クローズアップ現代「小型機がなぜ住宅に」 2015.07.28


下がってください!
きのう東京・調布市で起きた小型機の墜落事故。

墜落までは1分足らず。
そのとき小型機に何が起きていたのか。
独自取材から事故の原因と課題に迫ります。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
日本各地、住宅地に隣接した飛行場は少なくありません。
調布飛行場もその一つです。
きのう、東京・調布市の住宅街に調布飛行場から飛び立った小型機が墜落し3人が亡くなりました。
そのうちの一人は巻き添えになった34歳の女性と見られています。
また住民2人がけがをしています。
大破した飛行機の残骸と激しい火災で焼け焦げた4棟の住宅や車。
周囲の住宅6棟も被害を受け日曜日の朝を静かに過ごしていた住宅街の人々を恐怖に陥れたのです。
事故を起こした6人乗りの小型機は、小型機としては速くそして、高く飛ぶことのできる比較的性能が高い機種でした。
きのうは機長を含め5人が乗り込み日帰りで大島に行く予定でした。
調布飛行場から大島に行く場合一般的なルートです。
800メートルの滑走路から離陸し、高度300メートルまでまっすぐ飛行します。
事故を起こした飛行機ですが離陸後すぐに左にそれたと見られ飛行場から僅か700メートルの住宅街に墜落しました。
離陸から墜落までは1分足らずだったと見られています。
墜落した飛行機は5月に国土交通省の年に1回の検査耐空証明検査に合格。
また今月22日には事故の4日前ですが事故で亡くなったとみられる川村泰史機長が整備飛行と呼ばれるテスト飛行を行っていてその際には、エンジンや機体に異常はありませんでした。
住宅街に突然飛行機が突っ込んでくる恐怖。
昭和55年・1980年調布飛行場からおよそ600メートルの中学校の校庭に離陸直後の飛行機が墜落する事故が起きていまして地元住民からは不安の声が上がっていました。
繰り返された事故。
小型機に何があったのか。
まずは事故の原因を検証します。

視聴者が撮影した小型機が離陸したときの映像です。
きのうの午前10時58分、伊豆大島に向け、機長を含め5人を乗せて出発しました。
滑走路から南に向けて離陸した場合、原則としてしばらくまっすぐ進みながら、高度を上げていきます。
NHKが目撃証言などから作成した今回の飛行ルートです。
小型機は、画面左の方向に進みながら、およそ700メートル飛行。
僅か1分足らずで、住宅地に墜落しました。
小型機は、どのように飛んでいたのか。
離陸直後の様子が、偶然、飛行場のすぐそばのサッカー場で撮影されていました。
目撃した人は、小型機の音などが、ふだんと違っていたといいます。

小型機がサッカー場を通過したあとに撮影されたと見られる映像です。
木立の上を、小型機が通過している様子が映っています。

同じ人が撮影していた映像には、その直前に別の小型機が飛行する姿も映っていました。
2機を比較してみると、墜落した小型機は、低い高度で飛行していたことが分かります。
その直後でした。
住宅街の方角から、黒い煙が立ち上ります。
その瞬間を、離陸準備中の後続の小型機に乗っていた人が目撃していました。

小型機は、住宅密集地に墜落。
民家が激しい炎に包まれました。
住宅地を襲った突然の惨事に、周囲は騒然となりました。

激しく燃える民家の2階からは、助けを求める女性の声が聞こえてきたといいます。

この事故で、小型機に乗っていた男性2人のほか、民家に住む鈴木希望さんも巻き込まれ、亡くなったと見られています。
仲がよかった友人は、犬が大好きだったという希望さんの突然の死に、大きなショックを受けています。

小型機を操縦していた、川村泰史機長。
墜落で死亡したと見られています。
これまでの飛行時間は、600時間から700時間。
川村機長を指導した経験がある、先輩のパイロットは、一定の飛行経験がある冷静な操縦士だったといいます。

パイロットは、事故を避けることはできなかったのか。
知場勝さんです。
長年、国の事故調査官として、航空機事故の原因調査に当たってきました。
小型機の操縦経験も豊富です。
今回、墜落するまでの経路を、上空から分析してもらいました。
まず知場さんが指摘したのが、街なかにある調布飛行場ならではの、パイロットへの心理的負担でした。
墜落した小型機は、滑走路を北向きではなく、住宅地が密集する南向きに飛び立ちました。

さらに知場さんは、なんらかのトラブルで高度が上がらなかったため、左に旋回し、事故を回避しようとしたのではないかと指摘します。

墜落の原因について、別の専門家は、離陸後に、なんらかのトラブルが起きた可能性を指摘しています。

国の運輸安全委員会は、きょう、墜落現場の状況を、詳しく確認しました。
警視庁も特別捜査本部を設置して、原因究明を進めています。
突然、市民の命を奪った住宅地への墜落事故。
どう安全を確保していくのか、重い課題が突きつけられています。

今夜は今のVTRで、墜落までの経路を上空から分析していただきました、元運輸安全委員会首席調査官の知場勝さんとお伝えします。
上空から率直にご覧いただいた感想はどんなものだったでしょうか。
滑走路が非常に短いということですね。
ほかの空港に比べて800メーターしかありませんから、短いということ。
それから人家がかなり近い所に密集しているということ、なので、不時着する適地がないということですね、近くにはですね。
パイロットとしての心理的負担が。
非常に重かったと思いますね。
今回、さまざまな視聴者の方が、いろんな角度から映像を撮ってらっしゃるんですけども、映像の中で、一番注目されている点はどこでしょうか?
まず離陸直後の映像なんですけれども、どうもギアが、着陸装置ですね、車輪ですけれども、これが上がっていないように見えますね。
出たままであると?
タイミング的には、もう上がっている状況じゃないのかなという感じはしますね。
なんらかの状況で、出したままになっている。
ですから、車輪を上げるタイミングのときに、なんらかの異常が機体にあった可能性はあると思いますけど。
それともう1つは、横から撮った映像ですけれども、この映像でかなり高度が上がっていないというふうに感じます。

それも後ほどその映像を見たいと思いますけれども、こちらが調布飛行場で、通常の離陸の場合は、この青い線なんですけれども、事故が起きた機種の場合、通常ならばどれぐらいのスピードで、そして1分足らずで墜落したということですけれども、1分ぐらいで、どれぐらいの高さまで上がり、どれくらい遠くまで飛んでいるものなんでしょうか?
1分ですとですね、平均の速度が、航空機の場合は100ノット、秒速に直すと50メーターなんですけれども、ですので、1分に換算すると、3000メーターですね、3キロ、約3キロ行って、それで高度的には、約370メーターの高度まで達するんじゃないかと。
1分間で?
考えられますね。
今回は、その滑走路から700メートルの所、1分足らずで墜落をしたのではないかと見られていますね。
これが換算すると、この辺りで飛行機が浮揚した、浮き上がったと考えると、浮き上がるときの速度が恐らく70台、70ノット台なんですね。
秒速に直すと約37、8。
墜落したときも同じくらいの速度、で、この間を、平均80ノットで飛んだと考えると、秒速40メーターになりますね。
そうすると、ここで離陸、浮き上がったと考えると、ここまでが約800メーターぐらいになるんですね。
それで800メーターをもし秒速40メーターでいくと、20秒ぐらいでここに墜落地点に達するわけですね。
僅か20秒で。
ですので離陸から1分はなかったと、20秒前後ぐらいしかなかったんではないかというふうに考えられます。
そしてもう1つ、注目されている映像が、その高度なんですけれども、本来ならば何メートルぐらいまで上がっていることになりますか?
ですので、ここだと20秒だと、先ほどの1分で、370メーターですから、120メートルですね。
この中間地点、この辺りだと60メーターぐらいの高度には達しているというふうに考えられます。
今この、野球場から撮った映像ですけれども、木の僅か上を飛んでいる状況ですから、60メートル。

とてもあるようには見えないですね。
あったとしても30メーター、場合によっては、20メーターぐらいしかなかったんじゃないかと思います。
パイロットというのは、自分がこれから飛ばそうとしている飛行機が大丈夫かどうかというのを、離陸直前にはどういったところでチェックしていくんでしょうか?
まず飛行前に機体の周りを見るということですね。
それから、燃料の水抜きを行うということですね。
これは夜間、あるいは何日か駐機している場合に、どうしてもタンクの中に空白があると、空気中の水蒸気が凝結して、水となって下にたまるわけですね。
それが燃料ラインを通っていって、エンジンに流れると、エンジンに不調を起こして停止することがあるということで、パイロットは飛行前点検で、必ず水抜きということをやりますね。
それから、機体に乗って、ランナップ、つまり試運転ですね。
かなりフルパワーに近い状態まで入れて、点検を行う。
それからいろんな項目を行って、すべてが基準の値に入ってるかどうか、なおかつ自分の五感を働かせて、異常なにおいがないか、異常な振動がないか、そういったことも確かめます。
それから今度、離陸のポジションに入ってからですね、静かにパワーをフルに入れながら離陸していくわけですけれども、その段階でも、エンジン計器、その他に異常がないか、当然、五感でもすべてを感じながら上がるということですね。
ですので、その3つの段階で、発見できなかった可能性はあると思います。
これから事故調査が行われますけども、小型機にはフライトレコーダーもボイスレコーダーもないということで、事故の最大の原因を追求する最大の手がかりはなんでしょうか?
最大の手がかりは、機体ですよね。
機体は当然今申しましたように、今回の事故の場合は、エンジン、あるいは燃料関係に原因がある可能性がありますので、エンジンあるいは燃料系統をよく調べる。
特にエンジンは、分解調査が必要だと思いますね。
それから口述、できるだけ多くの口述を取って、それで真実をその中から見つけ出していく。
目撃者の。
そうですね。
それから機体に同乗されていた3名の方の口述ですね。
それから、空港関係者、整備士、あるいはパイロット等の口述ですね。
プロの口述、そのあたりをできるだけたくさん集めて、その中から真実を見つけていくことが大事だと思いますね。
映像も有力な手がかりでしょうね。
そうですね、特に映像は有力な手がかりとなりますね。
この冒頭でお伝えしましたように、調布飛行場、昭和55年・1980年にも事故が起きています。
住宅密集地にある飛行場の安全はどうやって高められるのでしょうか。
調布飛行場から、700メートルの場所に住む村田キヨさんです。
飛行場問題を考える市民の会のメンバーとして、長年、危険性を訴えてきました。

村田さんが活動を行うきっかけの一つとなったのが、昭和55年に起きた墜落事故でした。
調布飛行場を離陸した小型機が、エンジントラブルのため、およそ600メートル離れた中学校の校庭に墜落。
夏休み中だったため、生徒たちに被害はありませんでしたが、乗っていた2人が死亡しました。

将来は全面移転させる方向に持っていってほしいと思います。
事故を受けて、住民たちの間に、飛行場の移転を求める声が広がっていきました。

一方で、伊豆大島など、離島航路の拠点として重要な役割を担っていた調布飛行場。
東京都は、不安を訴える地元の要望を受け、飛行場を利用できる条件を厳しくしました。
リスクを減らすために、公共性のある飛行に限定することにしたのです。
自家用の小型飛行機については、観光や遊覧飛行などを認めず、パイロットの技能を維持するために行う、慣熟飛行のみ利用できることにしました。
しかし、調布飛行場を利用してきたパイロットに取材すると、慣熟飛行としながらも、実際はレジャーで利用するケースも少なくないといいます。

さらに、都が定めた、独自の基準の影響で、古い機体が増えているという指摘もあります。
常駐する自家用機の機体変更を、原則、認めないとしているのです。

住民を巻き込み、合わせて3人の犠牲者を出した今回の墜落事故。
25年以上前の機体に、機長のほか、4人を乗せて、伊豆大島に向かうことになっていました。
飛行の目的は慣熟飛行でした。
今回の事故を受け、都は当面、慣熟飛行を含めた、すべての自家用機の利用を、自粛するように求めています。
ここからは、小型機、墜落事故の取材を続けています、平間記者と共にお伝えしてまいります。
平間さん、調布では昭和55年にも事故があった、そしてほかにも、住宅密集地の近くにある空港でも、事故が起きている場合があるわけですけれども、どんな安全対策がこれまで取られてきてるんでしょうか。
例えば調布飛行場の場合なんですけれども、発着回数を減らすことで、安全を担保しようということをしてるんですね。
どういうふうにやっているかということなんですが、VTRにありましたように、例えば慣熟飛行などに限るとか、あるいは機体の更新を原則認めないと、今ある機体でしか飛んじゃいけませんよと、こういったことをやってるんですね。
その結果、ピーク時に比べて、2割ほど発着数は減ってるんですね。
ただ実効性については、先ほどVTRにありましたように、疑問の声も上がっているというのが実情なんですね。
あと、ほかの日本のいわゆる住宅密集地にある空港については、いわゆる騒音の問題とセットで、住宅地の上空は、なるべく飛ばないルートを設定するといった対策を取っているということなんですね。
こうした事故が起きてしまいますと、飛行場の近くにある住宅街の方々っていうのは、やっぱり怖いっていうふうに思われると思うんですけれども、どういう安全対策が取られるべきだと考えてますか?
そうですね。
例えば海外の事例を見てみたいと思うんですけども、例えばアメリカ西海岸、ロサンゼルス近郊のサンタモニカには、調布飛行場のような、いわゆる小型機が発着する空港っていうのがあるんですね。
ここは、小型機が発着してるんですけども、比較的その滑走路の長さを長く取ってるんですね。
余裕を持って取っていると。
そのことによって、もし万が一、離陸したあとにエンジンにトラブルがあったとしても、空港内に不時着できるというような対策を取ってるんですね。
一方、日本はどうかと言いますと、例えば調布飛行場では、逆に平成13年に、滑走路の長さを、1000メートルから800メートルに縮めているんですね。
ですから、調布飛行場では、先ほどVTRにあったように、離陸した直後、非常に低い高度で、住宅地の屋根をかすめるようにして飛ぶということが実情だということが言えると思います。
数々の調査に当たってこられまして、今回のような事故を、どうやって防いでいくのか、知場さん、どう考えてらっしゃいますか?
最終的には、プロ集団である運輸安全委員会の最終報告書を待ちたいと思うんですけれども、この程度の事故になりますと、恐らく1年以上の時間がかかると思います。
したがって運輸安全委員会が安全上、必要と認められることは適時、公表していただいて、事故防止をしていただきたい、それから、運航者にあっては、発行された調査報告書を読むことによって、その中から、事故防止のためのヒントを見つけていただきたいというふうに考えます。
小型機を操縦するパイロットもやはり、過去の事故の調査を読んで学んでほしいということですか?
そうですね。
その中に必ずヒントがあるということですね。
きょうはどうもありがとうございました。
2015/07/28(火) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「小型機がなぜ住宅に」[字][再]

日曜日の白昼に起きた小型機の墜落事故。住宅を直撃、炎上し、3人が亡くなった。小型機の墜落や不時着は、全国各地で起こっている。目撃証言から原因に迫り、対策を考える

詳細情報
番組内容
【キャスター】国谷裕子
出演者
【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:21789(0x551D)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: