旧朝鮮総督府庁舎の取り壊しを開始した1995年の光復節(日本による統治からの開放)記念式典会場で、KBS交響楽団が『感激時代』を演奏した話には今でもあきれてしまう。『感激時代』は光復の喜びではなく皇軍を励ます歌で、1939年に発表されたものだからだ。この歌の第2節は「喜望峰は遠くない/幸運の航路よ」で終わる。この歌の喜望峰とは南アフリカ・ケープタウンにある喜望峰のことだ。この歌を庁舎を壊す時に演奏し、誰も責任を問われなかった。
ユン・シムドクの玄界灘心中事件について、カン氏は陰謀説を唱えている。蓄音機を売ろうという日本企業の「企画作品」だったということだ。音楽と時代と社会を事実関係で見通した評論家の本領は、この章で発揮されている。
このほかにも同書は『セ・シ・ボン』時代のチョ・ヨンナムがソン・チャンシクをトイレで引っぱたいた話、なぜイケメンではないチョー・ヨンピル、イ・ムンセ、ピョン・ジンソプが韓国で初めて「オッパ(若い女性があこがれの年上男性を呼ぶときの言葉)」になったのか、ビートルズが米国進出する時、なぜスーツ姿だったのかなど、興味深い話が350ページにわたりつづられている。
また、「音楽の美学的には一考の価値もない」というK-POPのヒットについて、カン氏は「ジャマイカのレゲエがグローバルスタンダードとなったのは、英米圏の大手レーベルのおかげだ。K-POPは地球的コミュニケーションシステムが整えられて以降、インターネットを通じて初めてグローバルスタンダードとなった成功事例であり、受益者だ」と書いている。
これまで講義を3回行ったカン氏は、今秋4回目の講義を行う。これらの講義も全て本にする計画だとのことだ。カン氏は「驚くほど粘り強さと忍耐力を持つ編集者のおかげで本が出せたし、今後も出していけるだろう」と語った。