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国連教育科学文化機関
(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization: UNESCO)
名古屋大学大学院国際開発研究科
北村友人

(1)背景

 本部・パリ。国際連合の専門機関として、教育、自然科学、文化、社会・人文科学、コミュニケーションの諸分野における国際協力の促進を行っている。国際連盟の諮問機関であった国際知的協力委員会(1922年設立)を前身とする。1945年11月にロンドンで開かれた設立会議(37カ国の代表が出席)におけるユネスコ憲章の採択を経て、1946年11月に設立された。二度にわたる大戦により荒廃した世界を憂い、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とユネスコ憲章の前文で謳われている通り、特に人類の知的・道徳的な連帯による世界平和の実現を目指している。2004年1月現在、190の加盟国と6の準加盟国を有する。日本は、1951年7月2日に55番目の加盟国として加盟した。

(2)目的

 ユネスコの目的は、「国際連合憲章が世界の諸人民に対して人種、性、言語又は宗教の差別なく確認している正義、法の支配、人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重を助長するために教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献することである」と、ユネスコ憲章第1条1項において定められている。つまり、国際協力を通して戦争や紛争を防ぐために、人間の尊厳を守り、平等を重んじ、人々の心の中から無知や偏見、差別などを無くすことを、ユネスコは目指している。そのため、倫理的な諸問題に対する普遍的な合意を形成するうえでの、様々なアイデアの実験場(a laboratory of idea)であり、標準の設定者(a standard-setter)であると、ユネスコは自らの役割を中期計画などの中で規定している。また、情報・知識を広め共有するための情報センター(a clearing house)であると同時に、多様な分野における各加盟国の人的・制度的な能力の向上(capacity-building)に寄与する、という役割がある。

(3)組織構成

 ユネスコの組織は、総会(General Conference)・執行委員会(Executive Board)・事務局(Secretariat)より構成されている。総会は全加盟国により構成される意思決定機関であり、原則として2年ごとに開催される。総会において各加盟国は一票の投票権を有し、ユネスコ憲章あるいは総会の手続規則の規程による場合を除き、単純過半数によって2年間の政策方針や事業・予算などを決定する。また、総会が選出した58カ国によって構成される執行委員会は、毎年少なくとも2回開催される。執行委員会では、事務局が総会での決定事項に則り事業を実施しているかを確認すると同時に、次の総会の準備のために新しい事業や予算についての検討を行う。そして、事務局は、執行委員会の指名を受けて総会が任命する事務局長(The Director-General)と、事務局長が任命する事務局職員(2003年4月現在、160以上の国出身の2,145人)によって構成されている。事務局長は事業・予算案の作成に責任を持ち、各担当部局が事業の実施の任に当たる。事務局の職員は専門職(Professional Staff)と一般職(General Service)に分かれており、前者は国際的に募集・採用され、後者は基本的に現地で採用される。
 ユネスコのパリ本部は、事務局長の下に5つのプログラムセクター局(教育局 Education、自然科学局 Natural Science、文化局 Culture、社会・人文科学局 Social and Human Sciences、コミュニケーション・情報局 Communication and Information)、加盟国や他の国際機関などとの連絡を担当する対外関係・協力局(Sector for External Relations and Cooperation)、組織運営のための諸業務(文書管理、翻訳・通訳、情報システム管理、警備など)を行う管理局(Sector for Administration)、そして事務局長の直属である諸部局(広報、予算、人材管理、監査、フィールド調整、アフリカ担当など)から構成されている。また、2004年1月現在、世界各地に52の現地事務所があり、それらは地域事務所・クラスター事務所・国内事務所のいずれかの役割を担っている(ただしニューヨークとジュネーブは、他の国際機関などとの連絡事務所である)。地域事務所とは、(1)アフリカ、(2)アラブ諸国、(3)アジア・太平洋、(4)ラテン・アメリカ及びカリブ諸国、(5)ヨーロッパ及び北米の各地域において、それぞれ各セクターの事業に関する中核的な立場の事務所として設置されている。そして、地域内の数カ国ごとにクラスター分けがされており、それらの国々における事業をクラスター事務所が担当している。さらに、それぞれの地域に数カ国ずつ国内事務所が設けられており、当該国内での事業を主に担当している。この他に、事務局長の直属である統計研究所、教育局の関連機関である7つの教育研究所、科学局の関連機関である理論物理学センター、そして文化局内に世界遺産センター、科学局内には政府間海洋学委員会の事務局が、それぞれ設置されている。
 また、ユネスコは、各加盟国に国内委員会を設置することを定めている。国内委員会は、ユネスコと国内諸団体との連絡調整を行う。日本では、「ユネスコ活動に関する法律」(1952年制定)の定めに則り、文部科学省内に日本ユネスコ国内委員会が設置されている。

(4)事業内容

 ユネスコの事業内容は、総会において、事務局側より提出される事業報告ならびに事業計画を審議したうえで決定される。ユネスコの事業は、6年単位の中期計画(C/4と呼ばれる)と2年単位の事業計画(C/5と呼ばれる)によって計画されている。
 現在の中期計画(2002年度‐2007年度)は、(1)教育・科学・文化・コミュニケーションの諸分野において生じる課題に対応し、「公共善(common public good)」を守り強化するために、共有された価値に基づく普遍的原則と規範を支持し発展させる、(2)人権の遵守と共に多様性を認め、それを保護することにより、多元的共存(pluralism)を促進する、(3)公正なアクセス、能力の開発、知識の共有によって出現しつつある知識社会を認め、その参加を促進する、という3つの基本的な戦略を柱として構築されている。また、「貧困の撲滅」と「教育・科学・文化の発展と知識社会の構築に対する情報・コミュニケーションの貢献」という、各セクターにまたがる領域横断的なテーマ(cross-cutting themes)が設定されている。そして、これらを事業化する際の優先的な対象として、「女性」・「アフリカ諸国」・「途上国」を挙げている。このような基本戦略に基づく各セクターの主要な事業は、以下の通りである。
 ユネスコの中心的なプログラムである教育分野では、基礎教育の国際的な普及を目指す「万人のための教育(Education for All:EFA)」の推進が軸となっている。ユネスコがコーディネーター役を務めるEFAでは2015年までに達成すべき6つの目標を掲げているが、そのうち「初等教育の完全普及」と「教育における男女格差の解消」に関する目標は、「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」でも同時に掲げられている。教育分野での事業を実施している他の国際機関(主に女子教育を推進するユニセフや、初等教育への集中的な支援を行っている世界銀行など)と較べ、就学前から初等・中等・高等の各教育段階、そして成人の識字教育や生涯教育、さらには職業教育、平和教育など、ユネスコはあらゆる教育段階におけるさまざまな分野の事業に取り組んでいる点が特徴的である。これらには保健衛生教育やHIV/エイズ教育なども含まれ、MDGsの諸目標(幼児死亡率の削減、妊産婦の健康の改善、HIV/エイズなどの蔓延防止)を達成するうえで欠かすことのできない重要な分野である。
 また、ユネスコの事業は、ユニセフやUNDPといった他の国連機関と較べてプロジェクト・レベルでの貢献は小規模なものが殆どであるが、貧困削減戦略ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper: PRSP)などの経済社会開発のフレームワークと関連づけて教育セクター戦略・計画を策定することを途上国政府に対して促すといったような政策レベルにおける技術支援・助言や、カリキュラム開発や教材作成などを通したプログラム・レベルでの支援を主に行っていることが、特色として挙げられる。
 ユネスコにおいてEFAと並ぶ主要なプログラムが、自然科学局による「水資源の保護とエコ・システムの確立」と文化局による「世界遺産の保護」である。水資源の保護については「国際水文学計画(International Hydrological Programme: IHP)」に基づき、渇水や洪水への対策をはじめ、水資源を巡る国家間・地域間の紛争対立などの解決も含めた、水管理に関する諸問題に取り組んでいる。この水資源の問題をはじめエネルギー分野やテクノロジー分野における自然科学局の諸事業は、MDGsで掲げられている「環境の持続可能性の確保」の目標と密接に関連している。
 世界遺産には「文化遺産」・「自然遺産」・「複合遺産(文化と自然の両方の要素を兼ね備えているもの)」があり、ユネスコにおいて毎年開かれる世界遺産委員会において選定される。さらに、倫理や人権に関する諸問題に取り組んでいる社会・人文科学局による「社会変動の管理に関するプログラム(Management of Social Transformation Programme: MOST)」や「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言(1997年採択)」に基づく活動や、コミュニケーション・情報局による「サイバースペースにおける多言語性の保持とアクセスの自由の保障」や「デジタル遺産の保護」などが主要な事業として挙げられる。
 上述の諸事業と関連して、現在、ユネスコがコーディネーターあるいは主導的機関として推進している主な国際的活動として、次のようなものがある。「国際平和の文化のための10年」(2000年-2010年)、「国連識字の10年」(2003年-2012年)、「国連持続可能な開発のための教育の10年」(2005年-2014年)、「国際新鮮な水の年」(2003年)、「奴隷制度廃止の年」(2004年)。

(5)資金

 ユネスコの会計年度は2年を基準としており、総会によって事務局は次の2年度分の予算の承認を受ける。加盟国からの拠出金などに基づく2002年度‐2003年度の通常予算(regular budget)は約5億4,400万米ドル(2年分)であり、そのうちプログラムに関する事業経費として約3億米ドルが計上された。また、同期の通常外予算(extra-budgetary funding)として約3億3,400万米ドルが積み上げられており、そのうち約1億6,000万米ドルが加盟国からの任意拠出金、約9,000万米ドルがUNDPをはじめとする国連諸機関からの拠出金、そして残りが寄付金や特別口座(special account)への拠出金などである。このうち、通常予算から約1億3,000万米ドルと通常外予算から約1億7,000万米ドルが、現地事務所へと配分された。現在、ユネスコでは財政改革が進められており、予算に関しても名目値での伸び率0%(Zero nominal growth)が3期連続で実施されてきた。
 ちなみに、日本は最大の拠出金分担国である。最近の日本による通常予算への拠出額は約51億9,800万円(2001年度)、約54億310万円(2002年度)であり、2003年度の分担率も22%が見込まれている。他の主要国の2003年度における暫定的な分担率は、ドイツ(約12.8%)、フランス(約8.5%)、イギリス(約7.3%)、イタリア(約6.7%)となっている。尚、2004年度‐2005年度の通常予算は約6億1,000万米ドルが見込まれており、実質成長となる見通しである。

(6)最近の論点

 1999年に第8代事務局長として選出された松浦晃一郎(元駐仏大使)は、就任以来、「財政規律の確立」と「組織の建て直し」を目指して、ユネスコの機構改革を積極的に推進している。とりわけ、効率的な組織運営を行うため、現地事務所の数を減らすと共に地域事務所とクラスター事務所の役割を強化し、予算配分の増加を含む本部からの権限の移譲(decentralization)を行っている。また、人事による組織の活性化を促しつつも、200もあった部長(Director)級の管理職ポストを本来の予算上の数である110へと大幅に削減した。さらに、これらの改革と並行して、運営管理システムのオンライン化も進んでおり、SISTER(System of Information on Strategies, Tasks and the Evaluation of Results)やFABS(Finance and Budget System)といった新しいシステムが導入されている。
 このような機構改革と共に、他の国際機関との協調や市民社会との連携、さらには民間企業との協力なども、ユネスコは積極的に進めている。そうした改革の成果を認め、1984年に脱退したアメリカが2003年にユネスコへ再加盟した。ちなみに、80年代にアメリカやイギリス(1985年脱退・1997年再加盟)、シンガポール(1985年脱退・未加盟)が相次いで脱退した原因としては、「ユネスコの過度な政治化」や「事務局の非効率性と際限のない財政膨張」などに対する不満と同時に、セネガル出身のムボウ第6代事務局長(当時)が支持した「新世界情報コミュニケーション秩序(New World Information and Communication Order: NWICO)」に対する不信感などが指摘されている。
 このアメリカ再加盟に伴い、現在、ユネスコではアメリカ国籍の職員の増員が計画されており、とりわけ幹部級職員の任命が予想される。そのため、アメリカ国籍の職員の増加やアメリカ政府代表部の総会や執行委員会への参加などにより、ユネスコ加盟国間の政治的なバランスに変化が起き、それが今後のユネスコの政策などに反映することが予想される。また、アメリカからの拠出金を加えることで予算の増額が期待されるが、それと同時にこれまでのアメリカによる国連諸機関への対応(政治的な理由による拠出金の延滞等)を鑑みると、これによりユネスコの財政基盤の安定化がもたらされるかどうかには尚疑問の余地がある。

(7)日本の貢献

 日本は、ユネスコ加盟以来、継続して執行委員国(執行委員会のメンバー国)を務めている他、各種の政府間委員会や理事会のメンバー国として、多岐にわたるユネスコの事業活動に貢献をしている。また、近年は最大の分担金拠出国として、ユネスコの財政を支えている。さらには、「万人のための教育信託基金」や「文化遺産保存日本信託基金」への拠出をはじめ、コミュニケーション分野、海洋学や環境問題に関わる自然科学分野、人的資源開発などの諸事業において資金を拠出すると共に、専門家派遣、研修員受入れ等、さまざまな協力を推進している
 これらの貢献に加え、例えば執行委員会の機構改革を1991年の総会へ提案して採択を実現したり、現在進められている松浦事務局長の改革をサポートしたりと、ユネスコの行財政改革の推進にあたっても、日本は積極的な協力の姿勢を示してきた。ただし、アメリカ再加盟の影響を見極めつつ、今後、日本としてユネスコに対していかなる貢献をしていくかを、改めて検討する時期にあると言えるだろう。
 さらに、民間からの貢献としては、1947年に仙台や京都で始まったユネスコ協力運動が世界中に広まり、現在では100カ国以上において現地のユネスコ協会やユネスコ・クラブが活動を行っている。日本において全国のユネスコ協会間の連絡調整を行っている社団法人日本ユネスコ協会連盟(1948年結成)は、世界遺産の保護や世界寺子屋運動などを推進している。また、民間と政府の協力で設立された財団法人ユネスコ・アジア文化センター(Asia/Pacific Cultural Centre for UNESCO: ACCU)(1971年設立)は、アジア・太平洋地域における文化の保存・活用・振興、図書開発、識字教育などの諸分野で国際協力活動を行っている。

(8)重要文献

・ユネスコの歴史や組織構成などに関する文献

  1. Fernando Valderrama (1995). A History of UNESCO. Paris: UNESCO


  2. Michel Conil Lacoste (1995). The Story of a Grand Design: UNESCO 1946-1993 (People, Events and Achievements). Paris: UNESCO.


  3. 日本ユネスコ協会連盟編 (1999)『ユネスコで世界を読む-21世紀にひきつぐ国連の良心』古今書院.


  4. 野口昇(1996)『ユネスコ50年の歩みと展望-心のなかに平和のいしずえを』シングルカット社.


  5. 最上敏樹(1987)『ユネスコの危機と世界秩序』東研出版.

・ユネスコが定期的に刊行している世界白書
  1. World Education Report. Paris: UNESCO(邦訳:ユネスコ協会連盟監訳『世界教育白書』東京書籍)(2000年版を最後に廃刊).


  2. EFA Global Monitoring Report. Paris: UNESCO(World Education Reportに代わる教育白書).


  3. World Science Report. Paris: UNESCO.


  4. World Culture Report. Paris: UNESCO.


  5. World Social Science Report. Paris: UNESCO.


  6. World Communication and Information Report. Paris: UNESCO.(かつてのWorld Communication ReportWorld Information Reportを合併させた白書).

・ユネスコが事業展開する諸分野の統計資料
  1. ユネスコ統計研究所(UNESCO Institute for Statistics: UIS)のホームページ(http://www.uis.unesco.org)にて入手可能。

(9)関連リンク

  1. 国連教育科学文化機関

    http://www.unesco.org

    教育、自然科学、文化、社会・人文科学、コミュニケーションの各セクターのホームページなどから構成されている。総会や執行委員会などに関する各種資料も入手可能。また、ユネスコの現地事務所や研究所などのホームページへのリンクが張られている。


  2. 国連大学

    http://www.unu.edu

    国連本部とユネスコの共同支援を受ける国連総会傘下の独立機関として、1975年、東京に本部が設立された。世界中の学者・研究者の知識を総合して、人類の平和と発展に寄与することを目的とする。ユネスコ事務局長は国連事務総長らと共に、理事として大学の運営に参加している。


  3. 文部科学省

    http://www.mext.go.jp

    ユネスコの信託基金への拠出などを通して、ユネスコの各種事業を支援している。また、日本ユネスコ国内委員会の事務局として、ユネスコ活動の振興を図っている。


  4. 日本ユネスコ国内委員会

    http://www.mext.go.jp/unesco/

    教育・科学・文化等の各分野を代表する60名の委員で構成されている。日本におけるユネスコ活動の基本方針を策定すると共に、さまざまな活動に関する助言・企画・連絡・調査などを行っている。事務局は、文部科学省国際統括官付に置かれている。


  5. 外務省

    http://www.mofa.go.jp

    ユネスコの信託基金への拠出などを通して、ユネスコの各種事業を支援している。また、国際機関人事センター(www.mofa-irc.go.jp)などを通じて、国際機関への日本人の就職支援や各機関の邦人職員のサポートを行っている。


  6. (社)日本ユネスコ協会連盟

    http://www.unesco.jp

    非政府組織(NGO)として、ユネスコ憲章に基づき「世界寺子屋運動」と「世界遺産活動」の二つの事業を柱に、青少年の育成や国際交流・国際協力などの諸活動を行っている。


  7. (財)ユネスコ・アジア文化センター

    http://www.accu.or.jp

    各国との「共同事業」方式を取りつつ、ユネスコと協力してアジア・太平洋地域における国際協力事業(文化事業・図書開発事業・識字協力事業)を推進している。