辺野古移設:沖縄、提訴の可能性 埋め立て着手なら 

毎日新聞 2015年07月31日 23時22分(最終更新 07月31日 23時37分)

今後予想される動き
今後予想される動き

 ◇菅氏・知事が首相官邸で会談

 菅義偉官房長官と沖縄県の翁長雄志知事が31日、首相官邸で約15分間会談し、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設を巡って協議した。翁長氏が前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消す意向を示唆したのに対し、菅氏は会談後の記者会見で辺野古移設は「唯一の解決策」と改めて明言。政府は9月にも埋め立て工事に着手する方針で、県が工事の差し止めを求める訴訟を起こす可能性も出ている。

 政府が24日に県に提出した護岸の一部の設計図(実施設計)について、翁長氏は会談で取り下げを直接要望したが、菅氏は応じなかった。菅氏は会見で「お互いがお互いの立場を確認した」と述べた。8月7日には安倍晋三首相が官邸で翁長氏と沖縄振興予算を議題に会談する予定。政府としては振興予算の確保を提示することなどで県側の軟化を引き出したい考えだ。

 県は政府をけん制する。前知事の埋め立て承認判断を検証した県の第三者委員会が29日に公表した報告書全文では、承認について「移設場所として辺野古が適切かどうか、何ら説明せず、論理の飛躍がある。十分な理由のないまま『埋め立ては適』と判断した」とした。県幹部は「第三者委員会が『(承認には)法的な瑕疵(かし)がある』との結論を出した以上、知事の決断は取り消ししかない。知事の腹は決まっている」と断言する。翁長氏も菅氏との会談で「第三者委の判断を踏まえ、法的な瑕疵があるという立場をベースにしながら議論したい」と述べ、承認取り消しの意向を示唆した。最終判断は8月中旬以降になる見通しだ。

 承認取り消しの場合、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づいて公有水面埋立法を所管する国土交通相に審査請求し、県が出した取り消し処分の一時停止も求めることになる。3月に翁長氏が辺野古沿岸部での作業停止を指示した際に取ったのと同じ対抗手段で、執行停止によって工事を進めることが可能になる。

 このまま政府と県の平行線が続けば、本格的な法廷闘争に突入する事態も予想される。翁長氏は9月下旬にスイス・ジュネーブでの国連人権理事会で演説することも検討しており、側近は「司法という第三者が入る法廷闘争に持って行き、国内外の世論に訴えた方がいい」と「長期戦覚悟」の構えを示す。【佐藤敬一、比嘉洋、当山幸都】

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