”夏休みの自由研究に!手でつまめる水「Ooho」を作ろう!”という記事を見かけました。下の動画にある通り、ただの水がまるでゼリーかスライムのように、手で持ってつまみ上げられる状態になるというものです。
作り方は上記リンク先に詳しく載っています通り、アルギン酸ナトリウムの水溶液と、塩化カルシウムまたは乳酸カルシウムの水溶液を別個作っておき、前者の溶液を後者の中に落とすだけで、簡単に作れるそうです。確かにこれは楽しそうですね。どちらも食品添加物などとして使われるほど安全なものですし、アマゾンなどでも手頃な価格で入手可能(アルギン酸ナトリウム
、塩化カルシウム
、乳酸カルシウム
)ですので、確かに夏休みの自由研究によさそうです。
創案者は、単におもちゃとしてではなく、ペットボトルなどを必要としない、新しい水の運搬手段としてこれを提案しているようです。表面を覆う膜ごと食べてしまえばOKですから、確かに優れたアイディアといえそうです。
さて、この紹介だけで終わってしまっても何ですので、なぜこれが固まるのか解説してみましょう。アルギン酸は、海藻などから得られる成分です。アルギン酸(Alginic acid)の名は、海藻を意味する「Algae」から来ています。アミノ酸のアルギニン(Arginine)は、たまたま日本語で発音した時に似ているだけで、直接の関係はありません。
アルギン酸の正体は多糖類、つまり糖がたくさんつながった化合物の一種です。コンブやワカメなどは表面がヌルヌルしていますが、そのぬるぬる成分こそ、このアルギン酸塩です。実は、人間の軟骨などに見られるコンドロイチンやヒアルロン酸なども、アルギン酸とよく似た構造です。こうした生体由来のぬるぬる成分は、多糖類であることが多いのです。

アルギン酸。糖が長く連結している。
ただ、これらが通常の多糖類(セルロースやキチンなど)と違うところは、分子内にカルボン酸のユニットを持っている点です。普通のグルコースなどの糖にある-CH2OHの部分が酸化され、-COOHに変わっているのです。

左が通常の糖、右がアルギン酸の成分の糖
販売されている粉末状のアルギン酸はナトリウム塩となっており、1つのカルボキシ基に1つのナトリウムイオン(Na+)が結合しています。しかしカルシウムを加えると、これは2価のイオンであるため、2つのカルボキシ基を橋渡しして長いアルギン酸の鎖同士を結びつけます。こうしてできた網目に、水分子を大量に抱え込むため、柔軟かつ丈夫で透明な膜ができあがるのです。

カルシウム(金色)によって橋渡しされ、丈夫なネットワークとなる
こうしたアルギン酸に代表される多糖類は、食品の増粘剤などとして利用される他、人工イクラの製造などにも使われます。生命は適材適所で優れた機能を持った化合物をうまく利用していますが、人間もまたこれらを取り出し、うまく活用している実例といえそうです。まあ理屈はともかく、涼しげな夏の遊びとして、子どもといっしょにいろいろ工夫してみてはいかがでしょうか。
作り方は上記リンク先に詳しく載っています通り、アルギン酸ナトリウムの水溶液と、塩化カルシウムまたは乳酸カルシウムの水溶液を別個作っておき、前者の溶液を後者の中に落とすだけで、簡単に作れるそうです。確かにこれは楽しそうですね。どちらも食品添加物などとして使われるほど安全なものですし、アマゾンなどでも手頃な価格で入手可能(アルギン酸ナトリウム
創案者は、単におもちゃとしてではなく、ペットボトルなどを必要としない、新しい水の運搬手段としてこれを提案しているようです。表面を覆う膜ごと食べてしまえばOKですから、確かに優れたアイディアといえそうです。
さて、この紹介だけで終わってしまっても何ですので、なぜこれが固まるのか解説してみましょう。アルギン酸は、海藻などから得られる成分です。アルギン酸(Alginic acid)の名は、海藻を意味する「Algae」から来ています。アミノ酸のアルギニン(Arginine)は、たまたま日本語で発音した時に似ているだけで、直接の関係はありません。
アルギン酸の正体は多糖類、つまり糖がたくさんつながった化合物の一種です。コンブやワカメなどは表面がヌルヌルしていますが、そのぬるぬる成分こそ、このアルギン酸塩です。実は、人間の軟骨などに見られるコンドロイチンやヒアルロン酸なども、アルギン酸とよく似た構造です。こうした生体由来のぬるぬる成分は、多糖類であることが多いのです。
アルギン酸。糖が長く連結している。
ただ、これらが通常の多糖類(セルロースやキチンなど)と違うところは、分子内にカルボン酸のユニットを持っている点です。普通のグルコースなどの糖にある-CH2OHの部分が酸化され、-COOHに変わっているのです。
左が通常の糖、右がアルギン酸の成分の糖
販売されている粉末状のアルギン酸はナトリウム塩となっており、1つのカルボキシ基に1つのナトリウムイオン(Na+)が結合しています。しかしカルシウムを加えると、これは2価のイオンであるため、2つのカルボキシ基を橋渡しして長いアルギン酸の鎖同士を結びつけます。こうしてできた網目に、水分子を大量に抱え込むため、柔軟かつ丈夫で透明な膜ができあがるのです。
カルシウム(金色)によって橋渡しされ、丈夫なネットワークとなる
こうしたアルギン酸に代表される多糖類は、食品の増粘剤などとして利用される他、人工イクラの製造などにも使われます。生命は適材適所で優れた機能を持った化合物をうまく利用していますが、人間もまたこれらを取り出し、うまく活用している実例といえそうです。まあ理屈はともかく、涼しげな夏の遊びとして、子どもといっしょにいろいろ工夫してみてはいかがでしょうか。