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妖精捕獲大作戦 その①
ようやく登場人物増加。
畑仕事も独りぼっちの話も出来ないさみしんぼ脱出。
食材ギルドである。
さすがに、身ひとつで広大な畑を管理するのはムリなので、魔法の残滓をきれいに取り去る特殊道具を注文することにしたのだが、高かったのだ。畑に自生していた薬草類のほとんどを売ったが、半分にもならなかった。
魔法具ギルドはボッタクリだ!
しかし必要なものは必要で。ゲーム時代のお金はなるべく使わない決めたので、食材ギルドで依頼を受けて稼ぐことにしたのだ。初志貫徹というやつだ。大事だよね!しかし地道に薬草集めの依頼などでは到底目標額においつかない。
「・・・・というわけで、何かいい依頼ないですか。一攫千金?」
「うーん、そうねえ、一攫千金、あるにはあるけどハイリスクなのよねえ。そもそもランクも足りないし」
依頼受付カウンターはここではないが、まったく知らない人には(たとえ職員であっても)話かけづらいため、初めに話をした、新規、継続受付カウンターのお姉さんに話しかけたのだ。お姉さんは暇だからいいわよと言って話を聞いてくれたのである。
しかし、暇だからってそれはそれでどうなんだろう。どうでもいいけどこの受付必要なのか??
ギルド職員のお姉さんがうんうんうなりながらも探してくれるが、やはり一気に稼げるうえにローリスクな依頼はないようだ。特にリンのような未成年かつ最低ランクのこなせる依頼ではたかが知れている。
「アリス」
しばらくすると、いい依頼を探してくれている職員さんに、声がかかった。振り替えると、いかにも魔法使いといった感じの、茶色いローブをまとった男性がいた。青色の長髪に理知的な青い眼をした中々いい男である。この世界は美人遭遇率が高い気がする。もともとの自分の普通顔を思い出して思わず遠い眼をしてしまう。
「シオン?いま仕事中なんだけど」
「分かってる。聞こえた。明日」
淡々と、単語を連ね、うなずく。そもそも文章になってないよね?それじゃ会話成立しないよね?リンには男が何を言いたいのかさっぱり分からないが、職員さんにはわかったらしい。
「いいの?」
職員さんに聞かれて小さくうなずくと、踵を返して去っていく。まったく意味不明である。
「リンさん、明日私の所属するパーティー【吹き抜ける風】がランク8の迷宮に潜るけど一緒にくる?」
「へ?」
よくよく聞くと、ギルド職員さんは只のギルド職員ではなかったらしい。
食材ギルドでは、職員の実に八割がボランティアなのだとか。目の前のアリスさんもボランティアで、通常週に三日だけこの受付に座っているが、依頼がつまった時などは月に五日くらいしかいないこともあるようだ。アリスさん以外にも受付担当のボランティアは六人ほどいるらしい。
そもそもボランティア職員はBランク以上の登録者だけができるらしく、彼女は『秘密』と教えてくれなかったが、なにやらスバラシイ特典があるらしい。もっとも勤務時間やランクによって特典は変わるようだが。受付業務は特にランクAでなければ出来ないとか。
理由は、稀にくる荒くれ者への対処や、たまに持ち込まれる危険植物に対応するためだとか。食材ギルド登録者は戦える者ばかりとは限らないし、学者肌の者も多いため、事があったとき即座に対応出来るように、普段は暇囲っている受付業務員が必要らしい。
「けっこう危険な植物とか気付かずに持ち込まれることもあるのよ。暇に見えても一応危険なモノを持ち込んでいないかさりげなく目を配ってはいるのよ?まあ、普段は本当に暇なんだけど」
そういったとき他のボランティア職員は人命優先で、建物内の登録者を守り、必要であれば安全なところに誘導する。余裕があれば、重要書類も避難する。
アリスさんは【看破】や【発見】【直感】といった常時発動の受付向き便利スキルを有しているうえ、ギルドランクAで戦闘能力も高いため重宝されているようだ。
「私達、パーティーランクもAだから、普段はこんなに難易度の低い迷宮には潜らないんだけど、今回潜る迷宮は少し特殊なの」
「特殊?」
「ええ。別名【妖精の楽園】最下層には様々な種類の妖精がいるわ。腕のいい召喚士なら一週間もいれば2~3体捕まえられる。仲間の召喚士がどうしても妖精がいるというから受付業務も休みをとっていくことにしたの」
召喚士が召喚体を捕まえるのは思っている以上に大変だ。まず、相性というものがあり、それが合わなくてはどうにもならない。次に戦って勝つ、話が合う、なんとなく気に入られるなど、手に入れる条件は相手の個体によって千差万別だ。それを見抜けなければそこまでだ。更にそこまでクリアしても契約の儀式で弾かれることもある。儀式には複数の契約石が必要なのだが、これも個体によって違う。必要な石を的確に見定めることができなければ儀式で弾かれ、召喚体を手に入れることはできない。
非常に手間がかかる上、契約石など経費がかかるため、ゲーム時代は不遇職ワーストランキングで常に上位にいた残念職業なのだった。とはいえ召喚術を極めた召喚士は非常に強力なのは間違いない。
かくいうリンも暇があれば召喚体を捕まえに行っていた。生産系スキルもとっていたため、契約石は自前で用意できたし、召喚体はモノによっては畑仕事にも戦闘にも使えてとても便利だったのだ。特に、妖精系統は便利なスキル持ちが多かった。畑を肥やしたり、作物の実りを良くしたり、収穫が得意だったり、何より可愛い。見ていて非常に癒される。
疲れた現代っ子の必須アイテムといえよう。
話が逸れたが、ともかく、彼女らにしてはそこまで警戒することのない低レベルの迷宮(とはいえ、迷宮には変わりないため決して油断していいものではない)のため、リンを守りながらでも充分潜れると判断した(先程の男性が)ので、お金が必要なら、一緒に連れて行ってもいいということだった。
例え低レベルの迷宮であったとしても、運がよければそれなりのレアアイテムが手に入ることもあるし、普通に取れるアイテムだって、数を集めればそれなりの値段で売れる。
通常の冒険者は装備や回復アイテムなどにお金がかかるため、トントンだがリンはAランクパーティーが一緒だし、そもそも未成年者に傷を負わせたり、戦わせる彼らではないため、その辺りにお金を使う必要がない。なので、丸儲けできるという次第。
「物凄くいいはなしだけど・・・・・」
リンだけがかなりお得で、アリスたちにはまったく利がない。むしろリンという余計な荷物ができる分マイナスと言えるだろう。
そう言うと、アリスさんは苦笑して首をふった。
「いいえ、むしろあなたがいてくれるほうが皆が喜ぶわ。私達皆趣味が同じで」
つまりは可愛い子供が大好きらしく(別に変な意味ではない←ここ大事。とアリスさんは三回くらい強調していた)先程の男性はたまたま食材ギルドに来ていた(彼は食材ギルドカフェのメルリックティーが大好きで暇さえあれば飲みに来ているらしい)のだが、受付で自分好みの可愛い少女(重ねて言うが、変な意味ではない)困っているのを見て、声をかけたらしい。
リンにとっては渡りに船と言えるだろう。ついでにリンも妖精を捕まえられると尚よし。
「迷惑でないならよろしく。ちなみに敬語は苦手だし、態度も不快に思うことがあるかも」
それでもよければ、と言えば、スバラシイ笑顔でアリスさんがうなずく。
その後、細かい打合せをし、無表情ながらもウキウキと帰途につくリンだった。
しかし食材ギルド、結構長い時間話していたが、他のカウンターや店、カフェにはそれなりに人が来ていたが、この新規、継続受付カウンターには一人も来なかった。どんだけ暇なんだよ!

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