「アートシーン」です。
まず初めは優雅で繊細で更に驚きに満ちたアール・ヌーヴォーのガラスをまとめて見られるという貴重な展覧会からです。
ガラスの表面から飛び出している生き物のようなもの…。
何だと思いますか?そう魚です。
雨上がりの川の情景を映した花入れ。
緑や茶色などの細かい粒子で川底の砂や藻まで表しています。
一体どうやって作ったのか。
見れば見るほど不思議なアール・ヌーヴォーのガラスです。
卓越した技と美の供宴。
ヨーロッパ屈指のコレクションが日本で初めて公開されています。
集めたのはドイツの大企業の経営者…30年以上かけて200点を超す作品を収集しました。
実業家だったからだと思うんですけれども次第にガラスの素材ですとか技法といったものにも着目するようになりまして結果として質量共に第一級と言われるようなコレクションを築く事になりました。
アール・ヌーヴォーは1900年前後にヨーロッパに広まった装飾芸術の潮流です。
ガラスにも動物や植物をモチーフにした斬新な作品が登場します。
中央の鯉に注目して下さい。
飾北斎の門人二代飾戴斗の浮世絵によく似ています。
アール・ヌーヴォーのガラスは当時ヨーロッパで流行していた日本や中国などの影響を受けながら全く新しい表現を模索するようになります。
この時代ガラスを優れた芸術の域にまで押し上げたのが…ガレはフランス北東部自然豊かな町ナンシーで発想力に富んだ作品を次々と生み出します。
夕日に浮かぶ雑木林のシルエット。
銀の化合物を熱して黒くしました。
この花入れにはガレが特許を取得した「マルケトリ」という技法が使われています。
茎と花の部分を別に作り熱を加えて本体に埋め込むいわゆる象眼の技術。
家具の寄せ木細工から着想を得てガラスに応用しました。
更に表面を削り花びらの柔らかな質感まで作り出しています。
ガレと並びアール・ヌーヴォーのガラスの立て役者となったのがドーム兄弟です。
ドーム兄弟は最高のデザイナーと職人を使い質の高い作品を多くの人々に広めました。
ベルギーリエージュの万国博覧会に出品したといわれる花入れ。
白緑オレンジに赤。
多彩な色で表されたブドウの木。
カタツムリは本物と見まがうほどリアル。
技とデザインが実を結んだアール・ヌーヴォーのガラスの傑作です。
一瞬素材がガラスだと忘れてしまうぐらいほんと絵画的でアール・ヌーヴォーはほんと見ていて楽しい気持ちになりますね。
ブドウの葉やあのカタツムリのリアルさはあれはほんと驚きますね。
実際に是非見てみたいですよね。
はい。
ではその他の展覧会です。
戦後日本のデザイン界をけん引した亀倉雄策の生誕100年を記念する展覧会です。
代表作は東京オリンピックの一連のポスター。
赤い円には日の丸と太陽の2つのイメージが重ねられていました。
スタートダッシュ。
オリンピックのポスターに写真を全面に使用したのは世界でも初めての事でした。
バタフライの選手を正面から捉えた大胆な構図。
亀倉はこうして3枚並べる事を念頭に置きデザインしたといいます。
色とりどりの蝶が燃えながら落ちています。
「広島は訴える」。
デザインにはメッセージを伝える強い力がある。
そんな亀倉の信念が感じられます。
鉄を使った現代アートで知られる多和英子と近代日本の3人の画家の作品を向き合わせるユニークな試みです。
多和は太さ数ミリから数センチの鉄の線を一本ずつ溶接し布を織り上げるように作品を完成させます。
この作品に対して展示されているのが近代の画家藤井達吉の屏風。
水と火が激しくぶつかり合う豪快な作品です。
もともと洋画家だった小杉放菴は水墨画で新境地を切り開きました。
墨だけで表される空間の奥行き。
鉄だけが生み出せる不思議な空間。
近代と現代絵画と立体。
異なる感性のぶつかり合いの中に新鮮な発見があります。
3つの美術館の共同企画展。
暗い廊下を進むと…。
巨大なねぶたの頭です。
テーマは「酒呑童子」。
鬼退治の場面を4人の若手ねぶた師が手がけました。
舞台は山車の上ではなく豪華に飾られた和室。
東京の目黒雅叙園で和のあかりをテーマにした展覧会が開かれています。
目黒雅叙園の創業は昭和初期。
その一角の木造の建物が今も残されています。
7つの部屋が99段の階段でつながれている事から「百段階段」と呼ばれています。
部屋の壁や天井は鏑木清方荒木十畝といった人気の画家たちによって描かれ「昭和の竜宮城」と呼ばれました。
東京都の有形文化財に指定されたこの建物はふだんは非公開。
今回は和のあかりと共に楽しむ事ができます。
美術家中里繪魯洲は暗闇と月をテーマにインスタレーションを作りました。
この部屋を訪れた時小壁に描かれた薄の原に海のような流れを感じ月夜の海原を出現させようと思ったからです。
ところどころに置かれたオブジェは波間を漂う鉄の箱舟です。
自然界の中の神秘的な自然現象の中のやっぱり光と闇みたいなもの…。
常にこの…そういったものが身の回りにあってその中で僕たち人間というか生命生物も存在してるみたいな事をそれをまあ光と闇というところから感じてもらえればいいなと思うんですけども。
昭和の竜宮城と和のあかりのコラボレーション。
上村松園松篁淳之三代の日本画家の創作の秘密に迫る展覧会です。
松園が謡曲の一場面を描いた「花がたみ」。
別れた恋人を追ってきた女の妖艶さ。
「花がたみ」のための素描。
松園は必ずモデルを使い細部までデッサンをしました。
和紙の上に墨と絵の具で描く日本画は修正が難しいため同じ寸法の下絵を作ります。
描いては別の紙を重ねて修正したり松園の試行錯誤が伝わってきます。
珠玉の名画誕生の秘密がかいま見られます。
息子の上村松篁は鮮やかな色彩を取り入れた花鳥画で知られます。
何度も写生を繰り返し自然のありのままの姿を捉えようとしました。
左端にメモがあります。
雨のための準備でしょうか。
外で描く事が好きだった画家の姿が浮かびます。
「アートシーン」でした。
ではまた次回。
2015/07/26(日) 20:45〜21:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン ▽“アール・ヌーヴォーのガラス”展 ほか[字]
「アール・ヌーヴォーのガラス展」(パナソニック 汐留ミュージアム 7月4日〜9月6日)ほか、展覧会情報
詳細情報
番組内容
「アール・ヌーヴォーのガラス展」(パナソニック 汐留ミュージアム 7月4日〜9月6日)ほか、展覧会情報
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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