2015年07月31日

◆ 新国立競技場レポート 5

 常設のサブトラックの建設は断念となった。ならば、その意味を考えるべきだ。

 ──

 前項では、「常設のサブトラックの建設は無意味だ」と記した。(サブトラックはできても、補助グラウンドがないから。中途半端に整備しても、意味がない。)

 さて。これを受けてのことではないだろうが、政府は「常設のサブトラックの建設は断念する」という方向を示した。
 政府は陸上競技の練習施設として使われるサブトラック(補助競技場)を常設ではなく、これまでの計画と同じく仮設とする方針を固めたことが30日、分かった。整備計画をまとめる9月上旬までに適切な土地を取得することが難しいことや、総工費削減の方向に逆行することなどが理由と見られる
( → 毎日新聞 2015年07月31日
 政府は 30日、総工費がかさんで見直すことになった新国立競技場の建設計画で、選手がウォーミングアップするために必要な常設サブトラックの設置を見送り、仮設とする方針を固めた。
 複数の政府関係者が明らかにした。計画の再検討に合わせ、アスリートらから常設を求める声が上がっていたが、総工費が膨らみかねないとして断念した。
 サブトラックは、主要な国際大会を開く際には必要で、2020年東京五輪・パラリンピックでは、近接する明治神宮外苑の軟式野球場に仮設で作ることが白紙撤回された旧計画に盛り込まれていた。
 政府は再検討の中で、財政的な理由とともに、味の素スタジアム(東京都調布市)や日産スタジアム(横浜市)など常設サブトラックを持つ競技場が首都圏に複数あるため、「新国立競技場に設ける意義は薄い」(政府高官)との方向に傾いた。新たな計画でも、設置場所は軟式野球場とする案が有力だ。
( → 2015年07月31日

 まあ、理由はともかく、この方針は妥当だろう。(政府は資金難を理由にしたが、補助グラウンドがないというのが私の示した理由だ。)

 ※ 軟式野球場は、明治神宮外苑のこと。前項の画像を参照。

 ──

 さて。ここで話は終わらない。
 サブトラックが常設でないとしたら、この新国立競技場はもはや陸上競技場としては意味がない。後世に残す遺産(レガシー)としての意義もない。
 とすれば、新国立競技場は、あくまで仮設のスタジアムにするべきなのだ。そして、高級施設としては、オリンピックの終了後に、サッカー専用スタジアムに改築するべきなのだ。下記で述べたように。
  → 新国立競技場レポート 2

 論理的にはもはや明らかなのだから、この方針を取るべきだろう。
 特に、サッカー協会の会長は、この方針をきちんと取るべきだ。まったく、何やっているんだか。
( ※ サッカー専用球場の必要性を理解できないのかもね。たぶん、サッカーの試合をスタジアムで見る機会がほとんどないのだろう。テレビで見ているだけだから、サッカー専用球場の必要性を理解できないわけ。情けない。……引きこもり会長。)



 [ 余談 ]
 ゼネコンの人が匿名で見解を出している。
  → 新国立競技場「やっぱりザハ・ハディドが必要です」
 
 ゼネコンがザハに「金の取りすぎ」と批判されたのに対して、「資材高騰と、JSC の要求が課題だったのが理由」と弁解している。
 で、その結論が、「やっぱりザハ案を建設せよ」で、結果的には 3000億円(さらに資材高騰で4000億円?)を要求しているわけ。
 呆れる。「金がかかりすぎな点が根本問題だ」ということを理解できていない。
 この記事には最後の方で、こうある。
 全国どこでも同じ形をした倉庫のような、簡単なモジュールの組合せでできるスタジアムなら、コストは安くなりますし、間に合う可能性も高くなります。

 わかっているなら、そうすればいいのだ。優先すべきは、コストだ。
 上の文はこう続ける。
 でも、コンペで選んだザハの案を撤回してまで建てる新国立競技場が、それでいいんですか? というのは議論すべきだと思います。もちろん、コストも大事。でも、世界に何を発信するのか、というのを忘れてはいけないと思います。

 そういう発想で過剰に立派すぎるものを作ろう、というのが森元首相の発想であり、それゆえに超巨額のコストが批判されたのだ。このゼネコンの人は、問題をいまだに理解できていない。

 ついでに言えば、「キールアーチには工期が特にからない」というふうに述べて「簡単だ」と見せかけておきながら、「キールアーチは複雑だから金がかかる。金を寄越せ」というふうに述べる。(はっきりそうとは述べないが、そういう趣旨。)
 ほとんど自己矛盾。ご都合主義。良いとこ取りの、つぎはぎ論理。

 では、正しくは? 本項で述べた通りだ。つまり、こうだ。
  ・ オリンピックスタジアムは、簡素に仮設のものを作る。
  ・ オリンピック後には、サッカー専用球場を建設する。

 これが最善だ。それゆえ、バベルの塔かピラミッドのような無駄な巨大建築など、まったく必要ないのだ。

 ──

 なお、このゼネコンの人が全然ダメだということは、次の事実を理解しないことからもわかる。
 「大分スタジアムは、4万人で 250億円。埼玉スタジアムは、6.4万人で 356億円。いずれも開閉式の屋根だが、安価にできた」( → アーチ式球場が 250億円
 この事実を知れば、新国立競技場が8万人で超巨額になるはずがない、とわかるはずだ。

 特に、次の案が有力だ。
 「埼玉スタジアムとほぼ同規模のサッカー専用球場を作る。7〜8万人規模。オリンピックのときは仮設席を使用して、オリンピックの終了後に開閉式の屋根をつけてもいい」
 「開会式・閉会式は、8万人のサッカースタジアムで行なう。陸上競技は、味の素スタジアムで行なう」


 なお、仮設席を使わず、常設で8万人規模のサッカー専用球場があっても、おかしくない。
 埼玉でさえ、6.4万人の球場がほぼ埋まることが多いのだし、東京ならば、10万人でも席は埋まるかもしれない。
( ※ 野球は週に3日あるが、サッカーは週に1日なので、サッカー球場は野球場の3倍の観客席があってもおかしくない。東京ドームが5万人なら、サッカースタジアムは 15万人でもおかしくない。……これはさすがにちょっと盛りすぎだが。)
 
posted by 管理人 at 21:53 | Comment(0) | 一般(雑学)3 このエントリーをはてなブックマークに追加
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