東北電力と東京ガスは30日、大口需要家向けの電力販売で提携すると発表した。共同出資会社を設け、東京電力管内である北関東を中心に企業への電力販売を始める。電力、都市ガスとも小売りの全面自由化で顧客獲得競争が激しくなることから、両社は電力とガスの両方を供給できる利便性を打ち出し顧客を取り込む狙いだ。
新会社の所在地は都内の予定で、両社が折半出資し10月に設立する。2016年4月から電力需要が50キロワット以上の大口顧客に電力を販売する。
当面は東北電の営業エリアと隣接する栃木、群馬、茨城の北関東3県を中心に開拓する。30日に記者会見した東北電の原田宏哉社長は「東北の企業が北関東に工場などを置いている場合も多く我々が営業活動をしやすい地域だ」と述べた。東ガスの北関東の営業網も積極的に活用する。
これまで東北電は東京電力などと競争になる域外への進出を避けてきた。今回決断した背景には東北の電力市場の伸び悩みがある。東北では人口減少が急速に進み、企業進出も乏しい。東北市場だけで再び成長軌道に乗せるのは困難との危機感が背中を押した。
今回の提携は、ガス事業への本格進出の道を開く意味合いもある。仙台市は16年度以降に公営ガス会社を民間企業に売却する方向で検討している。過去には東北電や東ガスなどの企業連合が譲渡先の候補となったが、リーマン・ショックの影響で計画が頓挫した。東北電と東ガスが提携関係を結んだことで、仙台市のガス民営化に向けた有力な受け皿になり得る。
東ガスは東北電が持つ電源を活用して、電力事業の拡大をめざす。ガス小売りは17年に全面自由化され、本業の都市ガス事業は従来通りの安定成長が望めない。収益源の確保に向け、卸売りも含め20年度までに首都圏の電力需要の1割を供給する計画を立てている。
ただ東ガスは原子力や石炭火力のような低コストで24時間稼働する「ベース電源」を持っていない。新会社が主なターゲットにする工場のような長時間、一定規模の電力を使う需要家への電力供給は難しかった。東北電のベース電源を活用し、ガスの顧客を中心に東京電力からの契約切り替えを促していく構えだ。
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