ソウルと東京で29日、旧日本軍の強制動員慰安婦問題をめぐる両国の認識差がはっきりと分かる出来事があった。ソウルではこの日、世界の知識人524人が日本の安倍晋三首相の慰安婦問題に対する認識や歴史歪曲(わいきょく)を批判する共同声明が発表された。ところが同じ日、日本では安倍首相が与党・自民党から慰安婦連行の強制性を否定する提言書を受け取り「確かに受け取った。誤った点は直していかなければならない」と発言したと報道された。
世界の知識人たちの共同声明を主導した李泰鎮(イ・テジン)ソウル大学名誉教授と和田春樹東京大学名誉教授は同日、ソウル・プレス・センターでの記者会見を前に、当社会議室で対談を行った。
知識人の声明には韓国のキム・ヨンホ柳韓大学元総長、金鎮炫(キム・ジンヒョン)世界平和フォーラム理事長、宋熙永(ソン・ヒヨン)朝鮮日報主筆、シン・ヨンハ、李泰鎮の両ソウル大学名誉教授=以上、ハングル順=など382人が参加した。日本でも鹿野政直早稲田大学名誉教授、荒井信一駿河台大学名誉教授ら105人が署名した。
以下は和田氏と李泰鎮氏の対談内容。
和田氏「安倍首相は2012年の就任以前から『従軍慰安婦強制動員の事実を認めた河野談話を見直す』という考えを持っていた。安倍支持勢力が米国の新聞に『慰安婦は公娼』という意見広告を出したことからもそれが分かる。しかし、安倍首相は今年、訪米中に『河野談話を見直す計画はない』と発表、自己矛盾に陥ってしまった。河野談話を否定したいが、首相という立場上、修正できない状況にあるのだ。安倍首相が慰安婦動員の強制性について絶えずあら探しをしようとしているのも、このように矛盾した状況に端を発するものとみるべきだ」
李氏「安倍首相が慰安婦強制動員を否定する精神的基盤を突き詰めていくと、結局は日本が植民地支配をしていた時代に侵略戦争を主導した指導層の姿勢と何も変わらないと憂慮せざるを得ない。『神聖な天皇の国はあのように不道徳なことはしない」というラインをあらかじめ引いてから発言しているではないか。安倍首相はこれから前進しようとしている日本を引き止め、逆行させようとしているように見える」