ダーウィンが来た!「ゾウより強い!翼で戦うツル」 2015.07.26


金色に輝く謎の物体。
正体は鳥。
うん!ゴージャス。
ホオジロカンムリヅルです。
アフリカのサバンナに暮らすツルの仲間。
この鳥ただ美しいだけではありません。
広げると2メートルもある大きな翼で近づくものを次々と蹴散らしていきます。
とっても強い鳥なんです。
でも驚くのはここから。
大きなシマウマが相手でもまるで魔法のように翼を広げただけで追い払ってしまいます。
地上最大の動物ゾウも撃退!なぜこれほど強いんでしょうか?謎を解く鍵は子育てにありました。
わが子を守り抜くために強さを身につけたんです。
翼を武器に戦い続けるたくましい鳥の物語です。

(テーマ音楽)赤道直下の強い日ざしが照りつけます。
アフリカ東部ケニアのサバンナです。
かげろうに揺れる大地を歩くシマウマ。
目指しているのは水場です。
サバンナには一年中水のかれないこうした水場があちこちにあります。
シマウマもかわいた喉を潤すことができました。
こちらはカバ。
水場の常連客です。
かわいい赤ちゃんもいますね。
動物たちでいつもにぎわうサバンナの水場。
ここが今日の物語の舞台です。
主人公をご紹介しましょう。
ホオジロカンムリヅルです。
サバンナでもひときわ目立つ美しい鳥です。
これはお尻の部分。
黒と白そして茶色のグラデーション。
なかなかシックな色使いです。
白い頬と頭には冠のような羽。
ホオジロカンムリヅルの名前の由来です。
でもこの冠の役割はよくわかっていません。
背の高さは1メートル20センチほど。
私と比べるとこ〜んな感じ。
結構大きいですよね。
舞い上がりました。
つばさを広げると2メートルもあります。
力強い羽ばたきです。
このあとこのつばさが子育てに大活躍するんですよ。
求愛のダンスが始まりました。
この2羽は夫婦。
オスがつばさを広げてメスの周りで踊り絆を確かめます。
なんだかアツアツですね。
夫婦は一生連れ添うと言われています。
絆を確かめ合うと次は巣作りの場所探し。
卵やヒナにとって安全な場所か夫婦でじっくり見極めます。
ホオジロカンムリヅルが巣を作るのは水場。
こちらでは既に巣の場所を決めた夫婦がいました。
1羽が座っています。
ここが気に入ったようです。
水に入り草をくわえて置き始めました。
こうして巣の材料を集めます。
あっ巣に上がりました。
その足元に…卵です。
大きさは8センチほど。
2個ありますね。
ゾウを追い払うというホオジロカンムリヅルの強さはいつ発揮されるのか。
この夫婦を観察することにしました。
水場に近づいてくるものがいます。
セグロジャッカルです。
あっ巣に気づいたようです。
大丈夫でしょうか。
ジャッカルは鳥や卵を狙う怖い敵。
でもしきりに巣のほうをうかがいますがなぜか近づいてきません。
しばらくすると水場から離れていきました。
ジャッカルが巣に近づかなかったのには理由があります。
ほら巣は水の中に草がたくさん生えている島のような場所にありますよね。
ジャッカルなど天敵となる肉食動物の多くは水を嫌がるため巣に近づくことはまずありません。
ホオジロカンムリヅルが水場に作る巣は肉食動物たちを寄せつけない天然のとりでなんです。
メスが飛び立ちました。
オスの近くに着地。
卵を抱くのを交代してくれるようオスを促します。
するとオスが巣の方へと飛んでいきます。
あっという間に交代終了。
ここは赤道直下。
強い日ざしを受けると卵の温度は急激に上がり死んでしまいます。
わずかな間でも放っておくわけにはいかないんです。
夕方卵を守っているのはメス。
オスはというと…。
あっ飛び立ちました。
どんどん飛んでいきます。
どこへ行くんでしょうか。
だんだん高度を下げて…。
ちょっとあとをつけてみましょう。
シマウマやガゼルの近くにオスがいました。
しきりに何かつついています。
シマウマのフンです。
フンに集まる虫を食べていたんですね。
昆虫は貴重なたんぱく源。
草食動物を追いかければ食べられる事を知っているんです。
食事を終えたオスは巣に戻らず木の枝に止まりました。
こうして親鳥の1羽は夜巣から離れた場所で休みます。
翌朝。
巣には一晩中卵を守っていたメスがいます。
オスが戻ってきました。
巣の近くの池に降り立ち…。
水浴びを始めました。
暑くなる前に朝の一風呂といったところでしょうか。
メスがオスを呼びます。
(鳴き声)「あなた早く交代して」なんて言ってるんでしょうか。
「はいはい今行くからね」。
何とも仲のいい夫婦です。
産卵からふ化まではひとつきほどかかります。
夫婦で力を合わせることが何よりも大切なんです。
巣に戻り卵を抱くオス。
今度は一仕事を終えたメスが食事をする番です。
そんな穏やかな夫婦の暮らしが続いていたある日のこと。
ついに戦う鳥の素顔を目撃しました。
夫婦の巣がある場所にエジプトガンがやってきました。
藻を食べにきたんです。
ホオジロカンムリヅルがガンに気づきました。
猛烈な勢いで追い立てます。
巣に近づいてきたのが気に入らなかったようです。
続いてアオサギがやってきました。
アオサギの目的は水場の魚。
ホオジロカンムリヅルはアオサギにも突進。
追い払います。
(鳴き声)繁殖期縄張り意識が強くなっているため巣に近づく鳥は容赦なく追い払うんです。
日が高くなると草食動物たちが水を飲みに集まってきます。
おっと!ガゼルを追い立てています。
つばさを広げて「あっちへ行け!」。
ホオジロカンムリヅルにとって相手の体の大きさは関係ないようです。
水場が突然騒々しくなりました。
何事でしょうか。
ウシの仲間のトピが水の中に入ってきたんです。
卵が踏みつぶされたら大変です。
巣に近づくトピ。
でもオスは動じません。
その様子を見守るメス。
オスは相変わらず動きません。
トピの進む方向から危険はないと判断したんでしょうか。
しばらくするとトピが水場から離れていきました。
無駄な戦いはしないんですね。
1時間後巣を空けてメスに交代を促します。
今度はメスが巣を守る番です。
暑さ厳しい昼下がり。
メスはうとうとし始めました。
何事?シマウマの群れです。
20頭ほどはいるでしょうか。
力比べが始まりました。
気の荒い若いオスたちです。
心配そうな様子のメス。
あっ池の中でも暴れています。
巣のほうに近づいてきました。
成り行きを見守るメス。
ついに立ち上がりました。
1頭がまっすぐ巣に接近。
するとメスがつばさを広げました!もう一度見てみましょう。
つばさを広げた瞬間シマウマは明らかにたじろいだ様子。
これこそホオジロカンムリヅルの「つばさ攻撃」。
見事シマウマを追い払うことができました。
ちょっと待った!あっ来ましたねヒゲじい。
はい。
いやぁ入れ代わり立ち代わりこんなに動物たちがやってくるんじゃいつか卵は踏みつぶされちゃうんじゃないですかね。
危なっかしくて見てられませんぞ。
そう思うかもしれませんよね。
でもまずはこちらをご覧下さい。
はあ?別の水場で起こった出来事です。
ほう。
あどれどれ?ホオジロカンムリヅルの夫婦が卵を温めているところにたくさんのゾウがやってきたんです。
うわ〜!こりゃ大変だ。
地上最大の動物ゾウがまっすぐホオジロカンムリヅルの巣がある水場に向かっていきます。
で見ていて下さい。
あ〜!つばさでゾウを止めましたぞ。
ね!すごいでしょ。
つばさ攻撃の威力は絶大なんです。
こちらでも。
あ〜!ゾウが後ろにほら下がっていきますな。
ね!巨大なゾウだってつばさ攻撃で追い払うことができちゃうんです。
へえ!すご〜い。
でもなんでつばさを広げただけで逃げていくんですかね?いい質問ですね。
その答えはこちら。
なになに?うん?あっ!びっくりした〜。
でしょ?びっくり箱と同じ効果なんです。
目の前でいきなり白く目立つつばさを広げられるとびっくり箱を開けてしまった時のように驚いてしまうようなんです。
へえ!あそうだったんだ。
でびっくり箱の効果を最大限に引き出すためのワザもあるんです。
どんなワザ?それはつばさを広げるタイミング。
ギリギリまで我慢してもうこれ以上は危険だというところで広げるんです。
確かにびっくり箱だって目の前で開けるから驚くんですもんね。
ですよね。
このつばさ攻撃こそこれといった武器のないツルにとって巣を守るための秘策なんです。
なるほど。
ゾウをも撃退するツルのつばさはまさにスーパー「ツール」!なんちゃってね。
第2章ではかわいいヒナが誕生。
ところが夜水場に恐ろしい敵が接近。
親鳥のつばさはヒナを守れるんでしょうか。
大きなつばさを広げて巣を守るホオジロカンムリヅル。
鳥のつばさには飛ぶこと以外にもいろんな使い方があるんですよ。
まずはこちら。
アフリカに暮らすクロコサギです。
つばさを傘のような形に広げています。
実はこうして魚を狙うんです。
つばさで影を作ることで水面の反射を抑え獲物が見やすくなります。
さらに影に隠れようとする魚をおびき寄せる効果もあるといいます。
あっ捕まえました。
お見事!こちらはトサカレンカク。
オーストラリアの水辺で暮らしています。
かわいいヒナが3羽。
ヒナが親鳥のつばさの中に入っていきます。
3羽目もよいしょっと。
なんと親鳥はヒナをつばさに抱えたまま歩きだしました。
トサカレンカクのつばさはいわばベビーカー。
危険がいっぱいの水辺でヒナを安全に移動させるためにつばさが役に立つんです。
お次はオーストラリアの森に暮らすコウロコフウチョウ。
つばさを何に使うかというとこちら求愛のダンスです。
メスが来ましたよ。
するとつばさを交互に動かして猛アピール。
まるで応援団のような動き。
オスはメスがその気になるまで踊り続けます。
恋に狩りに子育てに。
個性的な方法でつばさを活用する鳥たち。
つばさって本当に大切なものなんですね。
観察を始めて3週間が過ぎました。
朝早く。
木の上で夜を過ごしたメスが巣に戻ってきました。
いつものようにオスと交代。
オスは食事の時間です。
優しく卵を抱くメス。
そろそろヒナが産まれるころです。
ところが30分もたたないうちに巣を離れどこかへ飛んでいってしまいました。
一体どうしたんでしょう?巣には卵が残されたまま。
今までこんなことは一度もありませんでした。
1時間後食事を終えたオスが戻ってきました。
巣をのぞき込むオス。
メスの姿が見当たらないことに戸惑っているようです。
それから2時間後。
ようやくメスが戻ってきました。
でもメスはオスと交代しようとしません。
メスのこの不可解な行動には訳がありました。
実はこの時すでに卵の中のヒナは死んでしまっていたんです。
原因は猛烈な日ざし。
この年は多くの巣でヒナがかえることはありませんでした。
研究者によると赤道付近のこの辺りで卵が無事にふ化する確率は40パーセント以下だといいます。
ホオジロカンムリヅルは厳しい自然の中で必死に命をつないでいるのです。
こちらは別の水場です。
草を踏みつけるホオジロカンムリヅル。
一体何をしているんでしょう。
草の中から虫を追い出して捕まえていたんです。
あっヒナです。
虫はヒナに与えるためだったんですね。
ヒナの大きさは20センチほど。
まだ産まれて数日しかたっていません。
育ち盛りのヒナ。
親鳥はかわるがわる虫を運んできます。
ずいぶん大きな獲物ですね。
バッタのようです。
水場にはヒナの食べ物となる虫がたくさんいます。
ホオジロカンムリヅルが水場に巣を作るのはこのためでもあったんです。
まだまだ足元がおぼつかない様子のヒナ。
あらら転んでしまいました。
バランスを崩してすってんころりん。
気をつけてね〜。
観察を始めて8日目。
ヒナは一回り大きくなって足取りもしっかりしてきました。
軽やかに跳ねながら親鳥のあとを追いかけます。
でも油断をしてると…あららまたもや転んでしまいました。
疲れたのか親鳥の体の下でひと休み。
ここにいれば猛烈な日ざしを避けることができます。
この時期ヒナは一日中食べてどんどん大きくなっていきます。
夜。
巣があった水場に親子の姿がありました。
ヒナが小さいうちはこうして毎晩水場で眠るんです。
夜遅くのこと。
突然お母さんが立ち上がってつばさを広げました。
怪しく光る目。
お母さんは警戒しています。
何者でしょう?正体はマングースでした。
全長は1メートルほど。
鳥を襲う恐ろしい相手です。
つばさを広げて威嚇するお母さん。
その隙にヒナはお父さんのところに避難。
お母さんもお父さんに加わり守りを固めます。
さらに近づくマングース。
両親はヒナを間に挟んで警戒を続けます。
しかしマングースはどんどん近づいてきます。
するとお父さんがつばさで抱きかかえるようにヒナを隠しました。
こうすればマングースからはヒナの姿は見えません。
ようやくマングースは諦めたようです。
わが子を守るため大きなつばさにはこんな使い方もあったんですね。
夜が明けました。
家族の1日が始まります。
ヒナは元気です。
およそ1年間親鳥とともに過ごしヒナはサバンナへと旅立っていきます。
そして大きなつばさに誰にも負けない強さを秘め命をつないでいくことでしょう。
朝敵となった長州を征討するため2015/07/26(日) 19:32〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「ゾウより強い!翼で戦うツル」[字]

巨大なアフリカゾウの行く手に立ちはだかる美しいツル。翼を広げた瞬間、ゾウが逃げ出した!まるで魔法のような威力を持つホオジロカンムリヅルの翼攻撃。その秘密に迫る。

詳細情報
番組内容
アフリカ、ケニアのサバンナにすむホオジロカンムリヅル。頭に金色の冠のような羽毛を生やした美しい鳥だ。このツル、ただ美しいだけでなく、とっても強い。子育てのとき、巣に近づくものは相手が何であれ追い払うのだ。武器は2mもある大きな翼。翼を広げた瞬間、シマウマが逃げ出した。さらに、地上最大の動物・アフリカゾウも翼だけで撃退!まるで魔法のような威力を持つ翼攻撃。子育てに密着し、その秘密に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】中山準之助,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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