佐藤氏 翁長氏に伺いたい。辺野古の埋め立てについて、沖縄の専門家たちは仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事の埋め立て承認に瑕疵(かし)があったとの見解を明らかにした。政治決断をしないといけない。

 翁長氏 私のような自民党にいた者が厳しい話をすると、日米両政府は「生意気だ」となる。かといって低姿勢だと、「やっと分かってくれたか」と上から目線になる。私が発する自分の意見は3、4割に抑えていると捉えて頂きたい。

 その上で、ここまで反対しても埋めるなら、日米安保体制は重要な岐路に立つのではないかと思う。法律的な瑕疵が第三者委員会から言われているので節目節目で色々考えるが、私は辺野古には絶対に基地は造らせない、造れないと思っている。その視点から、第三者委の「法律的な瑕疵」という指摘はしっかりと認識すべきだ。

 佐藤氏 辺野古はあきらめるから嘉手納基地(嘉手納町など)への統合や、下地島空港(宮古島市)に海兵隊機能を移すという計画は今の沖縄の民意では幻想だと思うが、いかがか。

 翁長氏 嘉手納統合や下地島の問題は10年ほど前に盛んに言われたが、辺野古が難しいから嘉手納にしてくれ、下地島にしてくれなんてことは、論理として成り立たない。

 ――米国は辺野古問題をどう見ているのか。

 山口氏 今の米国は、イラクやアフガニスタンの戦争から何とか身をひいて平常に復帰しようとしている。少し平常に戻ったときに、米国は政治的、経済的、安全保障的にアジアを見直さざるを得ない。日本人や日本国が、米国との同盟をどうやって日本のため世界のための道具として使っていくか。そのための責任をどう分け合うのか、もう一度、素になって考える必要がある。

 寺島氏 日本の方向は中国の脅威を日米で連携して封じ込めようというもの。政治的には仮想敵として中国を意識しているが、経済は相互依存を深めている。中国脅威論に走る前に、外交努力で危険をそぎ落とす方がよほど重要だ。中国コンプレックスがあって抑止力論にひかれる、これをどういう知恵で乗り切るか。

 山口氏 「抑止力」という言葉は冷戦後の世界においてはあまり意味がない。抑止力の本質は、お互いに銃を突きつけ合っていつでも撃つという恐ろしさで、けんかをしない。米ソ間では成り立ったが、これからそういう相手がいるか。中国に対する抑止という言葉はしっくりこない。

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 〈沖縄県の第三者委員会〉 前知事が辺野古埋め立てを承認した経緯を検証するため、2014年末に知事に就任した翁長雄志氏が今年1月に設置。弁護士や環境問題の専門家で構成し、計13回の会合を開き、承認に携わった県職員らから当時の審査状況を聞き取った。

 7月16日、承認手続きには「法的瑕疵(かし)がある」とする報告書を翁長氏に提出。県は同月29日、ホームページで報告書の全文と議事録を公開した。今後、翁長氏が承認の取り消しに踏み切る場合、正当性を主張するための最大のよりどころとなる見通しだ。