静かな空が戻る一歩にしなければならない。
第4次厚木基地騒音訴訟の控訴審判決で、東京高裁は一審に続いて自衛隊機の夜間早朝の飛行差し止めを国に命じた。
昨年5月の一審・横浜地裁の飛行差し止め命令は、判例の壁に風穴を開ける画期的な判決だった。それが二審でも認められた意味は大きい。
加えて、東京高裁は将来分を含めた損害賠償を命じた。こちらは初めての判断である。
基地騒音訴訟は40年前の航空自衛隊小松基地(石川県)を皮切りに、全国の6基地で起こされた。それも厚木基地だけで今回の第4次と繰り返される。少しも現状が好転しない証しだ。
基地の公共性を考慮しても、なお周辺住民の騒音被害は我慢の限度を超えている。司法の警鐘を重く受け止めるなら、政府は抜本対策を急ぐべきだ。怠慢は許されない。
厚木基地は神奈川県大和、綾瀬両市にまたがり、米軍と海上自衛隊が共同使用している。
綾瀬市の4月以降の騒音測定では、最も多い地点で100デシベル以上を1カ月間に225回記録した。100デシベルは電車通過時の線路脇に匹敵するレベルだ。
一審同様、高裁は「健康に影響を及ぼしうる重要な利益の侵害」と指摘した。被害を直視すれば当然の判断である。
さらに違法状態の騒音が約40年続いているとして、米軍の移転時期を踏まえた2016年末までの賠償を命じた。
一審を含め、基地騒音訴訟では過去の被害に限り賠償を命じる判決が定着していた。救済期間を拡大した今回の判決は、国に改善を強く促したといえよう。
ただ、「夜間の騒音の大半」とされる米軍機の飛行差し止めは、「国が米国に使用を許可する行政処分がない」と、一審同様に訴えを退けた。
米軍岩国基地(山口県)には17年をめどに、厚木から空母艦載機59機が移駐する予定だ。騒音被害がたらい回しにされるのは目に見えていよう。
司法救済に限界がある以上、終止符を打つのは国の責任である。そこに不安もある。
判決が確定した騒音訴訟の賠償で、米国側が日米地位協定で規定されている分担に応じていないことが昨年分かった。日本の肩代わり額は少なくとも100億円を超える、とされた。
こんな同盟関係で、集団的自衛権の行使は「主体的」に判断すると言われ、信じられるだろうか。
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