味見してもかまわないか?」

「あら~ダメよ~。わたしは~わたしのモノを~誰かとわけあうのは好きじゃないの~」

にこにこにこ。笑いながら妖しい会話を繰り広げている。

「それじゃあ~わたしは~もう行くわ~。あなた~呼び出しかたは~覚えたわね~」

「は、はい!」

唐突に声をかけられてリオールが直立不動で応える。なぜか顔は青ざめ、額には冷や汗が浮いている。

「あなたの~主には~約束通り~力を貸すわ~。いつでも~言ってちょうだい~。わたしも~興味あるしね~」

オルトといつの間にか話をつけていたようで、リンも精霊の力を借りられるようだ。

「ずいぶん気に入ったようだが、力は借りるが、主はやらんぞ」

「まあ~うふふ~一人占めね~。わたしたちは~独占欲が強いものね~」

「【番人】だからな」

「そうね~それじゃあね~」

にっこり笑って手を振ったと思うと、一瞬後には魔法陣ごと姿が消える。

この精霊、なんとなく蚊トンボに通じるものがある。話し方とかメチャクチャうざい。契約者になれなくて良かった、と一人胸を撫で下ろすリンだった。






村に戻って来ました。

契約終了後、メイスンの言っていた絶景とやらを見に行って(確かに絶景ではあった。見事な視界一杯の花畑。ちなみに花はすべて猛毒を持つものか食中植物だったが。なぜここでココロ癒されるのか分からない)そのあと、魔素溜まりの魔素を魔力に変換するための薬品を作るのに必要な花を、別の扉の奥で採取。その他、肥料作りや栄養剤作りに必要な植物や鉱物も採取して、森では当然魔物に襲われることもなく、帰って来たときにはとっくに日が暮れていた。

リオールもなぜか一緒に村に来ました。

「でもメイスンが凄く嫌がってた割りにはトラブルっていってもそんなに大したものでもなかったよ」

リオールは明日の朝皇国に帰ることになっている。しかも契約した精霊の力を借りて、一瞬で皇国に転移できるため、これ以上リンたちに迷惑がかかることもない。

「甘い!甘いわ!リン。砂糖より甘過ぎるわ!」

わかっていない、とメイスンが首をふる。

「いいこと?ザジのトラブル体質の真の恐ろしさは継続性があることよ。その場では大したことがなくても後々響いてくるのよ」

たとえば今回の場合は、今後皇位争いに巻き込まれる可能性が高い。

「え、今リオールと別れたらそれきり」

「そう簡単には縁は切れないわ。一度結んだ縁は切ることはとても困難なの」

今すぐ家に帰ってリオールどころかメイスンともすっぱり縁を切りたいと思ったリンだった。

夜はリンは村長宅で寝たが、不運少年リオールは(運悪く)村長宅にお客が来ていて部屋がなかったため、メイスンの家に泊まる事となった。翌朝、目の下に隈を作って一睡もできなかった、とリンを恨めしげに見るリオールがいました。

その後リオールは国に帰った。彼がこの数年後皇位を継ぎ、次から次へと革新的な政策を実現させ、後世に皇国中興の祖といわれるようになるのだが、それはまた別の話である。皇位を継ぐのにリンが少なからず力を貸したこともまた、多大なる誤解と共に長く語り継がれることとなる。

リンは半年間みっちりメイスン・フロストの農業研修を受け、土作、植物にあった水や肥料、栄養のやり方。食べられる野菜の種類、少しだけだが、魔素野菜や魔化野菜の種類や特徴を学んだ。ついでに精霊から力を借りて、魔素溜まりを栄養豊富な土に作り替え、かつ魔素がこれ以上にたまらない方法をオルトかたみっちり仕込まれる事となった。


半年後、
リンは魔素溜まりの操作方法を身につけた!
まともな植物を作れるようになった!
一般的な肥料の作り方を身につけた!
メイスンから餞別にと植物の種と肥特製肥料と特製植物栄養剤を受け取った!
メイスン・フロストの家の謎は分からなかった!


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