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「引きこもり」するオトナたち

何が餓死した31歳女性の生活保護を遠ざけたのか
生活困窮者を見捨てる「追い返す」だけの対応

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第177回】

  また起きてしまった。弱き者の声がどんどん置き去りにされ、なき者にされていく――。

 そんな時代を象徴するように、31歳の女性が自宅でひっそり餓死していたというニュースが報じられた。

 報道によれば、発見されたのは、大阪市東淀川区の団地に住む女性。部屋の押し入れに敷かれた布団の上で、半袖、半ズボンのやせ細った姿になって、仰向けの状態で倒れていた。遺体は腐敗が進んでいて、死後数ヵ月が経過していたという。

 すでに彼女の部屋の電気やガス、水道といったライフラインは、すべてストップ。家賃も滞納し、冷蔵庫にはマヨネーズなどの空の容器しか入っていないなど、貧困にあえぐ生活だったことが伺える。

 女性は元々、60歳代の母親と同居していて、父親の生命保険を切り崩して生活していた。

 しかし、その母親が1ヵ月ほど前に脱水症状で見つかって入院。11月18日午前、合いカギで部屋に入った親族によって、彼女も餓死した姿で発見されたという。

生活保護相談するも断られ困窮
死後1ヵ月、誰にも気づかれず押し入れに

 11月20日付の産経新聞によると、女性は母親とともに、4年前の11月、区役所を訪問。生活保護の窓口に、生命保険がなくなったときに生活保護を受給できるのかどうか、相談に訪れている。

 生活保護の担当者は「保険金がなくなったときに相談に来てほしい」などと対応したものの、その後、2度と彼女たちが窓口に来ることはなかったという。

 また、近所の住民たちも、娘が同居していたことを知らずに1人暮らしだと思っていたなどと証言。事件や災害などが起きたのを機に、本人の存在が明らかになるという点でも、筆者がこれまでさんざん見てきた、地域に埋もれて引きこもっていた人たちの事例と同じである。

 約1ヵ月前、管理会社から「連絡が取れない」という通報を受けて安否確認に来た警察が、脱水症状を起こして倒れている母親を発見。病院からの連絡で役所も調査に入ったものの、電気やガスが止められていたことから、いずれも1人暮らしと判断されて、押し入れのある部屋を確認しなかったようだ。

 その後も、彼女の遺体は押し入れの中で、1ヵ月余りにわたって、誰にも気づかれることがなかった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。著書は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)などがある。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)、最新刊『大人のひきこもり~本当は「外に出る理由」を探している人たち~』(講談社現代新書)
。池上正樹 個人コラム『僕の細道』はこちら

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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