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今後の予定
フェリクスが拾った少女は、なにもかもが規格外だった。
ほんの10才ほどの少女だというのに、24才のフェリクスと対等に話しができる。頭が良いとかいう問題ではない。貴族の子女か王族ならばまだわかるが、一般庶民ではまずあり得ない。
さらに街の中ではなく、外に土地がほしいという。よっぽど腕に自信がないとまず考えられないことだ。魔物の力が増している近年、亜人の中では最強とうたわれる龍人族さえも集落外で一人で生活などすれば、七割ほどの確率で命を落とすといわれているのに。
実は今回リンに紹介した土地はフェリクスの持ち物なのだが、彼が森の近くに土地を取得したときもさんざんにバカにされたものだ。もっともフェリクスの場合はあの場所に、特定の条件を満たした時だけにさく花が必要で、必要に迫られて取得しただけであって、別に住むためではないし、もう必要がない。
しかし、一応売りに出してはみたが、当然買い手がつくはずもなく、すでに三年放置されている。そして少女は誰もが必要ないというこの土地こそが良いらしい。
その上、少女は高価なアイテムボックスまで所持していた。アイテムボックスは安物で、アイテム20種類、一種類につき15個までしか入らないものでも晶貨一枚はするというのに。どれ程の性能なのかは言わなかったが一般には出回っていない本型という珍しさ。それだけで一財産だ。
その上、アイテムボックスの中には(少女の自己申告による)金貨が100枚はあるという。
何者なのか気にするのは当然と言えよう。旅行中に草原の辺りで盗賊にでもおそわれたのかとも思ったが、はっきり少女が否定した訳ではないが、話して見た感じではどうやらそうではなさそうだし。
しかし、当然少女が答えるはずもなく、出身地も親兄弟も語ることは決してなかった。
「取り敢えず、僕の【直感】【幸運】によると君に協力すると良いみたいだから、できることはしよう」
スキル【直感】と【幸運】の両方を持っていると、こういうときどうすれば自分にとって最良なのかが漠然とわかる。直感はともかく、幸運はかなり取得条件が厳しい上に漠然としたスキルである(スキル説明には人生の幸運度をあげるとある)ため、持っている者は少ないが、実際はかなりのお役だちスキルなのだ。
フェリクスの持っているスキルは、直感、幸運、剣技、回復(小)、回避、目利き、発見、値切り、商人の心得だ。
各地に蔓延る魔物に対抗することすらできるスキル、称号、職業は神々からの贈り物(とは言うものの魔物も持っているのだが)であり、まとめて【ギフト】と呼ばれる。一定の条件を満たし、各地にある神殿で祈りを捧げると、【ギフト】を授かることができる。とは言うものの、条件が不明のスキルがほとんどなので、人びとは定期的に神殿で祈りを捧げることにしているのだが。
授かったギフトは各ギルドが発行するカードに刻印されるが、自分が許可しない限り他人が見ることはできない。
ともあれ、スキルとは誰もがいくつかは持っているのだが。
「直感と幸運か。良いスキルを持っている。手を貸してくれるのは助かるです。よろしく」
やはり無表情で淡々と言っているが、手がパタパタしている。ひどく分かりにくいが嬉しいらしい。
「あと、ギルドに登録したい」
「そうだね、市民権を得るよりその方がいいけど、どのギルドにするかが問題だ」
「農業関係のギルドはある?」
「農業ねえ・・・・食材ギルドがあるけど」
その名の通り、食材に関するすべてを扱うギルドで、珍しい種の販売、品種改良、農業のノウハウ、モンスター肉、さまざまな料理のレシピ、迷宮食材など、扱うものは多岐に渡り、迷宮ギルドや調薬ギルド、料理ギルドとも密に関係している。
ただし、食材ギルドは継続条件として一年に一回以上新種の食材を納品するか、品種改良しているならその研究成果を提出しなければならない。登録から三年以内にある程度の成果をあげられなければ登録抹消されてしまう。
どのギルドもギルドごとの規定があり、ギルドに貢献するものにだけ恩恵が与えられるのである。誰でも登録はできるが継続は難しい。だからこそさまざまな恩恵が与えられる。
「それ良い。そこにしよう、年齢制限とかあるかな」
「年齢制限はないけど、大丈夫か?」
一度どこかのギルドに登録抹消されると他のギルドにも情報が回り、どのギルドにも再登録は難しくなる。とはいえ、リンはまだ成人前なので、よっぽどでない限り登録抹消はない。その上、成人になるときにもう一度ギルドを選択し直せるので、年齢制限のないギルドならどのギルドでも良いのだが。
ちなみにいちばん簡単に登録、継続ができるのは冒険者ギルドである。ただし命の危険も高い。
リンが答えようとしたとき、ノックの音が響いた。
「若様、荷物はすべて所定の位地に運び終わりました」
ローズの報告にフェリクスは一旦少女とのはなしを終える。
「リン、あとは明日にしよう。夕飯が出来たら呼びに行かせるから今日はもう部屋で休みなさい」
少し強く言うと、リンは素直に頷く。彼女もやはり疲れていたようだ。
「分かった、ありがとう。明日フェリクスは時間とれる?」
「ああ、明日は一日休みをもらっているからね。仕方がないからリンに付き合ってあげるよ」
笑って言うと、リンも少し表情を緩めて頷く。
リンが部屋に引き上げると、フェリクスは急ぎ足で父親のもとへと向かった。
「・・・・ふむ」
息子の報告をききおえてラステル・ライセリュートは目を閉じる。
「その娘、いずれ我が家にとって必要になるやもしれん」
「【予知】ですか」
スキル【予知】は保有者は極わずかというレアスキルだ。ランダムで未來の情景がはっきり見えるというものだが、未來は不確定のため悪い未來ならその要因を取り除くことによって変えることができる。使い勝手は良いとはいえないがあると非常に便利なスキルだ。なにせ悪い未來はすべからく回避できるかもしれないのだから。ライセリュート家には【予知】持ちが多く、だからこそここまで登りつめてきたといえる。
「うむ。なるべく便宜をはかってやれ」
「わかりました。といっても父さんも母さんも姉さんもシリンもきっと彼女を気に入りますよ」
クスクスと笑うフェリクスには予知などないが、それでもその予想は当たった。夕食会がすむころにはリンは家族の一員のようになっていたのだった。
少しかきたし。

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