デレアニ2期から本格登場の美城常務ですが、よくも悪くも話題になりますね。
ダメっぽい人、実はできる人、評価は割れまくっています。
強引なやり方をして反発されているのはマイナス評価、
武内Pの案を却下しなかったことや、楓さんのライブをやらせたことなどはプラス評価、
といったところでしょうか。
第二期の台風の目となっている美城常務とそのヴィジョンについて、
登場した14〜16話までを通した形で書いてみようと思います。
1)346プロのアイドル部門は採算がとれているのか?
自分としては、まずここが気になるところなんですよね。
常務が来る前の346プロって、仕事の規模が小さいんですよ。
1話の楓さんを筆頭とした346プロアイドル主力のライブ、
会場がパシフィコ横浜でした。アイマスライブでもよく使うここ、キャパは4000人クラス。
アニマスの新春ライブ(でしょう)を披露した場所です。
ここは弱小765プロが1年かからずに辿り着いたハコなんですね。
そこで765プロとは比べものにならない人数のアイドルと社員を抱えている346プロがライブをやる。
あれっ? てなりませんか。そのレベルでやってていいの? ってことです。
346プロの会社敷地が巨大で豪華なのは、アイドル以外の部門もあるからで、
大怪獣ギラリドンとか、2期では小梅ちゃん主演のホラー映画なんかも製作しているので、
会社そのものはでかくて、企業としての信用もあるのでしょう。
ですが346プロのアイドル部門はパシフィコ、オリックス劇場、屋外フェス(これは大きいかも)で
ライブをやって、CDもまずまず売れていたとしても、それでも売り上げは充分だろうか?
2)対外的ブランド確立の意味
もうひとつ、346プロの気になる点として、
346プロ内でやってることが多くないか? というのもあります。
例えばラジオ。ゲームで聴けるマジアワもですが、パーソナリティが346プロのアイドルで、
本職のラジオパーソナリティがやっている番組じゃないです。
バラエティ番組も川島&十時が司会をやっている身内の番組で、映画もおそらく製作346プロ。
例えば765プロの「生っすか!?サンデー」なんかは765プロが枠を持っている番組ではなく、
(弱小事務所ですから当たり前なんですが)
つまり外部の会社や業界人に認められて、仕事をさせてもらっている。
それと比べると、346プロのアイドルたちは大手プロダクションの恩恵を受けている反面、
346プロという枠の中に収まっている部分も大きいのではないか、と考えられるわけです。
3)アイドルと芸能人
このへんは今後、美城常務のアイドル観がより明確に示されてからのテーマになると思いますが、
例えば「346プロ サマーアイドルフェス」の出演者、セトリがニュータイプの6月号に載っていて、
それを見ると出演者には
小日向美穂・佐久間まゆ・高垣楓・輿水幸子・川島瑞樹・城ヶ崎美嘉・十時愛梨・日野茜・白坂小梅
堀裕子・星輝子とシンデレラプロジェクトとなっています。
もちろんアニメ的な都合もあるでしょうが、346プロの名前を冠した屋外フェスで、
歌って踊れるアイドルが少なすぎるのではないか。もっと総力戦でいいはずなのに、
ステージで歌って踊るということにもっと執着するアイドルが多くてもいいんじゃないか?
そんな風に思うんですね。
というのも、346プロはアイドル部門はまだ2年の実績しかなく、他部門のほうが主力ですから、
だとすればバラエティならお笑い芸人がいるし、映画なら俳優女優がいるわけです。
歌だってミュージシャンがいるんでしょうけど、実際問題として「アイドル」とは
どういう存在なのか? どんな仕事が本分で、何をやって稼ぐのか? を、
これは社内的に問われるのは当然だと思うのです。
765プロみたいな小所帯なら、何やって稼いだっていいんですが、
346プロぐらいの大所帯だと仕事の食い合いという問題も発生する。
立ち上げから2年、もろもろ大目にみてもらってきたが、
そろそろちゃんとした会社の戦力として計算できる存在になれ、ということで、
美城常務が統括重役として上に立つことになったのではないだろうか。
ここまでは現状整理です。実際のアイドル部門の収益額など、
情報として確定ではない部分もありますが、めっちゃ儲かってるわけではなさそうです。
2年やってきた成果、業績でみれば、
2年でヒットチャート1位(竜宮小町の七彩ボタン)、アイドルアワード(春香)、
ハリウッド映画進出(美希)、アリーナライブ(これはフェスといい勝負か)を実現してきた
弱小765プロと比べてかなりぬるい感は否めない。
765プロには業界歴の長い高木社長のコネや、運などいろんなものが味方した部分もあるので、
765プロと同じかそれ以上のことができてなければおかしい! とはいいませんが、
それでも新人のプロジェクトにビルの30階の大部屋を用意し、
レッスン設備にトレーナーまで完備し、
無名の新人のリリースイベントに池袋サンシャイン噴水広場を用意する346プロが
本当にこれでいいの? とは言いたくなりませんか。
4)美城常務の発言
帰国して即出社した美城常務さん。お仕事やる気まんまんですね。
シンデレラプロジェクトの部屋にやってきて、何をしたかというと、
卯月、凛、未央に「仕事、がんばりなさい」と言いました。
このシーンの時点ではわかんないことなんですが、
なぜこの3人にだけ声をかけたのかというと、
エボレボの作曲が社外の大物音楽プロデューサーが手掛けたから、だと思われます。
美嘉のバックダンサーのときに川島さんがスッと立って挨拶をした人物。あの人です。
つまりNGの3人は外の人間の目にとまり、それも大物を動かした。
そこを美城常務は評価したというか、シンデレラプロジェクトの中でも3人に光るものを感じたのでは。
武内Pとの会話も重要で、「優秀な人材は大歓迎だ。期待している」と常務はいいます。
シンデレラプロジェクトぐらいしか実績がない武内Pを優秀な人材と評していますね。
気が長い方ではなく、おそらく超成果主義な常務は全ての部下に優秀な人材、なんて言わないはず。
常務は何らかの理由で武内Pを優秀と認めているのだと思われます。
そして「クライアントが最初に会うのはアイドルではなく君だ、身だしなみには細心の注意を」と、
これも対外的ブランド確立を目指すという部分と無関係ではないことですね。
また、このあとレッスンルームと衣装室も見ておきたい、と常務は出て行きます。
そこまで見た上で、「全プロジェクトを白紙に戻す」と言ったことは覚えておきたいところ。
最初から「こうする」というビジョンを持っていて、それをゴリ押しするために、
美城常務は統括重役になったわけではない、のだと思うのですがどうでしょう?
5)美城常務の正しさと346プロの体質
さて、そろそろきなくさいお話になってきます。
アイドル部門の幹部(18人、20代後半から30代が多いが、プロデューサーらしき存在は武内Pだけ?)
を集めて、白紙に戻すと常務は宣言します。ここはセリフを細かく再確認したいところ。
15話の冒頭で常務が言ったのが以下のものです。
常務「アイドルを選抜し、ひとつのプロジェクトにまとめ、大きな成果を狙うのが目的だ」
常務「私の厳選した企画に適合したアイドルのみ選出、強化する」
これに対し、武内Pが意見を述べるわけなんですがその前に。
なんで武内Pしか反対の意思を表明しないの? というのがありますよね。
いや、ワタクシもおじさんですからわかっています。
常務にヒラや課長が何か言ってひっくり返るなんてことは基本的にはアリエナイ。
余計なことを言えば、ことさらに立場が悪くなるだけでメリットがない。
左遷や降格を喰らったら家族にも迷惑がかかるし、自分の部下やアイドルにも迷惑をかける。
失うものがシンデレラプロジェクトと出世ぐらいしかない武内Pしか反対を表明できないのはわかる。
面白かったのは、今西部長まで「おいオマエ何を言い出すんだ!?」みたいな顔をして、
冷や汗流しながら武内Pの発言を見ている姿w 部長も会社員だなあとw
しかしながら、常務に反対を主張できないのはそれだけでもないようにも思えるんですね。
これまでの346プロアイドル部門のやってきたことは、ぬるかったんじゃないの? って。
いや、慎重にやってきたということは、ベテトレさんの厳しさとか、
みくが全然デビューさせてもらえず立て籠もったこととかから、理解はできるんですが。
ちゃんと力量にあったスピードで仕事を用意できているか?
採用した人材をちゃんと目的意識を持って育成、プロモしているか?
346プロの他部門との棲み分けをちゃんと考えているか?
そのへんにはワタクシもだいぶ疑問を感じるところがあります。
アイドルの1年は貴重な1年ですから。
アイドル戦国時代であるなら、なおさらです。
武内Pの反対と、それに対する常務の回答はこうです。
武内P「プロジェクトにはそれぞれ方針があり、その中でアイドルは成長し、
個性を伸ばしていると思うのですが」
常務「個性をのばす、大いにけっこうだ。しかし時計の針は止まってくれない。
今の非効率的なやり方では、成果が出るのが遅すぎる」
このあと武内Pの笑顔を失うやり方はできない、なら君の案を聞かせてくれ、というのはオマケで、
上記のやりとりが重要です。個性について常務は大いにけっこうだと言ってます。
やるなと言ってないし、無駄だとも言ってない。今のやり方だと遅すぎると言っているんですね。
なので、楓さんに仕事を蹴られても、武内Pの企画も許容する。
それを考えると、美城常務がダメ出しをしているのはアイドル部門の社員に対してだとわかる。
アイドルがダメ、とは言ってないのであって。
もっといえば常務の「白紙」宣言に対してお前らもっといいプラン考えろよ!
そんなもん常務に考えさせんじゃねえよ! ぐらいの感覚はあったんじゃないか。
武内Pを優秀な社員、と評したあたりもそのへん、あるんじゃないかな。
ニューヨーク帰りなわけですから、日本的な部下は上司に黙って従え方式より、
バンバンいいアイデア持ってこい、な人だと思うんですよね。どうかな。
武内Pは企画が認められ、裁量権と予算を獲得して、期末までに成果を出すことを求められました。
ダメだったら結果に応じた処遇を下す。
というのですが、笑っちゃうぐらい当たり前ですよねw
いや、大企業であればヘタこいても立場が守られる、なんてこともあるのかもしれませんが、
大企業でも平気で部署ごと消えたり、中小だったら会社ごと飛ぶからね。
逆にいえばこんな当たり前のことが今まで346プロアイドル部門では当たり前じゃなかったのかと。
そのへんはどうなんでしょう。
6)美城常務のアイドル観
16話で、常務はヴィジョンを語りました。
常務「今後346プロはかつての芸能界に見られたようなスター性、
別世界のような物語性を確立していこうと考えています」
これにスタッフは「この時代にあえてですか」「面白い試みだとは思いますが……」と、
時代に合ってるとは思えないというかんじを匂わせます。
なんとな〜く、心情的に現場でやってきた人間の気持ちを支持したくなる、気もします。
いきなりニューヨーク帰りで現場も把握できているか怪しいし、やり方は強引だし、
やってきたことを評価されず、軌道修正を強いられるアイドルがかわいそうだし、と。
なんだけどもさ。
この16話のタイミングで、こんなことを考えもしまして。
上田、難波、あやめ、珠ちゃんに新たに声がつきましたよね。
うれしいですよね。担当Pはそりゃもう嬉しいですよね。
次、CDほしいですよね。
はい。こういうことです。
346プロサマーフェスに、このアイドルたちはいませんでした。
あのステージに立つだけの歌がなかったから、です。
それはリアル事情でもあるんですが、デレアニ内の彼女たちも、
フェスのステージに立てるような歌とダンスを備えていなかったようにみえました。
アイドル、それでいいの?
デレアニを見て、常務の路線変更をよくないと思っている人々は、
上田しゃんたちはそのままでよかったと、思いますか?
少なくとも彼女たちの担当P(リアルの)はそうは思っていないんじゃないだろうか。
歌はありません、ステージに立つこともありません。それでいいの?
アイドルの本分はステージにある。というのは、765プロに関しては少なくともそうだといえる。
ではシンデレラはどうなのか? その問いはデレマス最初期からあったものです。
歌がないのにアイドルなの? という疑問はありました。
その問いがデレアニの中で繰り返されているのではないでしょうか。
ただ、上田しゃんたちを集めて社員さんが言ったことは、
社員「バラエティを減らします。将来的にはほぼなくなると思ってください。
かわりにアーティスト面を強化し、ブランドイメージを確立します」
これはなかなか、常務もかましてくれるなと。
いきなり言われてもそりゃ困る。
しかし、じゃあお笑いで、バラエティでやっていく、
それで売れればいいんだろという主義を通したらどうなるかというと、
346プロのお笑い部門からちょっと待てって言われるんじゃないですか。
たいして売れてない間は許したけど、冠番組を持つようにでもなったら、それは違うだろと。
あるいはお笑い部門に移籍とか。それでいいなら、そういう道もあるだろう。
だったら今、常務の方向性を拒否してお笑い部門に行くのもいい。行ければの話ですけど。
でもそうなったらもう、アイドルではないわけです。
少し話をすっとばしますと、上田しゃんたちは武内Pの企画に協力することになりつつも、
元の部署から出て行くことにはなりませんでした。
つまり、彼女たちも歌やダンスを磨き、アイドルとしてステージに立つ方向性と、
これまでのバラエティの二足のわらじをはくことになるのだと思います。
これ、ベストじゃないの?
バラエティ専門だった常務登場前よりいいと思うんですが、どうですか。
6)深読み編
さて、美城常務のいう「私のやり方」というのが実際に動き出していないので、
「今後346プロはかつての芸能界に見られたようなスター性、
別世界のような物語性を確立していこうと考えています」
の常務なりの実行プランがどんなものなのか、お手並み拝見なわけですが、
現時点でワタクシとしては常務さんは仕事の半分ぐらいはやり終えたんじゃないかと考えています。
まず、アイドルは歌とダンスをちゃんとやれと。
次に、常務は「白紙に戻す」と言った時点で全プロジェクトは白紙になったわけですが、
武内Pはカップラーメンができるより早く「シンデレラプロジェクトを続行したい」と、
白紙に書き込んだわけです。
白紙なんだからやりたいことを自由に書けばいいんですよ。
それを言えない、提案できない他の部課長やPは何やってんの?
今までやってきたことにそんなに自信がないの?
自分の担当アイドルのためにリスクを背負えないの?
いや、一会社員としてキツいとは思うんですけどね。
でもその程度の根性しかないなら、白紙にされてもしょうがないんじゃないか。
ぐらいには、気骨のあるバカが少ない気はしますね。
ただ、14話に出てきたまゆのPなんかは会議にいた18人の中にいなかったので、
プロデューサーレベルは参加できない役員会議だったのでしょう。
そこに武内Pがいるのは今西部長の計らいなのか、
これは深読みしすぎでしょうが、美城常務が武内Pを参加させたのか。
優秀な人材だと認められた、というのがここで効いてくるわけですね。
ただのヒラPだったら呼ばれないわけですから。
アニメでは出てこなかったですが、上田しゃんたちのPなどは、
少なからず常務の方針に反対の意思を持っていて、
期限付きながら裁量権を持たせられた武内Pに協力する形でアイドルたちの個性を守る、
というのは一応、提示されていたことになります。
あと、常務の発言で気になる部分として、今西部長との会話で、
部長が「やり方が強引すぎないかい?」と問うた時に、
常務は武内Pが失敗すれば反対派を黙らせられる、成功すればそれにこしたことはありません。
というのがありまして。
これはアイドル部門が儲かればいい、という成果のみを求めている発言ではなさそうです。
かつてのスター性のあるアイドル、というアイドルというものへの理想も持っていそうですし、
「私には私のやり方がある」というのも、今後その姿を見せてくるでしょう。
でもって。
常務のやってることって、どこに難があるんでしょうね?
確かに武内Pの存在がなければ、これまでのプロジェクト全滅、
常務の方向性を体現できるアイドルが登場しなければ部門ごと来年消えるという、
かなりリスキーな未来しか見えないわけですが、
武内Pが裁量権も持った形で期末まで戦うことで、
実質アイドル部門は2本の柱を持ったことになりました。
そして強引なやり方ではあるものの、アイドルがちゃんとアイドルとしての武器を持つために
ステージパフォーマンスの強化に取り組み、
346プロの他部署との仕事的な食い合いによって手詰まりになるのを今の段階で回避する。
結果的に常務登場前より、346プロはよりいい形に、
より強くなれる形になったと思うのですが、いかがなもんでしょう?
ダメ社員にとっちゃ居心地が悪い環境になっちゃいましたけどね。
最後に、14〜16話までを見事に表現したこのセリフで〆ましょうか。
誰かに言われたからやめちゃうって、その程度のものなの?
戦いのゴングは鳴った。
逃げたい奴は逃げるがよい。