(角田六郎)悪いねえ手伝わせちゃって。
中垣内組の事件で忙しくてさぁ。
経費の申請無視してたら二度と経費は使わせませんって脅すんだぜ。
ったくもう経理の方が組なんかよりよっぽど怖えよ。
(杉下右京)いつも課長にはお世話になっていますから。
(大木長十郎)課長行ってきます。
おお頼んだ。
(甲斐享)俺はいつもお世話になってませんけどまあどうせ暇でしたから。
組対部は忙しそうでいいですね。
俺も刑事課にいたら今頃…。
ん?なんだお前刑事課にこだわってるのか?今時珍しい奴だね。
何が珍しいんですか?いや最近の若い奴にはさ交番勤務とか内勤なんかがな休みがちゃんとしてるって人気でさ。
刑事みたいな不規則な仕事誰もやりたがらないんだと。
まあ子供の時に見てた刑事ドラマの影響っすかね。
フッ!それまたありがちな理由だね。
本当かよ。
(携帯電話)あれ?堀江係長…。
ちょっと失礼。
はいもしもし甲斐です。
(堀江邦之)隣の所轄から一報入ってな。
6年前のストーカー事件覚えてるだろ。
ええもちろん。
高田深雪さんの事件ですよね。
(奥山誠)大丈夫だから…。
(深雪)熱い…熱い…!殺されたぞ。
殺された?誰が殺されたんですか?
(米沢守)亡くなったのは奥山深雪さん。
(米沢)死亡推定時刻は本日19日の午後6時です。
直接の死因は頸部を切った事による出血性のショック死です。
そのあとも犯人は全身を4か所にわたり刺し続けています。
(三浦信輔)えげつないなぁ…。
犯人像について口出しすべきではありませんが一般的に言って…。
(伊丹憲一)被害者に強い恨みを持つ者の犯行。
(米沢)家族のものではないと思われる指紋がいくつか見つかってますが犯行後に拭き取ろうとしたらしくていずれも断片です。
繋ぎ合わせるのに時間がかかりそうです。
身内は?ご主人と現在入院中のお子さんが1人。
ご主人は大阪への出張から帰ってきたらこのありさまだったようで随分ショックを受けているようです。
旦那が第一発見者か…。
(奥山)あの…病院に行かないといけないんですが。
息子が心配するので。
わかりました。
(伊丹)あのちょっといいですか。
警視庁捜査一課です。
2〜3伺っておきたい事が。
なんでしょうか?今日出張だったそうですが午後6時大阪のどちらにいらっしゃいました?あの…どういう意味ですか?形式的な質問ですからあまり気になさらずに。
大阪で会社のセミナーに出席していました。
ほう…。
そこの連絡先は?会社で聞いてもらえばわかると思います。
なるほど。
なるほど。
ここから侵入したようですねぇ。
警部殿!いやいや…私じゃありませんよ。
どうも。
(伊丹の咳払い)どこで嗅ぎつけてきたんですか?今日は僕はカイトくんのお供で来ました。
お供?お久しぶりです…奥山さん。
甲斐さん…?知り合いか?ええ。
交番時代にちょっと…。
甲斐さん…。
深雪が…深雪が…!
(泣き声)奥山さん…。
どうもありがとうございました。
はい。
(田中良典)夕方から落とし物が1件だけか。
あ〜あ刑事になって事件の捜査でもしてえな。
それだけ平和だって事だしいいんじゃないですか。
まあな。
(無線)「警視庁から各局」「目黒区中根5丁目6にて女性が襲われた模様」5丁目6?
(無線)「付近のPMは現場に急行してください」あっ俺わかるんで先行きます。
あっ!あとで行くから!うわっ!あっ…すみません!
(奥山)あっ!お巡りさんお巡りさん!こっちです!早く!どうしました?なんか前付き合ってた男に何かかけられて…!深雪が…!救急車は?救急車呼びましたって!大丈夫ですか?うっ…ううっ…!ちょっと…。
深雪!あ…熱い…。
深雪大丈夫か!?救急車もうすぐ来るぞ!
(奥山)な?頑張れ…頑張れ…。
大丈夫だから…。
奥山さん。
甲斐さん…。
深雪が…深雪が…。
しっかりしてください。
奥山さん!よろしいですか?
(小松真琴)あっ。
(大木・小松)おはようございます。
おはようございます。
あ…おはようございます。
昨夜の事件ですね?ええ。
奥山さんと出会ったの6年前のストーカー事件なんです。
(享の声)深雪さん元彼につきまとわれていて奥山さんと付き合って少ししてからその元彼に硫酸かけられたんです。
逮捕したのは俺です。
久保亮二逮捕当時25歳元プログラマー。
殺人未遂で懲役5年の判決を受けていますねぇ。
けど3年半で仮出所して今じゃ観察期間も終わってます。
保護観察所に問い合わせてみましたが斡旋された仕事もとっくに辞めていて足取りはつかめませんでした。
この男が深雪さんを殺したのではないかと。
はい…。
この事件のあと奥山さんは引っ越しをしているんですねぇ。
ん?仮にこの久保が犯人だとしてどうやって深雪さんの居場所をつかんだのでしょうね。
どっかで調べたんじゃないですか?居場所だけではありません。
なぜあの日あの時間を狙ったのでしょうねぇ。
平日午後6時といえば家族がうちにいてもおかしくない時間です。
現に奥山さんは普段ならば帰宅しているとおっしゃっていました。
まるで奥山さんの出張を知っていたかのようですねぇ。
じゃあ犯行前に奥山さんの事を調べてたって事すか?その辺りちょっと探ってみましょうか。
はい。
ところで君はなぜ現場で久保の話をしなかったのですか?そりゃ…まだ久保が犯人だって決まったわけじゃないし。
それだけですか?奥山さんがいたからです。
下手な事を言えば自分で久保の事を捜そうとするんじゃないかと思って…。
じゃあ奥山さん。
また深雪さんが回復されたら改めてお話を伺わせてください。
(中條江美)何かありましたら私が外にいますので。
(沢田泰三)では犯人逮捕に全力を尽くします。
じゃあ頼むぞ。
深雪…前の男によく暴力を振るわれていたんです。
ひと月前にも呼び出されてケガして帰ってきて…。
いいから連絡を絶てって僕が言いました。
相手にしたらつけ上がるだけだからって。
それがこんな事に…。
深雪のためみたいな事言いましたけど本当は前の男に会われるのが嫌だったんです。
僕のせいで深雪が…。
自分を責める必要はありませんよ。
理由はどうあれこんな事していいはずがない。
久保の行方はまだつかめてないそうですね。
深雪大丈夫なんですか!?心配しないでください。
僕ら警察が全力を挙げて捜し出します。
お願いします!今度深雪の前に現れたら…僕自身何をするかわかりませんから…。
失礼します。
すみません。
(沢田)なんだ?お前。
地域課の甲斐享です。
刑事課になんの用だ?久保の捜索どうなってますか?八雲で殺しがあったの知ってんだろ。
今そっちで手一杯なんだよ。
要するに進んでないという事ですか。
口の利き方に気をつけろ。
こっちは予定どおりきっちり休めるお巡りと違って何日もろくに寝てねえんだ!おい。
犯人許せねえって気持ちは買うが縄張りを荒らすのはよくないぞ。
部署のメンツってのがあるんだから。
あの事件最初に現着したのは俺だって知ってますよね。
だからってお前のヤマって話じゃないだろう。
俺が犯人逃がしたんです!現場に向かう途中通行人とぶつかったんです。
手配書見るまで気づかなかったんですけど確かに久保でした。
聞いたよ…。
仕方ないだろう。
あの状況じゃ誰だって現着を優先する。
どこか挙動不審なところがあったんです。
とっさに事件と結びつける事も出来たはずです。
ちょっと来い。
いいか?久保が硫酸なんかぶっかけたのは深雪さんの見た目が変われば奥山さんが捨てて自分のもとへ戻ってくると思っての事だ。
どうしてそんな事わかるんですか?久保の部屋を家宅捜索したらそう書かれたメモが見つかった。
ただのメモじゃない。
見方によりゃ遺書だ。
遺書?彼女がもとへ戻ってこなかったら殺して自分も死ぬって書かれてた。
心中のつもりらしい。
久保はまた彼女を狙うだろう。
そして次に久保が現れるとしたら深雪さんが退院した時だ。
そこを狙うつもりだった。
行きましょうか。
はい!
(古川裕之)こちらへ。
お話なら昨日の夜別の刑事さんたちがいらっしゃいましたけど。
彼らとはまた部署が違うものですから。
すみませんねぇ。
ちなみに何を聞かれました?奥山くんが参加したセミナー会場の連絡先とあと他に大阪にいた事が証明出来る事はないかって。
一応昨日の7時頃向こうから電話がかかってきたんでその事は言っときました。
駅にいたみたいで後ろから「新大阪」ってアナウンスも聞こえてましたよ。
奥山さんは大阪へはよく?本社があるんで月に1〜2度。
なるほど。
毎月行く日は決まってるんですか?いえその時々です。
あらかじめ外部の人間が出張の日程を知る事ってありえますか?ここに書いてありますんで。
まあ知ろうと思えばお客さんでも。
なるほど。
あっちなみに…この男が店に来た事ありませんか?
(古川)日に何十人も来店されますんで…。
この方が何か?あっいえ…。
ありがとうございます。
あの…ひょっとして奥山くん疑われてるんじゃ…。
いえいえ。
この手の質問は関係者全員にしていますので。
ああそうですよね。
子供さんの手術が終わったばかりで奥さんの手が一番必要な時期にこんな事になって…。
お子さんが手術したんですか?ええ。
でも無事成功したらしいですよ。
(米沢)なんとか繋ぎ合わせてみました。
前科者照合したところ出てきたのはこの男です。
久保亮二ですね。
もうご存じで?ええまあ。
相変わらず早いですなぁ…。
奥山さんのアリバイ取ってたみたいですけど捜査本部はそっちも疑ってんすか?初動捜査の一環でしょう。
最初の捜査会議から久保の事件や被害者が地元の警察に相談していた事など出てきてましたから。
奥山さんについては裏も取れてますし。
これなんですけども…。
セミナー会場の様子をビデオで記録したものです。
それから奥山さんが会社にかけた電話の発信基地も大阪でした。
こちらは?こちらはセミナー会場の廊下の防犯カメラの映像です。
大阪府警に依頼して入手しました。
ターゲットは久保ですね。
祐天寺警察署の管内で久保らしき人物の情報を得たという事なので確保は目前でしょう。
しかし問題はここからでしょうなぁ…。
問題?ええ。
ご存じのとおり立件するためには司法が定めた特徴点の一致が12点以上必要です。
この指紋は断片の寄せ集めですからねぇ…。
証拠能力がない。
徹夜で作業したんですけども残念ながら…。
ところでこちらの指紋は6年前の事件で採取されたものですねぇ。
なぜ左右3本ずつなのでしょう?遺留品から採ったものでして。
6年前お二人は公園で旅行の写真を見ていたそうです。
そこに突然久保が現れて写真を奪いこのような感じで破り捨てた。
そして硫酸をかけた…。
なるほど。
その時に付いた指紋というわけですか。
その時にはきれいに採れたんで問題はなかったんですが今回はもし久保が否認したら他に物証がないときついでしょうな…。
(奥山浩)いい加減に目を覚ませ!結婚するって何を言ってるんだ?お前は奥山家の跡取りなんだぞ!
(奥山久美子)こういう事が起こるっていうのはね女の方にも原因があるのよ!静かにしてくれよ…。
深雪に聞こえたらどうするんだ。
あっ…。
奥山さん…。
言う事を聞かんなら会社も継がせられんからな。
お見苦しいところを…。
あっいえ…。
どうぞ。
(ノック)こんにちは。
ごめんなさいこんな格好で…。
あっいえ。
もうすぐ退院出来るって聞きました。
私…退院しても大丈夫なんでしょうか?まだ捕まってないんですよね?久保。
ええ。
その事で相談があって来ました。
(久保亮二)深雪!深雪…!やめて!ちょっと…!誰だ?お前!?久保!
(江美)キャッ!おい!
(久保)動くな…。
殺すぞ…!わかったよ…。
やめろよ…。
や…やめろって!甲斐くん!甲斐くんやめて!やめて…!
(久保)ごめんなさい…殺さないで!拳銃向けられたってわめいてたぞ。
抵抗したので威嚇しただけです。
日本の警察官にそんな事認められると思ってるのか。
正当防衛です。
それに発砲はしていません。
当たり前だろうが!お前もそそのかされて刑事ごっこなんかやってんじゃねえよ。
すいません…。
何か気になる点でも?あっいや…ちょっと昔の事を思い出して…。
(ため息)
(芹沢慶二)もう2時間っすね…。
本当にここに寝泊まりしてんのかな?もう目障りだな〜!おいなんとかしろ。
はい。
おやこれは奇遇ですねぇ。
「おや」じゃないですよ。
誰に聞いたんですか?このような事はいくら手があっても困る事はないと思いまして。
それが困るんです。
帰ってください。
おや…。
だから「おや」じゃないって…。
出てきたようですよ。
え?
(伊丹)芹沢!
(芹沢)こっち来た!
(芹沢)ちょっとちょっと…。
止まれ!止まれ!止まれ…!
(芹沢)あ痛て〜っ!ぬあっああ…!
(伊丹)おとなしくしろ…。
おい手錠!この野郎合気道を使いやがるんですよ。
おや。
(中園照生)久保の身柄を確保したようで現在取り調べ中です。
(内村完爾)そうかよくやった。
はあ。
ただまだ物証が…。
関係ない。
は?一刻も早く落とすように伝えろ。
ガイシャは警察に相談していたにもかかわらず殺された。
マスコミが騒ぐとまずい。
早急に解決して批判を避けねばならん。
はっ!深雪さんは3週間前警察に相談している。
つけ回してたのお前だよな?知りませんよ。
19日の午後6時どこにいた?今さら黙秘なんて通用すると思うなよ。
ほら…。
ほらぁ!
(三浦)深雪さんの自宅の最寄りの駅だ。
監視カメラの映像だ。
時刻は午後5時半。
犯行時刻直前だ!どうしてお前がここにいるんだ?ああっ!?深雪に呼び出されたんですよ。
「もうつきまとうのはやめてください」「話があるなら11月19日の午後5時半祐天寺駅で待ってます」「それで終わりにしましょう。
返事はしないで」「夫や子供に迷惑かけたくありません」で行ったのか。
ただ会ってひと言言いたかっただけです。
俺はつきまとってなんかいないって。
3年半も刑務所にいて気持ち変わったんですよ。
それを信じろってのか。
だったら僕がやったって証拠でもあるんですか?
(芹沢)「あのなぁ現場にはな…」
(伊丹)「おい」指紋の話は出来ないんですね。
このままではらちがあかないようですねぇ。
行きますよ。
先生がもうちょっとで退院出来るってさ。
(奥山大輝)今日はお母さん来ないの?その事なんだけど…。
お母さんちょっと用事があってな大輝が家に帰ってもしばらく留守にしてるんだ。
用事って?それは…。
奥山さん。
ちょっとよろしいでしょうか。
ひょっとして大輝くんには深雪さんの事まだ…。
聞こえてましたか…。
まだ体調が安定したばかりなんです。
ショックでまた悪くなってしまうと思うと怖くて言えなくて…。
どのようなご病気ですか?再生不良性貧血です。
検査をしたら奇跡的に深雪の造血細胞と適合したんで移植したんです。
やっとよくなってこれなら学校にも行けるねって言ってたのに…。
あの奥山さん…。
聞きました。
深雪を殺したの…久保だったそうですね。
今取り調べ中です。
犯行は認めてるんですか?現状では否認しています。
なら釈放してください!そしたら僕が…!奥山さん…。
我々も犯人は久保でほぼ間違いないと思っています。
ですが現場から見つかった指紋だけでは証拠として不十分なんです。
なんでもいいんです。
もう一度家に帰ってみて少しでも証拠になりそうなものが見つかったら連絡くれませんか。
それさえあれば久保を立件する事が出来ます。
このまま警察に任せていいんですかね?はい?聞きましたよ。
今回…深雪警察に相談したんですってね。
でも深雪は殺されてしまった。
警察は何もしてくれなかったって事じゃないですか!甲斐さん…。
裁判の時もそうだったでしょ?人を殺す人間をなんで5年程度の判決で済ませたんだ…!久保が落とせないかもなんて話教えてよかったんですか?奥山さんにですか?これでもし釈放なんかされたら本当に殺しかねませんよ。
失礼します。
おや米沢さん。
お二人にはご報告しとこうかと思いまして。
久保なんですがなんとか立件出来そうです。
え?明日検察に身柄を引き渡します。
何か出てきましたか?ええ。
先ほど凶器が発見されまして。
久保がいた駅周辺の排水溝の隙間に滑り込ませてあったそうです。
今度は特徴点12点以上一致しました。
今回凶器から採取された指紋。
こちらが6年前の指紋…。
一致しましたか…。
奥山さんにこの事知らせてあげてもいいですか?君はよほど奥山さんの事が気がかりなようですね。
俺はあの2人がどんな思いで一緒になったか知ってますから…。
(拍手)本日はお忙しい中僕たちの結婚式に来てくださりありがとうございました。
深雪は…必ず幸せにします。
必ず…。
未熟な2人ですが…どうかよろしくお願いします。
(拍手)米沢さんどうもありがとう。
あっじゃあ私はこれで。
預かってって大輝を?病気の事だってあるし仕事だって忙しくなる。
俺一人じゃ面倒見る自信がないんだ。
そりゃ…私は構わないけど。
大輝の事は心配するな。
ただ…お前もまだ若いんだ。
もう一度ちゃんとした相手を探して一からやり直せ。
大輝。
覚えてるか?おばあちゃんとおじいちゃんだ。
退院したらしばらくの間一緒に暮らすんだ。
帰ったら退院祝いしなくちゃね。
フフ…。
元気でな。
息子さんもうすぐ退院だそうですねぇ。
おかげさまで。
久保は…どうなりました?その話なんですが久保の指紋が付いた凶器が見つかったんです。
え?今度は十分な証拠能力があります。
そうですか…。
よかった。
これで深雪も少しは浮かばれます。
再犯ですし今度こそ出て来れないと思います。
ありがとうございました。
ああひとつ…よろしいでしょうか。
どうしても引っかかっている事がありまして。
なんでしょうか。
今回見つかった久保の指紋ですが薬指と小指は擦れてほとんど消えかかっていました。
つまりはっきりと残っていたのは3本だけなんです。
それがどうしたんですか?深雪さんが殺害された部屋から見つかった指紋も3本そして6年前久保が残した指紋も同じく3本。
これ…妙だと思いませんか?いやそういう事もあるんじゃないですか?そう言って偶然で片付けてしまっていいものかどうかどうも腑に落ちないんですよ。
そこであれこれと考えを思い巡らせているうちにある考えにたどり着きました。
もし今回見つかった3本の指紋が全て同じ指紋のコピーだったとしたらどうでしょう。
つまり何者かが今回の事件を久保の犯行に見せかけるために6年前の指紋から複製したという事です。
指紋を複製?そんな事一体誰が…。
証拠品が持ち主に返却される事は知ってますよねぇ。
え…?ええ。
そうなんです。
あなたならばそれが出来るんですよ奥山さん。
最近ではネットなどを通じて一般の人間でも指紋採取の道具を手に入れる事が可能です。
指紋のデータさえあれば偽の指紋を作る事が出来ます。
なんで僕がそんな事をしないといけないんです。
もちろん…深雪さんを殺したのはあなただからですよ。
なっ何言ってるんですか杉下さん!君には受け入れがたいかもしれません。
しかし残念ながらそれが真相です。
えっちょっ…ちょっと待ってください。
奥山さんが犯行時刻に大阪でセミナーを受けていた事確認しましたよね。
アリバイならばさほど難しい事ではありません。
あなたは時間どおりに会場に行きあえて監視カメラに顔を映しておきすぐに会場を出て東京に向かう。
セミナーの最中は髪型と背格好の似た身代わりを立ててご自分が着ていたコートを脇に置かせたんです。
つまりあの映像に映っていたのはあなたではなかったという事ですよ。
だったら電話は?発信した基地局も大阪だったはずです。
携帯電話よろしいですか?あなたは大阪に残った協力者にご自分の携帯を渡しておき大阪駅から東京にいる自分の上司に電話をかけさせる。
そしてその協力者は自分の電話をあなたと繋ぎあとはこうするだけです。
これで東京にいながら大阪の基地局を使って会話をする事が出来るというわけです。
その後は速達で携帯を返送する。
ああそういえば…あなたは警察への通報は深雪さんの携帯からなさったそうですねぇ。
手元にご自分の携帯がなかったからではありませんか?じゃあ久保は?久保は深雪さんにつきまとっていた。
深雪さん自身はっきりと確認したわけではありません。
もしつきまとっていた男が顔を隠した奥山さんだったとしたら…?さて続けましょう。
東京の自宅に戻り深雪さんを殺害したあなたは…。
(ガラスが割れる音)久保の犯行に見せかけるための工作を施したというわけです。
それから犯行時刻の久保のアリバイを無くすためにあなたは事前に深雪さんの携帯を使って久保を誘い出すメールを送っていますねぇ。
日時と場所を指定するメールを送りすぐに送信済みメールを消去する。
向こうからのメールは自動的に拒否される設定になっていましたからあなたは深雪さんに気づかれずに久保を誘い出す事が出来るというわけです。
甲斐さん…まさか甲斐さんまでそんなふうに考えてるんですか?ああいや…俺は…。
まだ認めませんか?ではあなたはなぜ一度現場に残した指紋をわざわざ拭き取って断片的にしか残さなかったのでしょう。
恐らくあなたは不安だったのでしょうねぇ。
果たして偽物の指紋で警察を騙し通せるものかどうか。
だからあえて不鮮明な指紋を残す事で少しでもごまかす事をしたんですよ。
あなたが不安になるのも無理はありません。
だってあなたは犯罪のプロではないのですから。
しかし慣れない事はやるものではありませんねぇ。
あなたは致命的なミスを犯していました。
ミス…?3本の指紋のうち1本は久保のものではなかったんですよ。
調べたところうちの捜査員の指紋でした。
恐らく証拠品を扱う際に誤って素手で触ってしまったのでしょうねぇ。
それをあなたは久保のものだと思い込んで指紋を作ってしまったというわけです。
違う…。
違う!6年前に捜査員が誤って付けてしまった指紋が今回の凶器にもまた付いていた。
おかしいですねぇ…。
奥山さん?まだあなたは言い逃れ出来ると思いますか?深雪は…ずっと僕を騙していたんです。
検査結果はすぐ出ますから。
はい。
(奥山の声)大輝の造血細胞移植のために深雪と2人で適合検査を受けました。
HLAという遺伝子の検査です。
HLAは両親から半分ずつ受け継がれるものだそうです。
完全には一致しないにしても僕の結果だけはただの一つも一致していなかったんです。
(奥山の声)気になって深雪には言わず親子鑑定を受けました。
大輝は僕の子じゃなかった…。
時期からして考えられるのは久保しかいません。
6年前深雪は久保と会ってケガをして帰ってきた事がありました。
暴力を振るわれただけだと言っていたけど本当は何かあったんです。
そんな…。
なのに…深雪は言わなかった。
そんな大事な事言えなかったじゃ済まない!僕は必死に働いて久保の子供を養ってたんですよ!僕は出来る限り深雪を大切にしてきた。
だから親と縁を切ってまで結婚して…。
だけど…結婚したあとも事件の記憶は消えない…。
深雪には言わなかったけどずっと…苦しみから耐えてきてたんです。
なのに…。
だからこそ許せなかった…!奥山さん。
その悲痛な言葉は裁判での情状酌量を狙うものですか?ああそう。
まだあなたの協力者について触れていませんでしたねぇ。
明らかにあなたと共犯になるとわかっていながらここまであなたに協力する。
それは一体どんな人物なのでしょう?ちなみにあなたの身代わりになった男彼は恐らく真の協力者にただ連れて来られただけでしょう。
あの映像で少しでもあなたの身代わりの顔が映ってしまえば逆にあなたがセミナー会場にいなかった事の証拠になってしまう。
しかしあなたにはそうならない絶対的な自信がありました。
なぜならばあの映像を撮影し編集した人物こそが…あなたの真の協力者だからです。
すでに大阪府警に連絡をして身柄を確保してもらいました。
名前は井上祥代。
3年前大阪本社に入社。
あなたの事をとても慕っていたそうですねぇ。
外に愛人を作ったのはあなたの言う苦しみからですか?愛人?井上祥代の供述によればあなたとの関係が始まったのが2年前大輝くんが発病したのが去年。
これは何を意味するのでしょう。
親子関係の事実が発覚する前に奥山さんあなたの深雪さんに対する愛情はすでに冷めていたのではありませんか?そんな…。
嘘でしょう?あんなに…あんなに深雪さんの事を愛してたじゃないですか。
自分でも…驚いてます。
じゃあどうして…!理由は…ありません。
ただ…人の気持ちは変わるんですよ。
どうしようもなく…変わるんです。
甲斐さん。
今まで本当にありがとうございました。
末永くお幸せに。
約束します。
最後にひとつだけ。
あなたは深雪さんがどれほど苦しんだか考えた事がありましたか?どれほど孤独だったか考えた事がありましたか?誰よりも苦しかったのは深雪さんだったと…僕は思いますよ。
行きましょうか。
はい…。
では僕は約束があるのでお先に失礼します。
よく平気であんな嘘がつけますね。
はい?指紋の話です。
久保の指紋に警察官の指紋が混ざってたなんて。
いささか乱暴だったのは認めます。
いつわかったんですか?強いて言えば…彼の着ていたシャツでしょうか。
(杉下の声)出張帰りだというのにあまりにもはっきりとアイロンがけのあとが残っていました。
新幹線やセミナーで長い時間背もたれに寄りかかっていたはずなのに…。
恐らく犯行の際に返り血を浴びたために着替えたのだろうと思いました。
じゃあ最初から…。
もちろん最初は違和感を感じる程度でしたが。
それからもうひとつ。
(杉下の声)セミナーの写真のシャツには薄いストライプが入っていました。
しかし殺害現場で見た奥山のシャツは真っ白でした。
どうして黙ってたんですか?奥山に我々の目が久保に向いているように思わせたかったんです。
しかし我々には決め手がない。
そう伝えればきっと何か強引な事をしてくるだろうと思いました。
指紋の付いた凶器を出させるために俺を利用したんですか?君はどこかで犯人が奥山であってほしくないと望んでいる節がありました。
そんな君に僕の考えを話せば捜査の邪魔になるような事をしかねないと思ったものですからねぇ。
あんた!いいですか?我々は殺人事件の捜査をしていたんですよ。
人が人を殺すんですよ。
そのような事件で私情を挟む事は決して許されません。
我々の仕事は…犯罪者を捕まえる事です。
(ため息)
(月本幸子)へえ…!カイトさんのお父さんなんですか?
(甲斐峯秋)杉下くんの行きつけのお店をのぞいてみたくてねぇ。
ゆっくりしていってください。
ありがとう。
聞いたよ。
また倅が迷惑かけたんだってね。
迷惑というほどでは…。
個人の思い入れから犯人を見誤るなんてのは相変わらず警察官としての本質が出来てないんだ。
ひとつ聞いていいかな。
はい?君もそうなんだけどねどうしてみんなあんな男を欲しがるんだろうかねぇ。
刑事課に引っ張り上げられたと聞いた時も私にはわからなかった。
むしろ警察官としての…いえそれ以前に人としての基本が出来ているからでしょうか。
本当にどうも君は…倅に甘すぎるね。
えっ?あっいや酒の事じゃない。
これはいい。
悦子さぁ…。
(笛吹悦子)うん。
今の仕事自分に向いてないかもとか思った事ある?あるよ。
そんな時どうするの?享も頑張ってるんだろうなってそう思って…乗り切ってる。
辞めたきゃ辞めれば?だからって捨てたりしないからさ。
何急に。
何?別に…。
もう。
人が見てる。
見てるって。
いいじゃん。
馬鹿。
見て…ちょっと放せ!フフ…いいじゃない。
2015/07/27(月) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒Eleven[再][解][字]
「交番巡査・甲斐享」
詳細情報
◇番組内容
杉下右京(水谷豊)の相棒(?)として甲斐享(成宮寛貴)が特命係に飛ばされてきた!父親は警察庁次長(石坂浩二)、恋人は客室乗務員(真飛聖)。
右京と享の新特命係のコンビが新たな謎に挑む…。
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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