地球に生命が誕生してからおよそ40億年。
生命の歴史は海から始まりました。
海が地球を命あふれる奇跡の星に進化させたのです。
海がなければ地球は宇宙に浮かぶありふれた石の塊でした。
植物や動物はもちろん私たち人間も存在しません。
海は多くの謎に包まれています。
生命の母なる海。
海はどのように命を育み地球の営みを支えてきたのでしょうか。
ドイツのべストセラー作家フランク・シェッツィングとともに知られざる海の秘密を探りましょう。
地球の表面の2/3を覆う雄大な海。
未知の世界が広がるもう一つの宇宙です。
私たちが今海について分かっている事は全体のたった1割。
その海の実態を解明しようと今世界の科学者が調査に乗り出しています。
さあ時空を超えた旅に出かけましょう。
果てしなく続く青い海。
海の広さと深さは科学者たちの調査を阻んできました。
しかし今海の調査に果敢に挑んでいる人たちがいます。
アメリカ北東部のメイン湾。
海洋生物学者のルイス・インツェはこの海域に生息する生物を隅々まで調べようとしています。
メイン湾はアメリカマサチューセッツ州からカナダのノバスコシア州にまで及びます。
調査は海底だけでなくあらゆる水深に及びます。
科学者たちは湾内を区分けし海域ごとに調査データをまとめます。
メイン湾に生息する生物の全容を明らかにするのが目的です。
重要なのはデータをいかに分析するかです。
私たちは海を総合的に理解したいと考えています。
インツェは人間が海と調和して生きるためには海の姿を正確に知る事が大切だと考えています。
調査には最新の撮影装置が用いられます。
海底を滑るように移動しながら撮影するカメラです。
かつてはトロール網で海底をさらい網に掛かった標本を調べていましたが海底を傷つける上作業効率もよくありませんでした。
撮影装置なら環境に優しく鮮明なハイビジョン画像での調査が可能です。
魚類貝類甲殻類など全ての生物が自動的に記録されます。
メイン湾で行われる海洋調査の中で最も大規模な試みです。
しかしメイン湾での調査は世界で行われている海洋研究のほんの一部にすぎません。
世界の科学者たちはこれまでにない大きな目標に向けて動きだしています。
海には想像を超える生物がまだ隠れているかもしれません。
人間を脅かすどう猛な生物か?それとも乱獲におびえる魚か?深海に潜む謎を解き明かそうと世界中の科学者が手を組みました。
うまくいけばアメーバから伝説の怪物クラーケンまで全ての生物に名前が与えられる事でしょう。
海に生息する生物の種類と分布を解明する国際プロジェクト「センサス・オブ・マリンライフ」。
北極から南極アフリカ沿岸からフィジー諸島そして氷河が浮かぶ海面から闇に包まれた深海まで最先端の技術を駆使して海の生物のデータを集積しようという壮大な計画です。
プロジェクトは2000年に発足し80カ国2,000人以上の科学者が参加しました。
当初は2010年までに終了する予定でしたが調査が終わったのは一部の海域だけでした。
それでも10年間の調査で発見された新種の海洋生物の数は予想をはるかに超えていました。
この調査結果が陸上生物の進化の解明につながるのではないかと期待されています。
科学者たちの興味は新種の発見にとどまりません。
海がこれからどう変わっていくのかも知りたいのです。
しかしそのためには過去を知らなければなりません。
時は40数億年前地球誕生の前夜です。
誕生したばかりの地球です。
まだ「青い惑星」にはほど遠い状態です。
すい星や小惑星など無数の天体が地球を目がけて飛んでいき衝突と合体を繰り返します。
一部の天体は新たな物質を運んできました。
氷です。
摂氏1,200度を超える地球で氷は溶けて水蒸気となり分厚い大気が形成されました。
やがて地球の温度は徐々に下がりついに雨が降り出します。
二酸化炭素を多く含んだ酸性雨が岩石に含まれるナトリウムと反応して塩となりました。
この時海はまだ青くありません。
鉄分が多く溶け込んでいるからです。
その後酸素によって鉄はさび付き海底に沈みました。
海はようやく澄み渡り「青い惑星地球」が誕生したのです。
その後海はどのように変化していったのでしょうか。
ドイツの観測船メテオ号が謎の解明に挑もうとしています。
鍵を握るのは深海まで到達できる「遠隔操作型無人探査機」です。
科学者たちは深海の生物を調査する事で海全体を理解できると考えています。
重さ3.5トン4億円以上する鉄のかたまりが調査のため海に沈められました。
私たちが生物の分布や海底の地形を正確に把握している海域は海全体の1%もありません。
大まかに把握している海域もせいぜい10%程度でしょう。
つまりほとんど知らないんです。
潜水を始めてから3時間。
探査機がこれまで到達した事のなかった深海の世界を照らし出します。
暗闇の中には貴重な天然資源が眠っています。
海底から高温の熱水が噴き出しています。
黒い熱水を噴き上げる噴出孔は「ブラックスモーカー」と呼ばれています。
発見されてからおよそ30年。
その実態はまだ解明されていません。
海上のメテオ号ではブラックスモーカーの専門家で海洋地質学者のコリン・デビーが探査機から送られてくるデータに見入っていました。
ブラックスモーカーから吐き出される熱水には有毒な硫化水素の他鉄銅亜鉛などの金属が多く含まれています。
極度の高温そして有害物質。
生物とは無縁の極限の環境です。
しかし意外な事にブラックスモーカーの周辺には命があふれています。
海の始まりはこのような姿だったと考えられています。
ブラックスモーカーは地球形成のメカニズムを解明する重要な鍵かもしれません。
観測船メテオ号からの遠隔操作で探査機が作動します。
熱水の温度を調べるために熱センサーが煙の中に差し込まれます。
熱センサーが示すブラックスモーカーの温度は過去の計測値をはるかに上回るものでした。
400度を超えたぞ。
ほら405。
6。
7。
新記録だ。
これまでで一番熱い場所だ。
熱水とともに噴き出された金属は舞い上がったあと海底に沈み奇妙な形を残します。
科学者たちはブラックスモーカーの地質構造とそこに生きる生物の実態を明らかにしようとしています。
探査機のアームがブラックスモーカーの一部をつかみとります。
最先端の技術が可能にした深海の標本採集です。
(コリン)おっとおっと。
やった。
数時間後探査機が浮上するのを科学者たちが待ち受けます。
ブラックスモーカーの謎を解き明かす手がかりが今目の前に現れようとしているのです。
しかし深海の岩石は外気に触れると急激に変化してしまいます。
ありのままの姿を見られるのはほんの一瞬です。
深海に生息するバクテリアは重金属や有害物質と共生しています。
この岩石を調べればその理由が明らかになるでしょう。
ブラックスモーカーから噴き出た化学物質は深海に生息する生物の命の源です。
海底には更に地球誕生の歴史をひもとく糸口が隠されています。
深海なんておよそ魅力的な場所とは言えません。
熱水が湧き出し硫黄がきつく生物は奇妙なものばかり。
ところがどうでしょう。
全ての原点がこの真下にあるとしたら。
熱水噴出孔は生物の進化に決定的な役割を果たしたと考えられています。
その存在がなければあなたも私もここにはいないのです。
熱水噴出孔の中には温度の低いものもあります。
およそ40億年前最初の命はこの中で誕生したのかもしれません。
なんとすばらしい時代でしょう。
天気さえ良ければね。
35億年前の地球は大嵐に見舞われていました。
地表で熱せられた水は瞬く間に蒸発し再び雨に変わりました。
この水の循環によって分子どうしが出会い生命誕生につながったと言われています。
しかし広大な海で分子はどのようにして互いを見つける事ができたのでしょうか。
その鍵を握るのが熱水噴出孔です。
噴出孔は熱水とともに生命の誕生に欠かせないメタンガスや水素を噴き出していました。
重要なのは噴出孔の内側の壁が無数の穴で覆われていた事です。
ここで分子どうしが出会い化学反応を起こしアミノ酸や糖アルカリなどさまざまな物質が誕生したのです。
やがていくつかの分子が結合し「リボ核酸
(RNA)」が誕生しました。
リボ核酸は自らをコントロールし単独で増殖します。
しかし命の進化はここであえなく終わります。
繰り返し発生する地震で噴出孔が崩壊し全てが振り出しに戻るからです。
何十億年の間こうした現象が何度も繰り返され多くの命が生まれかけては消えていったと考えられています。
しかしとうとう奇跡の瞬間が訪れます。
ひと固まりの分子が脂肪の防御層である生体膜に包まれ生きた細胞が生まれたのです。
細胞は海に移動し増殖を始めました。
命の連鎖の幕開けです。
真実は一つではないのかもしれません。
生命の誕生にまつわる仮説は科学者の数だけ存在するのですから。
生命が海で誕生したという点について異論を唱える人はいません。
しかしその後の進化について意見はバラバラです。
それもそのはずです。
たった一つの細胞があらゆる生物に進化していったのですから。
カゲロウからクジラまで。
そしてついには人類までね。
例えばこのロブスターはなぜこのような変わった形をしているのでしょう。
このハサミは生物の種類が爆発的に増えた時代にできました。
当時はどの生物も強力な牙や爪ハサミや甲羅を備えていたのです。
5億4,000万年前は多くの種がひしめく弱肉強食の時代でした。
今から5億4,000万年前カンブリア紀の初め。
海の生物たちは食うか食われるかの厳しい競争にさらされていました。
この時期出現したのが新種の生物三葉虫です。
最大の特徴は硬い甲羅で他の体が柔らかい生物の中では圧倒的に強い存在でした。
しかし三葉虫にも太刀打ちできない敵がいました。
その生物の化石はカナダのロッキー山脈で発見されました。
かつては海の底だった場所です。
チャールズ・ウォルコットはスミソニアン協会などで責任者を務めた古生物学者でした。
1909年8月。
ウォルコットは化石を求めて数日前から妻ヘレナとともにこの地を訪れていました。
山では既に雪が降っていました。
天気は悪くなる一方です。
これ以上山にとどまるのは危険です。
2人は家へと急ぎました。
チャールズ。
チャールズ待って。
どうした?馬が進んでくれないの。
民家のあるところまであと12キロ。
日が暮れないうちに着かなければなりませんでした。
行くぞ。
もうひと頑張りだ。
その時古生物学者としての直感がウォルコットをとどまらせました。
それはウォルコットの生涯で最も大きな発見でした。
何だこれは?信じられない。
ウォルコットが発見した化石は現在アメリカワシントンのスミソニアン協会に保管されています。
化石はウォルコットも見た事のない奇妙な姿をしていました。
複数のエビが合体したようなものやクラゲのような形をしたものです。
その謎は50年後に解明されました。
クラゲに見えたものは獲物をかみ砕くための歯でした。
エビが合体したようなものはハサミです。
奇妙な姿をした化石は海の支配者アノマロカリスでした。
カンブリア紀のほとんどの生物は数センチにも満たない大きさでしたがアノマロカリスははるかに巨大でした。
三葉虫を一瞬で飲み込む恐ろしい捕食者でした。
機敏に動き強じんな顎で獲物を粉々に砕きます。
しかしこの海の猛獣はやがて地球から姿を消しました。
観測船メテオ号もまた海洋生物の謎に挑んでいます。
今回の調査の目的は深海で新種の生物を発見する事です。
科学者たちは熱水噴出孔の近くで既に300種類以上の新種を発見しています。
この調査はバイオテクノロジーの業界からも注目されています。
有毒ガスや重金属を摂取しながら生きる生物の存在は新たな技術開発の可能性を秘めているからです。
海底には熱水が噴き出す場所があります。
生物は好んでそこに集まります。
まるで海底のオアシスです。
生命があふれるアマゾンの熱帯雨林と似ています。
非常に繁殖しやすい場所なんです。
熱水が噴き出す場所ではバクテリアが有毒物質を食べ生物はそのバクテリアを食べて生きています。
生物は日光に頼らず共生しているのです。
調査の結果次々と新たな種が発見されています。
しかしこれらは無人探査機のライトが照らした先にたまたま居合わせた生物です。
海の全容をつかむまでにはまだ多くの時間がかかります。
奇想天外な深海の生物たち。
まるで高度なデザインが施されたかのようです。
18世紀に啓もう思想が広がり真実が語られるようになるまで人間は海を恐れていました。
ウミヘビや人食いクジラなど海は魔物が住む暗黒の世界と思われていたのです。
19世紀に入ると科学者たちはこぞって海に乗り出し予想に反する美しい世界と出会ったのです。
1898年7月ドイツ皇帝は初の深海調査船バルディビア号を出航させました。
探検隊を率いたのは動物学者カール・クーンです。
バルディビア号はアフリカ西岸を通って南アフリカに行き南極を目指しました。
(カメラのシャッター音)船には13人の科学者と30人の乗員そして65トンの食糧が積み込まれました。
顕微鏡を並べた甲板はまるで研究室のようでした。
船は一か所に停泊する必要がありましたが当時はまだ深海用のいかりがなく大変な作業でした。
水深計は5,000メートルを示しました。
生物を捕獲するための網をゆっくりと下ろします。
危険を伴う難しい作業です。
数トンもの重みが鉄のケーブルにかかります。
引き上げられた網を見て科学者たちは驚きました。
当時水深500メートルより深い海域では生物は存在しないと考えられていたからです。
最初の調査結果で常識は打ち破られました。
捕獲した生物はその場で分析されました。
どれも初めて目にするものばかりです。
貝類や甲殻類イカ。
中には分類できないものもありました。
一つ一つ入念に記録しました。
見慣れない深海の生物のイラストを満載したカール・クーンの航海録はたちまちベストセラーになりました。
中でも目を引いたのがコウモリダコでした。
光を放ち敵を惑わせる不思議な生物です。
バルディビア号が持ち帰った標本は現在ベルリンの自然史博物館に一つ一つ瓶に収められた状態で保管されています。
地質学者植物学者動物学者による標本の分析は今も続けられています。
100年前の標本から思いがけない発見がもたらされる事もあります。
最新の観察や実験は多くの事を教えてくれます。
しかし過去のデータや100年前に採取された標本を見直す事で更に多くの事を解明できるかもしれません。
これらを分析する事で世界がどのように変化してきたかが分かるんです。
歴史家ポール・ホームズの研究グループはヨーロッパ中の図書館や公文書館を訪れ過去の通関記録や漁獲高を示す帳簿給食の献立表から買い物リストまでを調べています。
人々の食習慣や魚の価格から川や海の生態の変化を探るためです。
(カメラのシャッター音)イギリスのケンブリッジ大学にうってつけのデータが保管されています。
大学の学生食堂の記録です。
購入された食材や学生に出されたメニューなど日々の記録が何世紀にもわたって残されています。
こうした情報は生物学や考古学の観点からも分析されます。
考古学者のジェームス・バレットは古代のゴミ捨て場で採掘された魚の骨を調べています。
その結果当時食べられていた魚が現在のものよりも大きかった事を突き止めました。
更に1,000年前のイギリスでは淡水魚の消費が減る一方で海の魚を使った献立が大幅に増えている事に気付きました。
経済成長が環境に影響を及ぼすのはいつの時代も同じです。
この事例の場合理由は明快です。
川や湖の淡水魚だけでは食料の需要を満たす事ができなかったんです。
特に都市部の人口増加は淡水魚の個体数に深刻な影響をもたらしました。
例えばヨーク市ではかつて川で体長80センチのカワカマスが釣れましたが1975年以降は姿を消しました。
乱獲が原因です。
それ以降人々は魚を川ではなく海に求めるようになりました。
古い文献や調査結果から科学者たちは北海のかつての生態系を解明しようとしています。
現在濁った海へと変化した場所はかつてサンゴ礁と海草の楽園でした。
どこまでも透明な海。
多様な生物が生息していました。
ニシンの大群に向かうイルカ。
海にはニシンを乱獲する生物などいませんでした。
ところが人間はこれを「海の銀」と呼び捕獲に乗り出しました。
こうして多くの種が絶滅の危機に追い込まれていきました。
最も打撃を受けたのはマグロです。
つい最近まで北海はマグロの大群であふれていました。
マグロが最初に競りにかけられたのは1930年代の事です。
実入りの良い商売は人々をとりこにしマグロ漁は一気に過熱しました。
しかし1960年代後半マグロは北海から姿を消してしまいました。
他の生物にも悲劇が待ち受けていました。
海底を根こそぎさらう巨大な地引き網です。
地引き網は海の生態系に壊滅的な影響を及ぼしました。
オランダからデンマーク西部まで広がる世界最大規模の干潟ワッデン海。
ここは生物にとっての楽園。
渡り鳥にとっては大切な中継地点です。
干潟に住む生物の生態は潮の満ち引きと密接につながっています。
干潮と満潮の差は最大4メートル。
月の引力の影響です。
私たちが月から受ける恩恵はそれだけではありません。
月のない生活を想像してみて下さい。
月の引力がなければ地球の自転のスピードは今の3倍です。
巨大なハリケーンや30メートル級の波が海を駆け抜けます。
月のない地球にはとがった山頂もありません。
猛烈な嵐によって削り取られてしまうからです。
生き残れるのは地上をはうように生える硬い低木だけです。
1年は1,000日1日は8時間です。
絶え間ない暴風にさらされ大気は薄く有毒です。
この厳しい環境を生き抜くため海を離れた生物は平らで滑らかな体になり大地をつかむための爪か吸盤が発達したでしょう。
(ロケットの発射音)1969年に月面への着陸が成功した事で月の研究は大きく進みました。
宇宙飛行士ニール・アームストロングは人類で初めて月に降り立ち月の石を持ち帰りました。
月の石を分析した結果新たな事実が判明しました。
月の表面にあるクレーターは火山活動によるものではなく隕石との衝突によってできたものだと分かったのです。
石は42億年前のものとされ地球の石との共通点も発見されました。
40数億年前地球は隕石や小惑星との衝突を繰り返していました。
やがてそれまでで最も激しい衝突が起きます。
火星なみの大きさの天体ティアが地球を直撃したのです。
ティアは地球をえぐり宇宙空間に破片をまき散らしました。
破片の一部は地球に飲み込まれ残りは地球の引力に捕らえられ周回するようになりました。
これらの破片が引き寄せられ月が形成されたのです。
月の石の分析は今も続いています。
分析技術が向上すれば更なる発見がもたらされるかもしれません。
隕石の衝突は地球上に生命が誕生する頃まで繰り返し続きました。
その間月には無数のクレーターが残されました。
一方地球では隕石との衝突が起きるたびに生まれかけた命が滅んでいきました。
やがて宇宙は安定し地球はようやく生命誕生の瞬間を迎えます。
地球とともに歩み進化してきた月。
私たちは月から多くの恩恵を受けてきたのです。
月について私たちは多くの事を知っていますがまだ解明できていない事もあります。
地球にも多くの謎があります。
宇宙から撮影された地球の写真はこの惑星が完璧な球体である事を証明しています。
ところが今その常識を覆す新事実が発見されました。
海は波さえなければ鏡のように平らで山や谷があるのは大陸だけ。
かつて人類はそう考えていました。
しかし地球観測衛星が新たな情報をもたらしました。
アメリカ海軍は長年巡航ミサイルの発射装置や標的の座標を固定する事ができませんでした。
この問題を解決するために地球観測衛星ジオサットが開発されました。
ところがジオサットによって予期せぬ事実が明らかになりました。
実際の地球はくぼんだ卵のような形をしていたのです。
この映像はそのくぼみを強調したものです。
重力の影響で海底山脈の部分では海が盛り上がり深い谷の部分では海が沈んでいました。
地球観測衛星ジオサットは海底の大まかな地形を明らかにしました。
更に驚くべき事が発見されました。
地中海の水位が上昇しているのです。
しかし別の調査では全く違う結果が得られました。
南フランスの沖合では複数の水中グライダーを使った調査が進められています。
水中グライダーは海中を自由に移動する小さな気象観測機のようなものです。
海流の変化やプランクトンや魚への影響を継続的に記録します。
水中に入るとグライダーは自動的に動きだし水中の塩分や酸素濃度などを測定し衛星を通じて研究基地に送ります。
最初の測定値は地中海の予想外の変化を示していました。
地中海では今変化が起きています。
水温が上昇し塩分濃度が上がっています。
つまり海水が蒸発しているんです。
地中海が干上がるなどありえるのでしょうか?実は初めての事ではありません。
500万年前地中海は塩の砂漠でした。
地震によって大西洋から分断され干上がってしまったのです。
数百万年後大西洋の水圧によって2つの海を分断していた山は決壊しました。
盆地だった地中海に毎秒20億トンの海水がなだれ込みました。
地中海が満ちるのに数か月しかかからなかった事が最近の調査で分かっています。
水中グライダーのデータは地中海が再び砂漠化に向かっている事を示しています。
観測衛星が示した地中海の水位の上昇は地球温暖化の影響だと考えられます。
もし大西洋から分断されれば地中海はたちまち干上がってしまうでしょう。
心配は無用です。
「たちまち」と言っても地質学上の時間何百万年も先の事です。
私たちは未知への旅を続けます。
ではまたお会いしましょう。
2015/07/27(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「海のタイムトラベル〜生命の誕生〜」[字][再]
地球の生物は海から誕生した。海はどのように命を育んだのか?海が秘める謎に迫る。
詳細情報
番組内容
海が命を育んだことで、地球は今の姿につながった。40億年前、原始地球が多くの天体と衝突、合体を繰り返したことが、海の誕生のきっかけを作ったと考えられている。海の誕生から生命が生まれるまでにはさらに長い年月がかかった。海底の熱水噴出口付近に生まれた細胞から生物の歴史が始まる。カンブリア紀の不思議な生物など、地球の壮大な歴史をたどる。(2010年国際共同制作)
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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