特集「日韓国交正常化50年」の記事は、この特集の「アジアと日本」に収録しました。
■大東亜戦争終結に関する詔書(現代語訳)
私は世界の大勢と大日本帝国の現状を深く考え、非常の処置で時局を収拾しようと思い、ここにあなたたち臣民に告げる。
私は大日本帝国政府に、米国、英国、中華民国、ソ連に対し、その共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告させた。
そもそも、大日本帝国臣民がやすらかな生活を送れることをめざし、世界の国々と栄える楽しみを共にすることは、天皇家歴代の祖先が残した手本であり、私がうやうやしく奉じてきたことで、先に米国、英国2国に宣戦した理由もまた、実に帝国の自存と東アジアの安定を望んだことであって、他国の主権を排除して、領土を侵略するようなことは、いうまでもなく私の志したことではない。
しかし、戦争はすでに4年におよび、私の陸海軍将兵の勇戦、私の様々な官吏たちの精励、私の1億の民たちの奉公、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転せず、世界の大勢も我々に不利な状況となった。
それだけではなく、敵は新たに残虐な爆弾を使用して、むやみに罪なき人々を殺傷し、その惨害がどこまで及ぶのか計り知れないものになった。それでもなお戦争を継続すれば、ついにわが民族の滅亡を招くだけではなく、人類の文明をも破壊することになるだろう。このようなことになっては、何をもって万民を守り、歴代祖先の霊に謝罪することができよう。これが私が帝国政府に共同宣言を受諾するよう命じた理由である。
私は帝国政府とともに、一貫して東アジアの解放に協力した同盟国に対し遺憾の意を表せざるをえない。帝国の臣民として戦死し、各職分に殉じ、悲運にも命を落とした者やその遺族に思いをいたせば、全身が張り裂けんばかりである。また、戦傷を負い、災禍を受け、職を失った者の生活を私は深く案じている。
今後、帝国が受ける苦難は並大抵のものではない。あなたたち臣民の降伏を受け入れがたいという心を私はよくわかっている。しかし、私は時の運命を受け入れ、耐えがたいことを耐え、辛抱しがたいことを辛抱し、それにより永遠の世のため平和の道を開こうと思う。
私はここに国体(国家体制)を守ることができ、忠義心厚く善良なあなたたち臣民の真心を信頼し、常にあなたたち臣民とともにある。感情の激するまま新たな事態を引き起こし、あるいは同胞同士でおとしめ合い、たがいに時局を混乱させ、そのため正しい道を誤り、世界の信義を失うことは、私がもっともいましめたいことである。
まさに国中が一丸となって、これを子孫に伝え、神州日本の不滅を固く信じ、責任は重く、それを果たす道は遠いことを思い、総力を将来の建設に傾け、人の行うべき正しき道を誠実に行い、心に定めたことを固く守り通し、国体の真の価値をあらわして、世界の進歩に遅れないよう心してほしい。あなたたち臣民は十分に私の考えを心にとめて行動しなさい。
■原文
朕(ちん)深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑(かんが)ミ非常ノ措置ヲ以(もっ)テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲(ここ)ニ忠良ナル爾(なんじ)臣民ニ告ク
朕ハ帝国政府ヲシテ米英支蘇四国ニ対シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑々(そもそも)帝国臣民ノ康寧(こうねい)ヲ図リ万邦共栄ノ楽ヲ偕(とも)ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々(けんけん)措カサル所曩(さき)ニ米英二国ニ宣戦セル所以(ゆえん)モ亦(また)実ニ帝国ノ自存ト東亜ノ安定トヲ庶幾スルニ出(いで)テ他国ノ主権ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固(もと)ヨリ朕カ志ニアラス然ルニ交戦已(すで)ニ四歳(しさい)ヲ閲(けみ)シ朕カ陸海将兵ノ勇戦朕カ百僚有司ノ励精(れいせい)朕カ一億衆庶ノ奉公各々(おのおの)最善ヲ尽セルニ拘(かかわ)ラス戦局必スシモ好転セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之(しかのみならず)敵ハ新ニ残虐ナル爆弾ヲ使用シテ頻(しきり)ニ無辜ヲ殺傷シ惨害ノ及フ所真(しん)ニ測ルヘカラサルニ至ル而(しか)モ尚交戦ヲ継続セムカ終(つい)ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス延(ひい)テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯(かく)ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子(せきし)ヲ保(ほ)シ皇祖皇宗ノ神霊ニ謝セムヤ是レ朕カ帝国政府ヲシテ共同宣言ニ応セシムルニ至レル所以ナリ
朕ハ帝国ト共ニ終始東亜ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ対シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝国臣民ニシテ戦陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃(たお)レタル者及其ノ遺族ニ想(おもい)ヲ致セハ五内(ごない)為ニ裂ク且(かつ)戦傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙(こうむ)リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念(しんねん)スル所ナリ惟(おも)フニ今後帝国ノ受クヘキ苦難ハ固(もと)ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情(ちゅうじょう)モ朕善ク之ヲ知ル然(しか)レトモ朕ハ時運ノ趨(おもむ)ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス
朕ハ茲ニ国体ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚(しんい)シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若(も)シ夫(そ)レ情ノ激スル所濫(みだり)ニ事端(じたん)ヲ滋(しげ)クシ或ハ同胞排擠(はいさい)互ニ時局ヲ乱(みだ)リ為ニ大道(だいどう)ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム宜(よろ)シク挙国一家子孫相伝ヘ確(かた)ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念(おも)ヒ総力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏(かた)クシ誓(ちかっ)テ国体ノ精華ヲ発揚シ世界ノ進運ニ後(おく)レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克(よ)ク朕カ意ヲ体セヨ
ポツダム宣言