13/50
妖精捕獲大作戦 その②
翌朝、リンは約束の南門に来ていた。
そこには既にパーティー【吹き抜ける風】のメンバーが揃っていて、リンを見つけたアリスがメンバーの紹介をしてくれた。
前衛は二人。剣闘士と聖剣士。
海坊主のような丸坊主で巨体の(リンの四倍近い。浮遊大陸に住むという巨人族のようだ)ラティス。紅い眼が印象的な彼は剣闘士と言う職業で身体の半分以上もある巨大な剣が得物だ。装備は意外に軽装で、クルークと言う魔物から取れる貴重な皮から作った防具(軽くて、ヘタな金属鎧よりも丈夫だ)を全身に装備している。知り合いの縫製士にシリーズで作ってもらったらしい。
聖剣士は金髪碧眼の美男子で、所謂王子様といった感じの外見だ。スレイという名前らしい。当然最上位の聖剣を装備しており、防具も聖属性強化の能力のあるものを纏っている。魔法も聖属性に特化していて、攻撃のみならず、体力回復や状態異常回復も得意とか。徹底している。
アリスはレンジャーらしい。武器は短弓と吹き矢。隠密や罠解除、マッピングなどに長けた中衛職だ。あと料理人でもあり、植物研究者でもある。白衣のような服を着ている。大鬼蜘蛛の糸で出来ていて、中級以下の魔法攻撃はあらかた防げる優れものだ。
先日の魔法使いらしき男性は賢者で、シオンという。攻撃系統の魔法はあらかた使えるようだ。派手で広範囲の魔法が好みだとか。それで幼女趣味とかどうなんだろう。ちなみに、パーティー唯一の既婚者とのこと。奥さんは美人らしい。武器は深紅の宝玉の埋め込まれた杖。当然打たれ弱く、後衛職だ。
そして最後の一人、マナカという名の五十代後半くらいのおばちゃん。他は皆二十代~三十代と若い中、一人微妙に浮いている。服装もいかにもおばちゃんっぽい普通の服に白いエプロン。武器は柄に緑の宝玉の埋め込まれたフライパン。彼女こそ今回のメインである召喚士だというが、どこからどう見てもただの近所のおばちゃん。しかし、その服、ごくごく普通に見えても上級の魔法剣すらも防ぐという驚きの仕様である。何故武器がフライパンなのか聞いたところ、「普段から使いなれているものが一番よ~」とのことでした。
ちなみに宝玉は魔法職の武器にはかならず埋め込まれている。この宝玉、様々な種類があるが、ともかくひとつは武器に組み込んでないと魔法が使えないのだ。魔法の使えない魔法職など、泳げない魚のようなモノ。なんの役にもたたない。リンの装備している妖精の長弓にも虹色の宝玉が当然埋め込まれている。
「リンです。敬語は苦手。よろしく」
「よろしく。アリスから聞いていると思うけど別に敬語は必要ない。あと俺達は小さい女の子は好きだが変な意味ではないから警戒する必要もない」
ラティスがリーダーとのことで、笑って言ってくれたが、むしろあやしいだろう。特にセリフの後半。いらないよね?言う必要ないよね?
ともあれ、笑顔は悪役っぽい。怖いので、今後子供の前で笑うのはよしたほうがいいんじゃないかな~と心密かに思うリンなのだった。
迷宮【妖精の楽園】は王都から高速馬車(馬車といいながら専用道路を時速80キロで突っ切る。既に馬車を超越している。お値段はバカ高い)を使っても三日はかかる南の方の国にある。
ちなみに今回は南門の脇にある転移塔を利用するため、すぐ着く。出口である転移塔からは徒歩で30分程度らしい。もちろん転移塔を利用できるのは彼らがAランクパーティーであるからだが。様々な事情から基本的に一般人は利用不可なのだ。料金は高速馬車の倍くらいとのこと。ぼったくりも甚だしい!
ともあれ、転移塔で手続きに少々手こずったが、一時間半後には無事迷宮の入口にたどり着いた。
迷宮【妖精の楽園】は七階層からなり、地下におりていくタイプだ。最下層の七階層に妖精がたくさんいて、そこだけには魔物はでない。ただ、妖精が攻撃してくることもあるし、命に関わるレベルのイタズラを仕掛けられることもあるので注意は必要だ。
中はレンガ造りの通路になっていて、所々土がむき出しの大部屋や緑溢れる部屋等もあり、また罠が豊富なことでも知られている。出現する魔物の数も多く種類も豊富で駆け出しから中堅に上がる試練の場として、割りと有名なようだ。
それに妖精のおかげか、最下層では植物系統と鉱物系統のレアアイテムが見つかりやすい。とはいえ採取するには大量の妖精をなんとかしないといけないわけで。ハイリスクハイリターンというやつだ。
リンは、今回はアリス達が守ってくれる予定なので、防具はホドホドの性能のモノを、武器は腰のポーチに小瓶を十本と、念のため懐に宝玉を埋め込んだ扇子を忍ばせている。あまり強力な装備はそれだけで注目の的だし、なるべく詮索されたくないので気をつけたつもりだ。
しかし妖精は捕まえたいので、一応召喚術の適性はある(召喚獣を捕まえるのは困難なため、スキルはあるが召喚獣のいない適性持ちは意外と多い)ことは伝えてある。
前衛二人にアリス、リン、後ろにシオン、マナカという構成で仄かに明るい通路を進んでいく。
出会う敵は片っ端からラティスとスレイが切り捨てていくため、出番は皆無と言っていいだろう。魔核はアリスが一定以上の大きさのモノだけ的確に素早く回収している。
迷宮は一階層がかなり広く、まっすぐ階段に向かってもそれなりに時間をとられてしまう。それでも中堅の冒険者パーティーに比べればかなり速い。何より敵の殲滅速度が違う。
一階、二階とサクサク進み、三階層も半ばにきたころ、ソレは現れた。
「おい、嘘だろ、初めて見たぞ」
「ドラゴンタイプか。この程度の迷宮どころかそもそも上位竜が迷宮にいること自体あり得ないぞ」
「最近低レベルの迷宮や魔物を駆逐してあるはずの街道沿いに異様にレベルの高い魔物が出るって被害報告があるわ」
「全滅して報告出来ない冒険者や旅人もいるから、実際は報告の倍以上の被害があるって話よ~」
上から、ラティス、スレイ、アリス、マナカのセリフである。
緊張感がないようにも思えるが、皆油断なく眼前のドラゴンを見据えている。
ただ、無闇に攻撃してくる相手ではないため、リンもじっくりドラゴンを観察する。
姿は所謂西洋式の竜だ。尾から頭までは十メートルほどだろうか。全身は深紅の鱗で覆われており、周囲の温度を意のままにし、火炎と氷を操るレッドドラゴン。ドラゴンタイプのなかでも最上位種の一種である。古代神の末裔とすらよばれる彼らは、人よりもずっと長生きで思慮深く、イタズラに他の生き物を傷つけたりしない。その深紅の瞳は理知的な光りをたたえ、基本的に話が通じる相手であるため、闘う必要はない。皆もそう思っているからこそ、多少の余裕があるのだろう。もっとも闘って勝てる相手でもないというのもある。
「マナカ、契約する?」
召喚士であるマナカなら契約できるかもしれないと、リンは聞いてみたが、首を振られた。
「ムリね~。竜との契約は特殊な条件が必要だもの~。私は魔力が足りないし、幻竜玉もないしね~。そもそも上位竜自体契約はよっぽど運がないとムリよ~」
上位種の竜と契約を結ぶにはいくつか条件がある。まず、1000以上の魔力を保有していること。竜の谷にある幻竜玉というアイテムを持っていること。竜に気に入られること、契約石を保有して、かつ的確に選べること。マナカはこの世界ではかなり高レベルなのだが、それでも魔力が1000には届かないようだ。ましてや相手は最上位竜。魔力も2000は必要になる。
『異なる地よりの《来訪者》よ、汝何故この地に来たりしか』
竜の声が辺りに響き、リンは目を見張った。流石は古代神の末裔とすら言われている最上位種の竜。リンが異邦人であることも見抜いたようだ。
「さあ?」
しかし本人にもわからないので答えようもない。
『汝戦乱を望みしか』
「まさか」
平和に慣れきった平均的日本人に何を言うか。
『権力を望みしか』
「まったく」
『財力を望みしか』
「ぜんぜん」
『名誉か地位を望みしか』
「いやいや、そんな面倒そうな」
『ソナタは欲がないとでも言うつもりか』
「いやいや、物欲まみれの一般人よ」
『では何を望む』
「え・・・・なんか面白いレア植物とか、変わった効能のあるレア植物栄養剤とか?」
美味しいのもいいが、面白い植物も育ててみたい。この間の芋みたいなのは不気味で不快なだけなのでパスだが。あと、日本人なのでいずれ米とか味噌とか醤油とか梅干しとか。
『・・・・・』
リンの言葉に竜がしばし絶句する。そして突然大部屋を揺るがす大きな咆哮が響き渡った。
『おもしろい娘よ』
どうやら笑っていたらしい。
『良いだろう。我はソナタを選ぼう』
・・・・なんですと?
『《役目》なき《来訪者》よ。《来訪者》なれば召喚士のスキルも持っておろう。我と契約せぬか』
「はあ、なんかよくわかんないけど、イヤ」
さっさと断ると竜はジロリとにらみつけてきた。断られたのが不満のようだ。
隣でマナカも驚いている。・・・・普通断るよね、これ。職業:農園主に竜が必要か?必要ないよね?
『我との契約を断ると?魔王すらも倒せる力が入るというに』
「イヤ、いらないし、そんな力」
物凄く面倒に巻き込まれそうなフラグ満載ですよね!リンは平和に暮らしたいのだ。権力者に無駄に目をつけられそうな過剰戦力は必要ではない。しかも竜なんてまったく畑仕事に役立ちそうにないしな。
『ふむ、我は畑仕事も得意ぞ』
まるでリンの心をよんだかのような見事な切り返し。
「え、ホントに?じゃあ契約してもいいよ」
呆れたような周りの視線も何のその。畑仕事出来るならバッチコイ!早速竜と契約をする。必要な契約石は竜自身が教えてくれました。
こうしてリンは仲間を一人?手に入れたのだった。
通り名:オルト(真名:紅琉)
種族:レッドドラゴン
所有スキル:不明
特技:畑仕事(自己申告による)、すべてのモノを凍らせる、高熱により鉄をも溶かす、すべての生き物の言語が分かる
備考:レッドドラゴン族の長、人間に換算すると25才(自己申告による。実年齢は880才)意外と駄洒落好き、人間に詳しい

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。