挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界とチートな農園主 作者:浅野明

農園を作ろう

7/50

理想の始まり

街の南側の門を抜け、少しいったところにチェチェ草は生えている。こんなに簡単に採取できるのに依頼が出されているのは、まばらに生えているうえに特徴が少なく、採取に時間がかかるのと、数が必要だからだ。

チェチェ草は精製すると甘味料になる。いわゆる砂糖だ。しかし必要な数を揃えるのも精製するのも時間と手間がかなりかかるうえ、大量生産は出来ないため、一般市民では中々手に入らないほどには高額なのである。それでも、今のところ他に甘味料がないこともあり、金持ちや貴族、それに一般市民でも祝い事の時など、高額の割には需要が多く、採取の手間だけでも省くため、食材ギルドや冒険者ギルドに採取の依頼が定期的に出されるのだ。百本採取しようと思うと二、三日かかるがたいした危険もないのと、他の採取依頼と一緒に受けられるため、主にリンのような未成年登録者が依頼を受ける。

「さっそく探そうか」

かがみこんで採取しようとしたフェリクスを、リンが止める。

「リン?」

いぶかしげに見てくるフェリクスに、採取スキルを持っていることを告げると、不思議そうな顔をされた。

「採取スキルってレベルがあがると採取したい薬草とかが光って見えるっていうあれだろ?それがあるならリンはすぐに採取出来るな」

採取スキルがないフェリクスはたいした役には立たないけど、いないよりはましだろうからやっぱり手伝うよとにこやかに言ってくれるフェリクスに、本当にいい人だなあと思わずしみじみしてしまう。

「スキルレベル100以上あるから」

「・・・・100?冗談だろ」

スキルを使うと効率が良いと言うと、フェリクスはなぜだか口を半開きにしてリンを凝視している。

「本当。だから大丈夫」

「大丈夫ってどういうことだ」

首を傾げる彼はきっと、採取系のスキルを持っていないからわからないのだろう。百聞は一見に如かず、ということでリンはやって見せた方が早いとシステムブックを開き、スキルスロットを入れ替え採取をセットすると、スキルを発動させた。

「【パーティー採取:チェチェ草】」

リンの体が淡い赤色に包まれ、スキルが発動する。

「な・・・・・」

フェリクスが驚愕に目を見張る。あちこちから一斉に赤い光が瞬いたのだ。

「なにが起こった??」

「採取系のスキルはレベルが100をこえるとパーティー採取っていう複数人で採取出来るスキルが覚えられるの。パーティー組んでなくても範囲内にいれば指定出来るし」

ぼっちのリンは使ったことがない無用のスキルであったが、意外なところで役にたった。これで採取効率はぐっと上がるはずだ。

「いや、いやいや、そもそもレベル100とかどこの英雄だよ。ないから。まずいないから、そこまで高レベルの採取スキルとか」

「そうなの?」

採取や伐採といった、上位派生も成長もないスキルなら割りと100レベルくらいまでならあげているプレイヤーもいたのだが、現実となると、確かにそこまで上げるのは難しいかもしれない。そう言えば昨日聞いたときスキル平均は10から30とか言ってたような。

「うっかり?まあ、細かいことは気にしないってことで。とりあえず採取終わらそうよ」

「・・・・そうだな。何かいちいち気にしてるのが馬鹿らしくなってきたよ」

「そうそう」

肩を竦めて苦笑するフェリクスにリンも頷く。ただ他の人には決してスキルのレベルは知られるなよと釘は刺されたが。

二人は赤く発光する草を片端から摘んでいった。

「まさかほんの一時間程度でチェチェ草百本集め終わるとはね」

「初めて使ったけど、中々使い勝手のいい・・・・・」

「リン?」

途中で言葉を切って、周囲を警戒するリンにフェリクスも何事かと周囲を見渡す。

リンは索敵系のスキルは持っていないが、右手に装備している月のリングにスキル【索敵】【感知】【生物鑑定】がついている。ダンジョン【神々の迷宮】のひとつで手に入れた【神遺産】級のアイテムだ。

「モンスターだ。まだ遠いけど。スケルトンだね。所有スキルは【不死】【剣術】【盾】【光弱体(微)】【闇耐性(微)】うーん、ごく普通」

感知で遠くの敵も味方も把握。索敵範囲内に入ると生物鑑定の効果も上乗せされ、種族から保有スキルまでバッチリ分かる優れモノだ。

「スケルトンだって?!あり得ない!」

「この辺には出ない敵なの?」

動揺していたフェリクスだったが、冷静なリンの様子に即座に自分を立て直したようだ。

「ああ、この辺には出てもせいぜいFランクの魔物、スライムやゴブリンくらいだ。それだってよっぽど森近くでなければ滅多に出ない。スケルトンはDランクの魔物だし、そもそも不死系の魔物は古戦場跡か墓地か迷宮くらいにしかでない。この近辺では東の草原の向こうの地下墳墓が一番近い。だいたいそんなモノがこんなに王都近くにぽこぽこ出てきたら高ランクの冒険者以外誰も外に出られないだろ」

それもそうだ。リンが納得していると、フェリクスは眉間にシワをよせて逃げきれるだろうかと逃げる手段を考え始めた。なぜ敢えて逃げる必要があるのだろう。

「一体だけだし倒せば良い」

さらりと言ったリンをフェリクスはあっけにとられたように見つめる。

「スケルトンだって言ったよな」

「そう、近付いて来てるね」

「倒すって」

「大丈夫、来たよ」

視認出来る距離まで迫って来たスケルトンに、リンはスキル【光魔法:浄化】を発動させる。光魔法のレベルは低いがそれでも八級までの魔法なら使える。ただのスケルトンくらい余裕である。

魔法は最上級は特殊なクエストをクリアした報酬として手に入る超級,そのしたに特級魔法それから一級から十三級の魔法があり、八級は中級の入り口といった辺りだが、スケルトン程度なら九級の【浄化】で十分だ。

思った通り【浄化】一発で灰になる。

横を見るとフェリクスが口をぽかんと開けて呆けていた。

「どうしたの」

「今の光魔法か」

「うん」

「はあ、本当に非常識だな」

ため息をつかれてしまった。

フェリクスがいうには九級の光魔法など、高位の神官か職業【聖女】くらいしか使えないという。他の系統の魔法もせいぜい十級まで。それでもかなりの殲滅力らしい。八級以上が使える魔法師は数えるほどで大抵はSランク以上の冒険者か国のお抱え魔法師だという。現在知られている中で最高峰の魔法師は称号【知識を蓄えるもの】職業【賢者】で焔系統の魔法を六級まで使えるという話だ。

それを聞いてリンは少し考えた。

全面的にスキルレベル低かったんだった。またうっかり?

もしかして超級まで使える魔法あるって言わない方が良いかも、と思っていたら案の定フェリクスに怒られてしまった。

正座で一時間だよ。あんたはおかんか!





夕刻。

何故か一仕事終えたかのように清々しい顔のフェリクスとぼろぼろになった(主に精神面で)リンはようやく目的の土地にたどり着いた。

そうなのだ。はっきり言おう。

リンは別に冒険者として依頼をこなしまくり、名をあげたいわけでも、魔物と戦いたい訳でもなく、ただただ野菜や果物をつくり、家畜を育てたい、それだけなのだ。

そして今、目の前には理想の土地が広がっている。

栄養たっぷりの肥えた土。家どころか満足いく広さの畑を作ってなお余り、家畜小屋だって作れる広さの土地。

「ゆ、夢だ!夢が現実になったんだ」

感動のあまりおどりだしそうなほど嬉しい。

6年前のあの時。本当は田舎にいって農業したかった。諸々事情があり、それはかなわなかったが、今、とうとう彼女は理想の生活を手に入れたのだと実感したのだった。














+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ