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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

まともな野菜を作ろう

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メイスン・フロストの農業研修①

遅くなりました。
王都にほど近い農村のひとつにその家はあった。

「・・・・・あれ?」

しかしながら、その家は異様の一言につきた。

目指す家を教えてくれた親切なおっちゃんは、リンの近寄りたくない、という空気を敏感に感じ取ったようで、はっはっはと豪快に笑った。おっちゃんは、どうやら親切なだけでなく、この家を訪ねて来る人の反応がおもしろいのでわざわざ案内すると見た。

「そうとも!あれこそがレストア村の出世頭、メイスン・フロストの家だ!」

「・・・・ずいぶん個性的な」

「まあな!初めて見たやつはたいていドン引きだ。嬢ちゃんの反応はマシなほうさ!そうはいってもこの辺じゃそこそこ有名でな、観光客も来るくらいだ!」

怖いもの見たさってやつだな、とふたたび豪快に笑うおっちゃん。

嬉しくない。ちっとも嬉しくない。見るだけですむならリンとて笑っていられたのだが。出来れば今すぐ回れ右して帰りたい。確かにわけの分からない現象に悩まされる彼女にとって、学ぶのにこれ以上の人物は居ないだろう。

だがしかし。

提示された唯一の条件が【住み込み】なのだ。今となってはもっとも最悪の条件である。

他の人を探すべきか否か。思わず真剣に悩むリンだった。

あらためて目当ての家に目を向ける。

造りは普通の農家と似たようなものだ。二階建てで少々大きめではある。

壁は全面ピンク色。屋根は目に痛いくらいの鮮やかな黄色だ。窓枠は紫。玄関は深紅でドアノブは若草色。

統一感の皆無な色だけでも怪しさ満点であるが、さらには壁全面がなぜか妙に艶々している。というよりぬめっている?何故なんだ?

あと、屋根に家を押し潰さんばかりの巨大かつ妙なオブジェがのっている。あれは、なんというか某有名ゲームに出てくる王冠をかぶったスラ○ムにそっくり。王冠は金色に輝き、体色は真っ青だ。屋根の上に絶妙なバランスで巨大スラ○ム。シュールである。

こんな家に、いったい誰が初見で近寄りたいと思うだろうか。そんなやつ居やしない、と断言出来る。ましてや住みたいかと言われると、住みたくない。

「お嬢、お嬢、帰ってこいや~」

「・・・・ん?」

気が付くと親切なおっちゃんは、姿を消しており、目の前で蚊トンボが手をふっている。

「んで、どないするん。あの家行くんか?」

何故か蚊トンボもイヤそうだ。よく見るとメルもイヤそうだ。

「なんか二人ともイヤそう?」

「あの家妙な気配がするんや」

「そうなの。なんなのかは分からないけど、わたしたちとは馴染まないイヤな気配がするの」

妖精と馴染まない気配?とリンは首を傾げる。妖精はわりとどの種族とも相性がよく、ゲームの時もパーティーを組めない種族は特にはなかったはずだが。

「あらあらまあまあ、貴女、もしかしてリンちゃんかしら??」

突然甲高い声を掛けられてリンは勢いよく振り替える。まったく気配を感じなかった。

「貴女がメイスン・フロスト?」

そこに立っていたのは、腰まである長い金髪の美女だった。出るところはしっかり出て、引っ込むところは引っ込んでいる、素晴らしい体躯。しかもほどよく筋肉もついている。羨ましくなんてないデスヨ。いや、ホントに。

「そうよ。アリスから連絡は受けているわ。住み込みで農業を習いたいんですってね。大歓迎よ」

出来れば住み込みは遠慮したいところだ。切実に。

「まあまあ、妖精ね!ここまで力がある妖精とは珍しいこと」

リンの両脇に浮かんでいた妖精に気づくと、め目を輝かせて見いっている。妖精が好きなのか聞いてみると、当然とばかりに勢いよく頷かれた。

「もちろん!農業従事者にとって妖精は喉から手が出るほど欲しいものだわ。妖精や精霊、エルフなんかは自然に愛されているもの。契約出来ればどれだけ恩恵を受けられるか。たとえ召喚系のスキルを運よく持っていたとしても、妖精と契約出来るとは限らないし」

自然に愛される存在は気紛れな性質の者が多く、中々契約が難しい。そのぶん力も強いわけだが。

力説するメイスン・フロストにリンは思わず本音がでた。

「なんならのし付けてあげる」

この際引き取ってくれるなら、持参金を付けてもいいくらいだ。どれ程力があろうが、役にたとうが、妖精は可愛くてナンボである。たとえ力が無かろうが、可愛ければ許されるのだ。

可愛さの欠片もない蚊トンボなど、リンにとっては妖精と呼ぶことすら躊躇われる存在なのだ。可愛くない妖精など、存在価値がないとすら断言出来る。

「ちょ!ヒドイこといいなや!お嬢」

蚊トンボが本気で嫌がっている。何となく溜飲の下がったリンである。

「うーん、欲しいけど残念。わたしには召喚系も調教系もスキルがないのよねえ」

本気で残念がるメイスン・フロストにリンもがっくり肩を落とした。

「そんなこと、どうでも良いわ。それよりあの家何があるのかしら?とてもイヤな気配がするのだけれど」

返答次第では無理矢理でもリンを連れて帰ると、珍しくも鋭い目でメルがメイスン・フロストを睨み付ける。

「いや、どうでも良くはないで!お前さんも酷いこといいなや!・・・・まあでもこの気配の元は気になるけどな」

そう言う蚊トンボもふざけているようでいて、視線は鋭く家を見ている。

「うーん、妖精にソコまで言われるものなんて今あったかしらあ??・・・ああ!あれがあったわ」

しばらく考えてポンと手を打った。

「先日発見された迷宮で新種の植物が見つかってね。とても珍しい性質を持っているうえ、危険だということでわたしの家に結界を造って保管してあるの。研究途中だからまだ詳しいことは分かっていないけれど」

唯一分かっている性質が、根からひたすら養分をすいとることで、この植物がひとつあればこの農村くらいの規模なら一週間ほどで雑草ひとつない荒れ地になること間違いないという。

それは確かに妖精とは相性が悪そうだ。

「もしかしてグロース草?」

ポツリと呟いたメルに蚊トンボも頷いて同意を示す。

「知っているの?さすが妖精だわあ。詳しいことをぜひ教えて貰えないかしら?」

ものすごい勢いで、蚊トンボを握り潰さんばかりに詰め寄る。

その目は爛々と輝いていて、迂闊な妖精たちのせいで住み込みの研修から逃げられそうにないことを悟ったリンなのだった。




その夜延々とグロース草について語らされたメルと蚊トンボが翌日目の下に見事な隈を作っていたのは言うまでもない。
グロース草の詳細はいずれ出てきます。
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