情熱大陸【佐々木富男/超難手術に挑む脳神経外科医!驚異的な集中力が生む奇跡】 2015.07.26


深夜1時過ぎ
病院の廊下で途方に暮れている男がいた
(佐々木富男)誰かいますか?ちょっと誰かいる?看護師さん
お茶一杯自分で好きに飲めないのは病院のスタッフではないからだ
あ〜疲れた
フリーランスの…
ようやく遅すぎる夕食にありついた
脳の奥深くに出来た腫瘍の摘出は困難を極める
その分野で世界的にも圧倒的な実績を残してきた
手術不可能といわれた患者たちの最後の砦といっていい
今日…
遠く上海から来た女性も佐々木の腕に救われた
(通訳)佐々木先生は神様です本当にありがとうございました
医師が診てもらいたい医師
そんなアンケート調査ではこの14年間連続して名前が挙がっている
はいありがとう
2年前に国立大学の教授を退官
病院長などの管理職に就くことを嫌って67歳の佐々木は現場に立ち続けている
渡り鳥のように病院から病院へ
教えてもらわないと…
日本の脳神経外科はベテラン勤務医が続々と定年を迎え近い将来深刻な医師不足になるという
(スタッフ)今日はゴッドハンドの現場を生で見せてもらって…ゴッドハンドじゃないですよ
この日佐々木を必要とする患者は名古屋にいた
移動中も最もふさわしい執刀の手順を考え続けている
フリーランスの医師にとって行くさきざきの設備などは必ずしも慣れたものばかりではない
おはようございま〜す
(手術スタッフ)おはようございます
まずはスタッフに挨拶
よろしくん?どこ?あっこれですか?うん買ったの買ったの?
新しい器具の有無も前もって確かめておく必要がある
患者の脳には大きな腫瘍が巣くっていた
位置は頭蓋底部と呼ばれる脳の奥
複雑な神経や血管の先に出来た腫瘍は摘出にさまざまな危険が隣り合う
周囲を傷つけることなく腫瘍だけを取り除く技術の正確さで佐々木は群を抜いていた
本人いわく一番重要なのは事前の準備
今回も2週間かけて戦略を練ってきた
手術中は患者にイヤホンを着け聴覚神経が正常に働いていることを確認しながらメスを進める
異変が起きればすぐに把握できる仕組みだ
ドリルで頭蓋骨に穴を開け脳の内部へ
針と…
頭蓋底部の腫瘍を目指し慎重に脳をかき分けていく
うかつに神経を傷つければ麻痺や障害が残りかねない
佐々木の手術は術後の後遺症が少ないことでも定評があった
(手術スタッフ)今ちょうど真ん中…
今脳のどこに触れているかはナビゲーターのようなシステムが教えてくれる
最先端の機器を積極的に使いこなすパイオニア精神にもあふれていた
白くのぞいた神経の束は聴覚と顔面を制御している
傷つけていないかチェック
神経は無事だった
脳の表面をはう静脈
これも巧みに避けて奥へ進む
病巣へのルートはいくつかあった
佐々木は即座に最も安全で確実な道筋を選んだ
腫瘍の摘出には電気メスを使う
組織を焼き切って少しずつ
集中力の勝負
慎重になり過ぎると時間がいくらあっても足りなくなる
だから医師には思い切りも大切だという
最後に物を言うのは踏んできた場数だろうか
はい
(手術スタッフ)はい
全ての腫瘍を摘出して神経に異常がないか確認
一緒ぐらい?はいはいMEPは?MEPも…OK?はい
(手術スタッフ)お疲れさまでした
10時間の手術が終わる
そりゃもう…はぁ〜…
67歳の医師はまた1人患者を救った
違うか冗談撮らないで
その顔がどこかえびす様のようだ
別の日佐々木は福岡県の病院で外来患者の診察
(ノック)・どうぞ
(今井さん)久しぶりですねあっそうですかあっそうですか
男性は佐々木の手術によって認知症を克服していた
手術2か月前の映像が残っている
極端に物忘れがひどくなり読書に集中することもできなくなった
同時に足元がおぼつかなくなったという
それから1か月で歩行障害は更に進行
脳腫瘍が引き金で起こる典型的な認知症だった
周りもみんなそんなふうに言ってたんですよ最高にうれしいですこれは
アルツハイマー型などと違って脳腫瘍に起因する認知症であれば手術で治るケースもあるそうだ
学業優秀だった少年は東大医学部に進む
アメリカ留学時代には終身教授のポストまで提示されるほど腕を見込まれていたという
帰国してからは国立大学で教壇に立ち同時に困難な手術に挑み続けた
リタイア後も現場を選んだのは病院長などの管理職が肌に合わなかったから
いや〜疲れたな本当に何時に寝たと思う?3時ですか?4時4時…先生元気そうねえっ?元気そうだ元気元気はつらつ
どうやら昔かたぎの職人なのだ
おぉ〜!お〜何だ…
そもそも俺は人生に不器用だからと苦笑い
ふるさと・岡山で高校時代のクラス会があった
じゃあ乾杯だ
卒業から半世紀近く年に1度の集まりはできるかぎり顔を出すようにしている
恩師を囲みたあいない昔話で盛り上がった
こういうこと言ったの覚えてるわ某女性の家が夜道暗くなって見に行ったいう話を聞いたことある・いやそんな話があったよ昔はバスケット入って1か月くらいでやめたんだよな
遠慮も気配りも不要
友人たちとの時間は激務の日々を忘れるひとときだ
わらをもすがる思いで佐々木を頼る患者がまた1人
脳のおよそ4分の1に腫瘍を示す緑色が広がっていた
…ちゅう感じで
(スタッフ)くっついちゃってる?私多分…
手術を翌日に控えて佐々木は患者と向き合う
わずかひと月前に腫瘍が見つかったという20代の女性
動かしようのない現実を率直に伝えなければならなかった
ひょっとしたら…何もしない場合ですからこのまま…手術ここだけが病院じゃありませんし
口調はどこまでも淡々としている
それでも決心変わりません?大丈夫?じゃあ私はもう今日はさっさと帰って寝て体力温存して明日出てきますけどもよろしいですか?はいじゃあそういうことであとこれはね…
付き添っていたのは両親と妹だった
そして当日
手術は午前11時に始まった
恐らくかなりの長丁場になる
巨大な腫瘍は切っても切っても容易には取り切れない
(手術スタッフ)注射器2.5用意しなさい
長引けばそれだけ患者にも負担がかかる
今日…
(手術スタッフ)今20%ぐらいです今20%?
(手術スタッフ)はい
時間と闘っているのは医師たちだけではないのだ
(手術スタッフ)このままもらってはい
(手術スタッフ)ちょっとペアン外して
(手術スタッフ)そうですねこいつの先がかなり硬い石灰化ここ?当たってるよねはい
石灰化して骨のように固まってしまった腫瘍を極小のドリルで削り取っていく
この関門を突破しなければ先へは進めない
こっちがナンバーツーはい
手術が始まって6時間が過ぎた頃…
突然運動神経の反応を示す数値が下がり始めた
(手術スタッフ)はいはいちょっと水入れてみようか
ひと度神経の反応が消えると半身不随などの重い後遺症を招いてしまう
佐々木が一瞬黙り込んだ
ミスは犯していないはずだ
首が…先生さぁ下に潜って首がこうなってるのを少し…こうやってくれない?
首を少しだけ傾けてみる
神経が圧迫されているのかもしれない
そうそう…それで止めて波形はきれいなんやろ?
とっさの対応は経験のたまものだろうか
開始から12時間後
(手術スタッフ)…と思います信じ難いでしょ
佐々木の仕事が終わった
だが脳の手術は麻酔が完全に覚めるまで本当に成功したかどうか分からない
眠り続ける娘を見つめて家族はまだ不安げだった
12時間の難手術を終えた翌朝
佐々木富男は真っ先に集中治療室へ
ご家族来られてたおはようございます
(母親)おはようございますお母さんの顔を見ると調子が良さそう?私まだ会ってないんですけど
(母親)いっぱい動いて元気はいいんですけど元気はいい?佐々木先生が…気持ち悪いか?まだ分かる?分かる?うんぱちっと開いた?私が来たらすごいね手術の前に顔面神経が麻痺してたじゃない?目をぎゅっと閉じてみて開けてもっとぎゅっと閉じて目閉じれるね
手術は無事に成功していた
うん
67歳のえびす様はこんな瞬間がうれしくて現場でふんばり続けている
人の体にメスを入れるその怖さ…っていいますかこれはね実際に自分でやってみた時に初めて分かるよね特に脳の奥深い所を生きている人の脳をいじるわけですよ
そういえばまたホテルを聞き損ねてしまった
田中先生悪いけどさぁ俺の泊まるホテルとかどこにホテルがあるのかっていうのを…
さてどこに行けばお茶が飲めるだろう
カンヌに愛される映画作家
彼女の幸せとは…
2015/07/26(日) 23:15〜23:45
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【佐々木富男/超難手術に挑む脳神経外科医!驚異的な集中力が生む奇跡】

脳神経外科医/佐々木富男▽最も難易度が高いといわれる頭蓋底外科手術のパイオニアで世界的権威として知られている、67歳の今も患者と向き合い続けるフリーランスの医師

詳細情報
番組内容
ある日、重篤な脳腫瘍の患者が佐々木の評判を聞いて遠方からやってきた。CT画像にはこれまで経験したことがないような大きな腫瘍が、脳の最深部に広がっていた。彼は手術の危険性と回復の可能性を時間をかけて丁寧に説明しながら、患者やその家族との信頼関係を築いていく。そして迎えた手術。経験を積んだ限られた医師しか手術できないといわれる頭蓋内最深部の手術とは一体どのようなものなのか、手術現場にカメラが密着した。
プロフィール
佐々木富男
脳神経外科医。1948年岡山県生まれ。
東大医学部卒業後、日米複数の大学助教授・教授を経て、一昨年九州大学を退職。在任中は脳神経外科学の教育や研究に努め、成果を多数の論文などで国内外に発信。臨床面では脳深部及び頭蓋底部の疾患に対する安全・確実な手術法や新たな治療法の開発等に精力的に取り組む。現在もその卓越した手術技術と治療成績で高く評価され続けるとともに、世界から難症例の患者が訪れる。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】メディア・メトル
関連公式URL
【ツイッター】@jounetsu
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ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
福祉 – 文字(字幕)

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サンプリングレート : 48kHz

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