NGT48に向けられる露骨な視線

一戸信哉 | 敬和学園大学人文学部国際文化学科准教授

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7月25日、NGT48 1期メンバーが発表になりました。今村支配人の「新潟県出身者が予想以上に入った」とのコメントもあり、「県内の12人を含む22人」が合格しています。新潟県では、地元色のより強いグループとしての期待が高まっています。

今村支配人の「予想以上入った」という言葉、秋元康さんの「粒ぞろい」という言葉に、新潟へのリスペクトを感じながら、しかし一方で、「新潟」あるいは「新潟女子」がそのような論評の対象になっているのだなと、新潟県民の一人として、なんとも複雑な気分になっているところです。

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すでに新潟県や新潟市とともに、さまざまな活動が動き出しているようで、地元の期待を感じます。

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一方ネット上では、当日の記者発表の写真を見て、早くもNGT48メンバーの「かわいい」のレベルを論評してみたり、「何番がいいか」をみんなで評価をしてみたりといった、アイドルグループをめぐるよくあるやりとりが始まっています。あえてリンクははりませんが、世間の関心がメンバーたちのルックスにどう向けられているか、非常によくわかります。アイドルへの視線として考えれば、ごく当たり前のコメントなのですが、地方都市の「新潟」あるいは「新潟女子」に対する視線の向け方としては、その露骨さにやや驚きを感じる新潟県民もいるでしょう。AKBグループが新潟に誕生したことを無邪気に喜ぶだけでなく、こうした状況にも(特に新潟県民は)目を向ける必要があります。

ネット上に見られるこの露骨さは、新潟のような小さなコミュニティに接続されると、メンバーのプライバシー暴きにつながります。すでに一部メンバーについて、さまざまなプライベートな情報が、書き込まれているようです。書く方も書かれる方もともに新潟の若者であるとすれば、ソーシャルメディア時代になってある程度「つながる」ことへの意識が育っているとはいうものの、地方ではどうしても「脇の甘さ」が出てしまうということなのかなと感じます。

新潟出身のアイドルはこれまでもいたわけですし、新潟発のNegiccoのようなアイドルグループもいて、この人たちはすでにこうした論評の対象になってきたというべきでしょう。しかし今回のNGT48の場合、12-20歳の女性22人のうち、県内が12名と多めで、最初から「新潟」を看板にして、世間に登場しました。専用劇場を持ち、定期的にメンバーがアップデートされるこのグループは、新潟にいながら、AKBグループの1つとして、中央とも接続され、世間の関心をひきつけることになります。グループとしては、地元にいる等身大のアイドルだけど、AKBグループとしてちょっと「都会の風」も感じるという立ち位置を狙うことになるのでしょう(そのために移籍・兼任など、知名度のあるメンバーを入れたともいえます)。

当然メンバーたちは、性的好奇心がさまざまな形(露骨に、あるいは、屈折して)で現れた人たちとも、向きあわなけなければなりません。

新潟のローカルアイドルとファンの関係は、「新潟」を背負うアイドルを押し上げようという気分もあり、「オール新潟」的な一体感があるように思います。そこにある精神性に「清く正しい」ものしかないとはいいませんが、ある種の「節度」を感じるところもあります。注目度の高いNGT48には、最初からアイドルへの露骨な視線が向けられているようにも感じます。

実際スタートすれば、新潟人のあたたかい雰囲気が、NGT48も支えてくれる、そのように期待したいところです。

(新潟日報モア「新潟ソーシャル時評」の記事を加筆修正の上転載。)

【追記】篠田昭新潟市長も30日の定例記者会見で、NGT48のプライバシーについて述べ、「大変に熱心な方」の「特異な行動」について、情報交換、意見交換して、対応するとしました。都会の一角で、アイドルを目指す若者とファンが交流するのではなく、地方都市のど真ん中で、その街の若者を巻き込みながら、アイドルグループとして展開するわけですから、なれない地方都市の側としてはいろいろ考えなきゃいけないということになるようです。

篠田市長は、人口約80万人の新潟市は、東京や大阪などの大都市と比べ、地域コミュニティーが狭いと指摘。メンバーはプライベートの時もグループの一員との自覚を持って行動し、温かく見守る地域住民が大部分であることを期待した上で、「大変に熱心な方が特異な行動を取られる時にも対応できるか、(運営側と)情報交換、意見交換をしていきたい」と話した。

出典:新潟)プライベートも「自覚を」 NGT48に新潟市長:朝日新聞デジタル
一戸信哉

敬和学園大学人文学部国際文化学科准教授

早稲田大学大学院、財団法人国際通信経済研究所研究員、稚内北星学園大学情報メディア学部などを経て、2006年4月より敬和学園大学人文学部国際文化学科准教授。専門は情報法、情報メディア論。新潟ソーシャルメディアクラブ代表幹事、新潟日報ソーシャル編集委員、新潟県警サイバー犯罪対策アドバイザー、「情報セキュリティワークショップin越後湯沢」大会運営委員長。青森県出身。

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