(中川美奈)
滋賀県は琵琶湖を中心に日本仏教の母山として千古の歴史を今に伝える霊山比叡山延暦寺総本堂の根本中堂国宝彦根城近江商人発祥の地近江八幡堅田の浮御堂など自然と歴史に満ち溢れたたくさんの名所があります
その県南部に位置する雄琴温泉の高台にわたくしが若女将を務める「びわ湖花街道」があります
今日はこのびわ湖花街道で古くからの歴史ある大津絵の展示会が開かれています
(一同)いらっしゃいませ。
(中川政子)ああよかったわねえ。
朝からこんなにたくさんお客様がみえてくださって。
ほんとですねえ。
大津絵のよさを一人でも多くの方に知って頂きたいですよねえ。
(中川新太郎)今日『琵琶湖新報』の取材くるんだろ?うん。
それとね秘密の特別ゲストも。
秘密の特別ゲスト?そうあと30分もすれば…。
おお…!新ちゃんほら大変!あっやばい!ねえ母さん今日の朝の勤め十分やったから夜なしでいい?そうはいかないわよ。
約束は約束ですもの。
え〜…。
朝と夜旅館の手伝いをしますから刑事を続けさせてくれってそう言ったの新太郎あなたですよ。
いやでもさあ…。
ああ〜新ちゃんねえはいはい遅刻しちゃう早く早く。
ああ…うんわかった。
じゃあとにかく行ってくる。
いってきます!はいいってらっしゃい!いってらっしゃい。
あっ美奈さん私会場の方見てきますから。
あっはい。
(立花晴美)あなた平井先生よ。
(立花秀雄)先生…。
(平井次郎)頑張ってるようだな。
(秀雄)はい。
うんよかった。
やってやって。
撮らせてもらうよ。
(シャッター音)大津絵は江戸時代東海道大津宿の土産物として全国に広まった民画なんです。
ただそれを今伝えられるのはこれをお描きになった立花松山さんのお店だけなんです。
いらっしゃいませ。
どうかなさいましたか?
(相沢千恵)あっこの方どちらにいらっしゃるんでしょう?絵師の立花さんでしたら奥です。
どうぞご案内致します。
いいんです。
よし!藤子さんわざわざありがとうございます。
(二宮藤子)美奈ちゃんお久しぶり!はい!秀雄さんちょっといい?紹介するわね画家の二宮藤子さん。
はじめまして二宮…。
ん?どうかしました?え?まさか絵師さんが美奈ちゃんの元彼だったなんてびっくりしちゃって…。
え?何?元彼って…。
あら覚えてないの?えっ?美奈ちゃん高校生の時病院で彼紹介してくれたじゃない。
ねえ?ああ…そういえば俺が足骨折して入院した時に…高校2年生の終わりに。
ああ〜そういえばそんな…。
違う!藤子さん秀雄さんはね元彼じゃないんです。
高校の同級生。
あっやだやだ晴美さん誤解しないでくださいね。
あっあの…秀雄さんの奥様の晴美さんです。
ああ…はじめまして二宮です。
(女性客)画家の二宮藤子さんじゃない?すみませんサインください!お客様〜ご遠慮ください。
(藤子)美奈ちゃんいいのいいのいいの。
(梅子)ちょっとちょっと…女将こっちこっちこっち。
さすが売れっ子画家は違うね。
(梅子)1人ずつはい…並んでください。
(小百合)ああっああ…梅子さん何!?あ〜!私聞いちゃったんです。
絵師の立花秀雄さん若女将の高校時代の元彼なんですって!えっ!?秀雄さんが!?ああ〜もう私誰かに言いたくてたまらなくて。
ああ〜すっきりした。
じゃ私会場に戻りま〜す。
え〜元彼っていう事はチュッ愛してるチュッ…。
え〜私誰かに言いたくて言いたくてああ…。
(笹木まどか)あっすいません。
琵琶湖新報の者ですが大津絵の展示会場どちらでしょう?あっ元彼の取材の方?え〜!
(まどか)は?
(カメラのシャッター音)
(まどか)はいいきます。
(シャッター音)いいですね。
もう一枚お願いします。
はい。
(シャッター音)じゃ最後一枚。
(カメラのシャッター音)
(藤子)盗作?失礼な事言わないで。
失礼します。
この件はまたの機会にお聞きする事にして二宮さん大津絵の魅力はなんだと思われますか?そうですねえ…素朴さの中に秘められた風刺。
現代人への強烈なメッセージだと思います。
ごめんね。
藤子さんが主役のようになっちゃって…。
美奈ちゃんのせいじゃないよ。
それに俺はそんな事全然気にしてないから。
でも…。
実はねプレッシャーでね…。
五代目立花松山を継ぐ事が。
俺にはふさわしくない。
そう思えて仕方がないんだ。
その気持ち私もわかるなあ。
私もいまだにね若女将にはふさわしくないなあって思うもん。
美奈ちゃんが?うん。
でもねいつかふさわしくなりたい。
その目標があるから毎日頑張れるのかなあ。
美奈ちゃん昔とちっとも変わってないな。
その明るくて前向きなところは。
さすが剣道部女子主将。
や〜だもう…。
ああ剣道部っていえばさ平井先生の誕生会忘れないでね。
何かプレゼント用意しないとなあ。
う〜ん何がいいかなあ…。
(クラクション)
(悲鳴)おはようございます。
びわ湖花街道自家製のお豆腐でございます。
美奈!ああ若旦那館内駆け足禁止でございます。
大女将に叱られますよ。
すいません…。
おい美奈これ大変な事になってんだよ。
うわっちょっああ…!ちょっとちょっと…ああ…危ない!ちょっともう…。
あっ申し訳ございません。
「有名女流画家に盗作疑惑」ねえねえこの有名女流画家ってまさか…。
二宮藤子さんの事。
ええっ!?名前伏せてあるんだけどねねえこの記事を読むと誰にだって藤子さんだってすぐわかるんだよ。
ねえねえねえ…どういう事?いやだからねそのね27年前に藤子さんが『日本文化美術展』で大賞をとった油絵がこのAさんの構図を盗んだものだって書いてあるんだよ。
ちょっとそっくりじゃない。
そっくり。
え?「盗作された作品はAさんのスケッチブックに水彩画で描かれていた」「またその絵には女流画家が大賞を受賞した日から4ヶ月ほど前にあたる制作年月日も記入されていた」あのねそのスケッチブックが盗作の証拠品らしいんだ。
いやあの…琵琶湖新報の笹木さんにとりあえず問い合わせてみる。
ああそう…ちょっと待って。
(携帯電話)嘘藤子さんが…。
はいもしもし。
(殿山警部)新太郎雄琴神社で女性の変死体が発見された。
お前のところからは車ですぐだ。
すぐ現場へ直行してくれ。
いやいや私もすぐ向かうから。
女性の身元はだな…。
えっ!?あ…はいわかりました。
すぐ現場に向かいます。
はい。
事件?あっああ…あのねそう!そう。
その笹木まどか…変死体で発見された。
えっ!?え!?え!?美奈ちゃんこれは一体どういう事?何が盗作疑惑よふざけてるわ。
藤子さん落ち着いてください。
落ち着いてなんかいらんないわよ!なんなのよこの記事!あの笹木っていう記者名誉毀損で訴えてやるわ。
その笹木さんなんですが…藤子さん驚かないでくださいね。
彼女亡くなったそうです。
え?詳しい事はまだ何もわからないんですけど今朝変死体で見つかったって今新ちゃん…新太郎が現場に向かいました。
被害者は昨夜記事の入稿を済ませ12時前に新聞社を出たそうです。
このような場所に一人で来る用事があったとは思えないなあ。
誰かに突き落とされたって事ですか?その可能性は高いなあ。
しばらく彦根の実家にいる事にしたから事件の事何かわかったら連絡ちょうだいね。
はい。
ああ二宮さん少しお時間頂けますかねえ?笹木まどかさんの事はお聞きになりましたね。
ええ亡くなったと…。
事故なんですか?まだはっきりとはしませんが事故とは考えにくく殺害された可能性が…。
笹木さんから盗作の件で取材を受けられた事は?いいえありません。
まさか新太郎さん私が疑われてるの?いやあのそういうわけでは…。
盗作記事と笹木さんの死に何か関係が?まあ恐らくあるでしょうな。
いやあの…。
いや実はですねあの笹木さんの携帯の発信記録を調べたところ昨夜3回…二宮さんからの着信があったんですが。
昨日の取材の件で電話しました。
でも忙しいのか通じなかったんです。
それともう一つ。
新聞社を調べたところ笹木さんが所持していたはずの盗作の証拠品古いスケッチブックが何者かによって持ち去られている事がわかりました。
私が盗んだとでも?いえいえそうじゃない。
いやそうじゃないんですが…。
あの参考までにお聞きしますが昨夜はどちらへお出かけになられましたか?ええ車で琵琶湖の風に当たりに。
夜にですか?絵描きには朝も夜も関係ないんです。
描く題材を探すためにはね。
それは…何時頃ですか?12時前です。
(ため息)盗作疑惑に殺人事件…。
もうこんな騒ぎに藤子さん巻き込んじゃって…。
藤子さんはねえ彦根の…。
老舗料亭のお嬢さん。
私とはピアノ教室が同じで子供の頃から大の仲良し。
そう。
ねえ若女将この…。
何か変わった事はありませんでしたかねえ?あの…実は昨日笹木さんの取材の時…。
盗作?失礼な事言わないで。
藤子さんすごい剣幕で…。
あっきっとこれは誰かが…そうよ新ちゃん。
藤子さんの…。
まあいいからいいから。
警部ともかく署に戻りましょうか。
戻ろううん。
あっちょっと待って。
大女将にちょっとごあいさつしたいから。
政子ちゃん!うわあ…あのご機嫌麗しゅう。
いつ見てもお若いですな。
殿山さん。
ん?お話があるんですけど。
はいなんでしょう?新太郎の昇進の事で…。
昇進ってあの…新太郎君がですか?そうです。
いやそれは無理でしょう。
どうして?いやいやいや…あのあのねお茶の一杯もご一緒したいんですがあいにくこの事件が発生したもので。
またまた…。
ほら新太郎君行くよ。
はい。
お母様昇進ですか?昇進させて頂けないんだったら警察なんか辞めさせなくちゃね!あっあのお母様警察組織というものはですね試験に合格をしないと昇進出来ないというかですから…。
(ため息)あの…。
はい。
これを絵師の立花さんにお返ししてください。
立花様でございますね?かしこまりました。
お願いします。
はいありがとうございました!ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております…。
おはようございまーす。
あっおはようございまーす。
おはようございます。
今日もよろしくお願いしまーす。
あれ?秀雄さんはまだ?それが今朝急に1時間ほど出かけてくるって…。
そう。
美奈さん聞いて頂きたい事があるんですけど…。
笹木まどかさんが殺されたそうですね。
ええ…。
まどかさんを殺したのは二宮藤子さんだと思います。
えっ?どういう事?1か月前部屋を整理してたら…。
(晴美の声)「H.A」は秀雄さんの旧姓秋本秀雄のイニシャル。
秀雄さんの昔のスケッチブックだと思い…。
(晴美の声)すぐに気づきました。
27年前二宮藤子さんが大賞を受賞した作品にそっくりだという事に。
盗作された。
とっさにそう思って…。
あなたこれ二宮藤子さんの絵とそっくりなんだけど…。
ただの偶然だってそう秀雄さんは言い張りました。
それで?納得がいかなくてまどかさんにその話を…。
笹木まどかさん?ええ。
以前大津絵の取材を受けた事があってそれ以来親しくしていたんです。
ああそうだったの…。
はい。
そしたらまどかさん調べてみるって…。
じゃあ晴美さんがそのスケッチブックをまどかさんに?はい。
秀雄さんに無断で預けました。
でもまさかあんな記事を書くとは思ってもみなかったんです。
ねえ秀雄さんあの記事を読んでなんて?スケッチブックの事は黙っていろと。
お義父さんに心配かけたくはないしそれより…何よりもお前の体が大事だからって…。
体…え?晴美さんもしかして…。
ええ。
5か月に入りました。
そう。
話ってなんですか?一体どういうつもり?あの盗作記事は何よ。
知らないよ。
とぼけないで。
笹木っていう記者が勝手にやった事です。
そんな話信じられないわ。
安心してください。
俺は認めませんから。
あなたがあのスケッチブックの絵をもとに絵を描いたなんて。
あなたが自分の身を守りたいように俺にも守りたいものはあるんです。
でもあの記者を殺すなんて…あなたどうかしてる。
殺したのは私じゃないわ。
あなたでしょう?赤い油絵と青い水彩画一見すると同じに見えませんがよく見ると構図が全く同じです。
そうだな。
二宮藤子の画風はその受賞作品だけ違うそうです。
やっぱり盗作は事実なんでしょう。
盗作された側については?
(牛久保)H.Aというイニシャル以外はわかっていません。
その件に関しまして…これがその記事に出ていた盗作の証拠の写真です。
笹木まどかのデスクにありました。
これか消えたというスケッチブックは。
はい。
昨夜何者かが…。
となるとやはり事故ではなく殺しだなあ。
ええ。
犯人の目的はスケッチブック。
殺害動機は27年前の盗作疑惑にある事は間違いありません。
怪しいのは二宮藤子だな。
とにかく現場周辺の聞き込みと目撃者探し並びに二宮藤子の周辺を探ってくれ。
(一同)はい!新太郎。
ん?周辺の聞き込みだよ。
(携帯電話)あっちょっと…すいませんちょっと。
あっちょっとすいません…。
だから仕事中に電話しないでって…。
え!?秀雄のスケッチブック?ええ。
このスケッチブックは確かに私のものです。
ああはい。
では27年前に二宮藤子さんに盗作された事を認めるんですね?いえ…盗作などされてません。
はい?単なる偶然です。
それを家内が勘違いしてこんな騒ぎになってしまい誠に申し訳ありません。
いやあの…立花さん。
どうして嘘をつくんです?嘘なんかじゃありません。
人が一人死んでるんです。
正直に答えてください。
私は何も知りません。
(牛久保)昨夜12時以降どちらにいらっしゃいましたか?
(秀雄)家で寝てました。
家内に聞いて頂ければわかります。
すいません展示会のお客さんが待ってらっしゃいます。
そろそろいいでしょうか?またお聞きする事になると思います。
おかしいですよ。
盗作されたのに否定するなんて。
ああ。
それにしても先輩もやりにくいですよね。
なんで?立花秀雄って…。
あっ…あなた…。
おいちょっと美奈!ちょっと…。
あっ新ちゃん新ちゃん!ねえねえ秀雄さんなんだって?そんなに気になるの?そりゃ気になるわよ。
秀雄さんはさあ…。
何?初めての相手だったから?何?初めてって。
何がって…。
お前そんな事まで俺に言わせるの〜!?何?俺ね…今知ったんだけど立花秀雄って美奈の元彼で初体験の相手だったんだってね!初体験!?何言ってんの!?そんな事あるわけないじゃない!違う…。
何?えっ違うの?そりゃ確かに好きだったけどさ…。
ほらやっぱり!片思いよ!何騒いでるんですか!だって新ちゃんが…。
全くお客様の前で…。
(政子)すいません。
なんでもございませんので…。
品位あるびわ湖花街道で…それもお客様の前。
夫婦喧嘩をするなんて…許せません!
(2人)申し訳ありません!それも原因は…口にするのも恥ずかしいような事で…。
(2人)申し訳ありませんでした!ああ…わたくしもう死んでしまいたい…。
母さん…ごめん!死んでしまいたいなんて言わないでくれよ。
俺母さんには長生きしてもらいたいんだ。
新太郎…。
ありがとう。
私ね1つだけお願いが…。
何?僕に出来る事ならなんでもするよ。
警察を辞めて旅館継いでちょうだい。
出た。
あ…あれ〜?あれ〜?なんか俺急に腹痛くなってきちゃった…。
新太郎待ちなさい!いやあの…待てませ〜ん!いつもこうなんだから。
わたくしもそろそろお仕事に…。
まだ話は終わっていません!はい。
(小百合)失礼致します!大女将!あの困った事がございまして…あの…。
大津絵の藤娘ですね。
あのお客様が…。
これを絵師の立花さんにお返ししてください。
まさか返品だとは思わず受け取ってしまいました。
いかが致しましょう?困ったわねえ…。
あのどんなお客様でした?ああ207番地にお泊まりの五個荘からお越しのお客様です。
お名前は相沢千恵様。
ああ…。
あのこの方どこにいらっしゃるんでしょう?
(小百合)どう致しましょう?秀雄さんにお返しするっていうのもねえ…。
あっだったら館内で飾らせて頂きましょうか。
そうですね。
とにかくその絵は私が預かります。
秀雄さん晴美さんお疲れさまでした。
お疲れさまでした。
(秀雄)色々とありがとうございました。
おかげさまで無事に終わらせる事が出来ました。
盛況でよかったわねえ。
ただ取材の記者さんの事はちょっと残念だったけど。
怒ってる?美奈さんにスケッチブックの話をした事…。
怒ってないよ。
もう済んだ事はいいよ。
でも…。
俺が笹木さんを殺したとでも思ったか?そんな事思ってないわ。
冗談だよ。
もう重いものはいいから休めよ。
体に悪いから。
うん…。
二宮さんが盗作したという証拠品があるんです。
盗作?失礼な事言わないで。
(藤子)ハア…。
なんでこんな夜中に掃除しなくちゃいけないんだよ。
もう2時だよ?しょうがないでしょ。
お義母様から罰掃除の命令が出たんだから。
ったく誰だよ。
失恋話を初体験の話に変えちゃったの。
失恋?あのさ新ちゃん私はねピュアな片思いをしたの。
失恋なんてしてないのよ。
そこ間違えないでね。
同じだろ。
なんか言った?いや…。
あ〜もう美奈ちゃんアバウトだな〜!もうこういうのきちんときれいに並べなきゃ。
で捜査はどうなってるの?え?あ〜まあね怪しいのは二宮藤子なんだけど立花秀雄が盗作を否定してるのがどうも引っかかるんだよな…。
ねえ彼って美術部だったんだよね?うん最初は剣道部だったんだけど足を骨折して美術部になったのね。
でもさ…秀雄さん盗作されたんならなんで誰にも言わなかったんだろう?何か事情があった…。
それを今になって記者の笹木まどかに嗅ぎつけられた。
だから秀雄は口封じのためにまどかを殺害したんだ。
だからさ秀雄さんはそんな人じゃないんだって。
あっ!やっぱり秀雄の事好きなんだろう。
は?だからそうやってムキになってかばったりするんだよ。
ムキになってるの新ちゃんじゃない。
小さいな〜!小さいな俺…。
え?小さいよヤキモチなんかやいちゃってさ…。
えっヤキモチやいてんの?うんまあ。
ちょっとそれ…嬉しいじゃん。
嬉しいの?今さらヤキモチなんてちょっと嬉しいでしょう。
好かれてる?愛されてる?愛してるよ。
(2人の笑い声)あっ!えっ?そうだ。
私彦根の藤子さんのところに行ってみよう。
ちょっと…ええっ?だってさこの事件そもそも盗作騒ぎが原因でしょ。
藤子さん私になら本当の事話してくれるかもしれない。
だけどほら仕事どうすんだよ?母さんにまた怒られるぞ。
大丈夫なの。
ちょっとちょっとちょっと…。
お〜。
これこれこれ!雷公の太鼓釣り。
なんでこれが?これね雷除けのお守りなんだって。
雷除け…。
ふ〜ん母さんの雷ね。
そうそうそうそう。
これがあれば大丈夫。
よろしくね〜!似てない?母さんに。
あっ!
(藤子)美奈ちゃん。
あっ藤子さん。
話って何?藤子さん気を悪くしないでくださいね。
27年前秀雄さんのスケッチをもとに琵琶湖の絵を描いた…そうなんですか?美奈ちゃんまでそんな話を信じるの?信じたくありません。
だから確かめてるんです。
27年前っていえば私は京都の美術短大に通う学生だった。
画家になりたくてね…。
でも父は画家なんかとんでもないって私の見合い相手を決めてたわ。
だから美術展で大賞を取って父に見せつけたかった。
私には絵の才能がある。
画家として生きていけるんだって。
実際にそれを証明出来たんですね。
ええ。
私は自分の力で大賞を取ったの。
盗作だなんて濡れ衣だわ。
ごめんなさい。
あの…1つだけ伺っていいですか。
あの大賞を取った絵琵琶湖のどこで描いたんですか?随分前の事だから…。
どこだったかしら?新ちゃんお待たせ。
ねえ藤子さんどうだった?ううん…。
そう…ありがとう。
いいえ。
じゃあ行きましょうか。
うん行こう。
(平井)はいはいコーヒーが入ったよ。
先生にコーヒー淹れて頂くなんてすいません。
いいんだよ。
女房が死んでから飯だって自分で作ってるんだからお茶ぐらい。
えー!意外ですねえ。
先生が竹刀以外にお鍋持ってる姿なんてちょっと想像出来ないな。
おいおいおい。
いつまで私を剣道部の顧問だと思ってるんだ?もう教師を辞めて30年近く経つんだぞ。
私にとって平井先生はずーっと先生ですよ。
秀雄さんもそう思ってます。
あっ!ねえねえねえ。
秀雄さんのところねおめでたなんです。
今5か月!そうか…。
うん!秀雄が父親か…。
ええ。
先生ちょっとお伺いしたいんですけれども『琵琶湖新報』の盗作記事ってお読みになりましたか?ああ読んだが。
あの事件秀雄さんも関係してるみたいなんですよ。
えっ?その事で先生なんかご存じありませんかね?当時秀雄が足を骨折して美術部に転部した事ぐらいしか…。
ああそうですか…。
ハア…ここは落ち着くな〜。
昔とちっとも変わってない。
そうかな?うん。
時が止まってるみたいですね…。
もうじき止まる。
えっ?店を閉めようと思ってね。
えっ!?どうしてですか?時代に取り残されたよ…。
あっそうだ!最後の記念に2人の写真を撮ってあげよう。
ねっ!ねっ!さあさあさあ!え〜?いいからいいから。
こういうの結婚式以来じゃない?なんか緊張すんなあ。
ハア…もっとかわいい着物着てくればよかった〜。
俺も髪切ってくればよかった。
ああほんとだね…。
硬いな新太郎君…。
美奈ちゃんの肩に手を置いて。
えっ!?ここここ…。
そうそうそう。
いいよ。
はい笑って。
はい撮るよ!
(シャッター音)先生お邪魔しました。
楽しかった。
ああそうだ!先生あのですねえっと…あっこの琵琶湖どこかご存じありませんか?さあね…。
(携帯電話)教えてほしい事があるんだけど…。
先生でも場所がわからないんだ…。
ああ…。
あっところで平井先生どうして教師辞めたの?うん…。
実はね秀雄さんが関係してるの。
えっ?高校3年生の時…。
(美奈の声)放課後私と剣道部のマネジャーとで平井先生を探してたら…。
(秀雄)あんたみたいな奴偽善者っていうんだよ!お前のその捻じ曲がった根性をたたき直してやる!秀雄君…。
夏休みが開けて秀雄さん急に反抗的な態度を取るようになって先生の間で問題になってたの。
原因は?うん…。
お父さんの印刷工場がうまくいかなくなってうちの中がゴタゴタしてたみたい。
ふ〜ん…。
それで?平井先生ってね本当に親身になって生徒の事を思う先生だったの。
だから…事情はあったはず。
だけどねPTAが暴力教師だって騒いじゃって。
(美奈の声)先生責任を取って教師を辞めたの。
先生…。
先生!
(美奈の声)秀雄さんその事をすごく気にしてて…。
でもね平井先生どの道教師を辞めて実家の写真館を継ぐつもりだったから気にするなって…。
いい先生だな。
うん…。
平井先生には教師を続けてほしかったな…。
(携帯電話)あっ藤子さん。
えっ?もしもし。
琵琶湖を描いた場所なんだけど思い出したわ。
あっ!ここだ!うん…。
藤子さんの言うとおり盗作はなかったのかしらね。
よし…。
あっ!
(シャッター音)バラ…?写真が撮影されたのは…ここ。
地元の人間しか行かないような場所です。
新太郎。
はい。
奇妙な事がわかった。
なんですか?変死体!?どういう事?ん?二宮藤子が写生をしたっていうあの場所はね27年前の6月に五個荘の女子高生が小舟の中で変死体で見つかった場所なんだよ。
名前は…相沢緋沙子。
17歳。
口から血を流していて最初は他殺じゃないかって。
でも自殺だった。
自殺…。
はい手を休めない休めない。
生まれつき心臓が悪くてね入退院を繰り返してたらしいんだ。
でそれを悲観して毒物を飲んだ。
毒物…。
はいはい手を休めない休めない。
ね〜。
ねえはいはいはい。
だからね親がそれが外に漏れないようにって圧力かかったんだよ。
五個荘っていったら近江八幡からも近いわよね。
うん。
まあそれとその27年前っていうのが気になるんだけどな。
気になるね…。
新ちゃん。
ん?一度整理してみよう!整理ですか?その方がいいです!うん!よし…。
なんか捜査会議みたいだなあ。
よしだったら…。
わっ!わおわお!ねえねえなんでこういうの持ってるの?資料写真は肌身離さず。
敏腕刑事の鉄則。
フフッ敏腕刑事?嘘!見えない…。
あっいや…。
見えないの…。
いやそんな事は…。
(小百合)ボス!始めましょう。
ボス?…よし。
貼って。
はい。
えーこのスケッチブックに描かれていた琵琶湖の絵には1984年5月2日の日付が記入されています。
相沢緋沙子さんという女子高生が自殺をしたのが6月。
二宮藤子さんが『日本文化美術展』に応募したのが8月。
そして大賞を受賞したのが9月ですね。
で…秀雄が剣道部から美術部へ移ったのが4月と。
あー二宮藤子相沢緋沙子立花秀雄…えー旧姓秋本秀雄。
この3人に接点があるかだよね…。
ですね。
ですね。
ああっ!あっ…相沢緋沙子。
ヒサコアイザワ。
イニシャルにすると…H.A。
旧姓の秀雄さんのイニシャルと同じ…。
ほんとだ!ああ…。
ねえひょっとしてこのスケッチブックは秀雄さんのものではなくて相沢緋沙子さんのものだった。
そう考えると…。
ねえそうすると27年間秀雄が盗作の件を訴えずに黙っていた理由がつく!藤子さんが盗作したのは秀雄さんのではなくて相沢緋沙子さんの絵だった…。
そういう事!?あっねえねえねえ。
でもさどういういきさつでその緋沙子のスケッチブックが秀雄に渡ったのかな?ねえねえちょっと待って。
相沢さんって…。
あのこの方どこにいらっしゃるんでしょう?あっ!あっあっあっ!なんだよ大きい声出して…。
ちょっと…!おいどこ行くんだよ?おい美奈!ねえねえ今の何の話?えーっ!?えー…あったあった。
まどかさんの事件があった日の宿泊者名簿。
あった。
ん?「相沢千恵五個荘西山町」…。
おい…自殺した相沢緋沙子と同じ住所!この方緋沙子さんのお母様よ!そう…。
うん…。
秀雄さんと知り合いみたいで藤娘の絵を購入なさったの。
でもね結局返品されて館内に飾ろうという事になってお義母様が預かってる。
母さんが?うん。
藤娘の絵?ええ。
お客様が秀雄さんに返すようにっておっしゃったあの絵です。
ああ…あれね。
はい。
あれ〜?なんだよ母さん。
ちゃっかり自分の部屋に飾っちゃって…。
芸術的価値のあるものはそれを理解するわたくしの部屋に置くのが一番です。
とかなんとか言っちゃって。
じゃああなたこの蓮如上人の書かれたお言葉意味わかりますか?蓮如上人?「朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり」あー…。
この世は無常で人の生死は予測出来ない。
そういう意味ですよ。
ははあ。
へえ。
この言葉って藤娘の絵にはよく書かれるものなんですか?見た事ないわねえ。
はあ…。
あっねえ新ちゃん。
ん?この言葉相沢さん本人が書いたんじゃない?だってね売り絵にはこんな言葉書かれてなかったわよ。
ハッ!じゃあ…こっこれって…殺人予告じゃない?
(2人)ええっ!?いい?藤娘は…藤子だよ。
相沢千恵は娘の絵が盗作された事を新聞で知り…。
そうじゃなきゃ秀雄に返してほしいなんて言わないだろう。
ええ?殺人予告ならそれ藤子さんに送るんじゃない?ああ…。
うんまあ…うんそうね。
うん。
あのねでもねう〜んと…娘のスケッチブックを秀雄が持っていてつまり秀雄も盗作の共犯者だって事だよ。
え〜そうかな?あのねそうだよ。
うん。
ああ…これもしかすると連続殺人事件になるかもしれない。
(2人)連続殺人!?うん。
笹木まどかの次は二宮藤子。
事の発端は27年前の相沢緋沙子の死と盗作。
よーし。
明日にでも…。
その件について調べてちょうだい美奈さん。
(新太郎・美奈)えっ!?わっ私!?新太郎の警部補昇進のために!ちょっと…母さんそれ何言ってるの?だって昇進するためには手柄を挙げなきゃいけないでしょ。
あなたには無理だから…。
美奈さんお願いします。
無理ってね息子を無能呼ばわりするなよ!わかりました!新太郎さん昇進のためにわたくし全力で事件に臨みます!どうぞよろしくお願いを致します。
承知しました。
おい…。
あのスケッチブックのおかげで私がどれほど迷惑かけられてるか。
盗作だなんて…とんでもないデタラメよ。
わかりました。
では明日。
だからなんで夫の仕事に妻が同伴するんだよ。
ちょっと…新ちゃんのためでしょ。
お義母様は新ちゃんに刑事を辞めて旅館を継いでほしいと思ってるの。
まあだけど新ちゃんが辞めないならせめて昇進をって。
俺はね昇進なんて別に望んでないの。
えっ!?そうなの?ああ。
あそう。
まあそうかもしんないけどさ昇進しないんだったら旅館を継ぎなさい!ってもっとうるさく言われちゃうわよね。
それは困る。
困るわよね。
ねえねえだから?美奈さんよろしくお願いします。
よしっ!よしよし!頑張ろう。
はい。
はい…。
はい!あっここよ。
こんにちは。
先日はどうも。
花街道の…。
若女将のご主人が刑事さんだったとは。
あの…早速なんですが27年前にお亡くなりになった娘さんの事でいくつか質問が…。
緋沙子の事で?ええ。
ここに「H.A」とあります。
これは緋沙子さんのスケッチブックですね?いいえ。
まるで見覚えがございません。
ではあの…。
これは緋沙子さんが描いた琵琶湖の絵。
違いますか?娘に絵の趣味はありませんでした。
あの…失礼ですが絵師の立花秀雄さんとはどういうご関係ですか?秀雄君は緋沙子と同じ病院に入院していたんです。
(相沢緋沙子)秀雄君も描いてみたら?
(秀雄)いいよ。
(千恵の声)緋沙子にとって最初で最後の恋。
その相手が秀雄君でした。
それがあんな事に…。
秀雄君の方も緋沙子の事を思っていてくださったようで…。
あの…緋沙子さんは本当に自殺だったんでしょうか?そうは思いたくありませんが…。
あの日大津絵の展示会にはどうして?久しぶりに秀雄君にお会いしたくて。
それにお礼を言いに。
毎年緋沙子の命日には墓前に花を供えてもらっておりますから。
秀雄さんに藤娘の絵を返してほしいとおっしゃったのはなぜなんでしょうか?なんの事でしょう?私はそのような事申しておりません。
(藤子)えっ?スケッチブックを?わかったわ。
相沢千恵が嘘を?はい殿山警部。
犯人は相沢千恵に間違いありません。
えっ?相沢千恵は娘の作品が27年前にこの二宮藤子と立花…旧姓秋本秀雄によって盗作されたのを記者の笹木まどかから聞いたんです。
そして復讐を計画した。
ああそうそう。
その復讐の証拠品がこれです。
藤娘の大津絵じゃないか。
藤子への殺人予告です。
はあ?藤娘。
藤子。
フフッ…。
この横に描かれてるこの文字がですね…。
いや仮にそうだとしてもだ。
なぜ笹木まどかを殺す必要があるんだ?それは盗作の証拠品であるスケッチブックを奪い返すためですよ。
そんな短絡的な理由で殺人を犯すか?いや…。
いや…あ…ありえます。
これは警部きっとですね連続殺人事件に発展する可能性が…。
新太郎いいか?お前の短所はその思い込みの激しいところだ。
いやしかし警部…。
そして刑事としての致命的な短所はそれをコロッと覆すところだ。
わかるだろう?致命的って…ダメじゃん。
平井先生誕生日おめでとうございます。
(美奈・晴美)おめでとうございます。
(平井)ありがとう。
あっ…。
あー美味しい。
これね僕たちからプレゼントです。
あっありがとうね。
どうもありがとう。
はいそしてわたくしからはお花〜。
わぁ〜。
そしてびわ湖花街道のお食事券です。
またいらっしゃって頂きたくて。
うわぁ〜こんな豪華なものありがとう。
おめでとうございます。
そうだ。
これは私から秀雄に。
俺に?いいもんだろ?フィルムの白黒写真ってのは。
ありがとうございます。
わぁ〜いい写真ね。
ええ!ねえ。
ああ美奈ちゃんもういいもういい。
ああ…。
失礼致します。
びわ湖花街道自慢の近江牛すき焼き鍋をお持ち致しました。
今宵鍋奉行を仰せつかりましたのはわたくし仲居頭の小百合。
人呼んで霜降りの小百合。
手伝いの梅子です。
どうぞよろしく…。
(梅子・小百合)お願い致します。
このざらめが決め手でございます。
うわぁ〜美味しそう!たくさん召し上がってくださいね。
先生お取りします。
まだ早い!えっ?あと10秒お待ちください。
987654321。
いただきまーす!え?んっ!結構でございます。
どうぞ!どうぞ…。
早く!すみませんでした。
にぎやかな鍋奉行で。
いやさすが霜降りの小百合さん。
なかなかの異名だけあって美味しかった。
ええ。
ねえプロの味付けは違いますね。
ありがとうございます。
本人にも伝えておきますね。
こんばんは。
おっ新太郎君。
僕も仲間に入れてもらっていいですか?おっいいよ。
どうぞ。
ありがとうございます。
遠回しな言い方はやめて率直に言ったらどうですか?俺への聞き込みだって。
秀雄さん!いいんですか?ここで聞き込みをしても。
新ちゃんやめて。
いいんだよ。
そうおっしゃるなら…。
今日五個荘の相沢さんにお会いして娘さんの話を聞いてきました。
あなたの持っていたスケッチブックは相沢さんのお嬢さん緋沙子さんのものですね?そうです。
あれは緋沙子のスケッチブックです。
それを二宮藤子さんが盗作した。
はぁ…。
俺が27年間その事を黙っていたのは緋沙子との約束があったからです。
私もう長くないと思う。
緋沙子…。
だから秀雄さんにお願いがあるの。
その絵を油絵にしてほしいの。
俺が?いいよ。
約束する。
(秀雄の声)その翌日緋沙子は自ら命を絶ちました。
誰もいない静かな琵琶湖が好き。
そう言って描いた絵と同じ光景の中で…。
俺は緋沙子との約束を守ろうと…。
(秀雄の声)でも思うように描けなかった。
それで以前美奈ちゃんに紹介してもらった藤子さんが美大生だった事を思い出して。
(藤子)どんな絵?いいわよ。
どう描いたらいいか教えてあげる。
だからちょっとこの絵を預からせて。
一週間後に返してもらったけどちょうどその頃家がゴタゴタして…。
俺は絵を描いているどころじゃなくなった。
9月になって藤子さんから連絡が…。
大賞を!?ええ。
(秀雄の声)その時まで知らなかった。
藤子さんが緋沙子の絵を盗作して勝手に『日本文化美術展』に応募していたなんて…。
すると彼女は…。
黙っていてくれない?緋沙子さんの絵をもとにした事。
そんな…それじゃ緋沙子が可哀想だ。
秀雄君。
大賞作品は日本全国を展示して回るの。
多くの人に見てもらいたくないの?その方が緋沙子さんも本望なんじゃない?そう説得されて…。
だから…。
秀雄もういい。
奥さんの前でそんな話をするんじゃない。
ごめん晴美。
ううん。
でもこれだけは信じてくれ。
俺は殺人事件とは無関係だ。
じゃあ今日は本当にありがとう。
お気をつけて。
ありがとうございました。
立花秀雄の言ってる事が本当ならやっぱり相沢千恵は嘘をついていた事になる。
うん。
ねえそのスケッチブックって今誰が持ってるのかしら?それを持ってるのが笹木まどかを殺した犯人だよ。
(サイレン)警部二宮藤子です。
わかってるよ。
スケッチブック。
って事は藤子が笹木まどか殺しを苦に自殺した。
おいここは相沢緋沙子が自殺した場所だったな。
そうです。
だから…だからこの場所選んだんですよ。
懺悔です。
懺悔。
やっぱり藤子が犯人だったんだ。
ちょっと待て。
やっぱりって新太郎お前…。
犯人は相沢千恵だと言い張っていたじゃないか。
あれそうでしたっけ?何とぼけてんだよ!あれ?ちょっと警部。
何?これなんのシミでしょう?え?えっ!藤子さんが自殺!?「ああ」えー嘘嘘。
なんで?ごめん。
捜査会議が始まる。
またあとで。
美奈さん今藤子さんが自殺って…。
はい…。
新ちゃんから電話が…。
すぐ行ってさしあげなさい。
あなたにとってはお姉さん代わりのような人だったんでしょ?はい。
さあ早く。
仕事はいいから。
さあ…。
え…。
早く行きなさい。
すいません。
あっ…。
藤子さん…。
美奈。
信じられない。
藤子さんが自殺だなんて…。
いやそれがね自殺じゃなかったんだ。
えっ?死亡推定時刻は昨日の夜7時から9時の間。
死因は頸部圧迫による窒息死。
でもね首には2種類のひもで絞められた痕があったんだ。
しかも体内からは睡眠薬も検出されて…。
えっ!じゃあ睡眠薬で眠らされて殺されたって事?ああ。
えー…。
犯人は立花秀雄だ。
えっ!?秀雄は大津絵の展示会があった日まどかがスケッチブックを持っていたのを知り…。
(足音)
(まどか)あーっ!笹木さん!でも秀雄にとって想定外だったのはまどか殺害の翌朝朝刊に盗作記事が出た事。
だってそれが公になって騒ぎになっちゃったからね。
だから逆にそれを利用して二宮藤子を殺害し…。
自殺と見せかけてまどか殺しの罪を被せた。
信じられない。
秀雄さんが犯人だなんて。
いや。
秀雄は五代目松山を継ぐ予定だし暮れには子どもも生まれる。
家族を守りたい一心でって動機は十分だよ。
新ちゃん!ん?肝心な事忘れてる。
秀雄さんは昨日の夜花街道にいたじゃない。
平井先生の誕生日会で。
新ちゃんも私も一緒にいた。
完璧なアリバイがあります。
あーそうだよね。
秀雄さんは犯人じゃありません。
そうなると犯人は…。
やっぱり相沢千恵だ。
はあ?昨日の夜二宮藤子さんに電話をしましたね。
二宮さんのご家族の方があなたからの電話を取り次いだって話してるんですけど。
確認の電話です。
夜7時に会う約束をしてたものですから。
でも二宮さんは来ませんでした。
ほう…。
どこで会う約束を?大津の花噴水です。
(千恵の声)7時から8時まで待って二宮さんは来ませんでした。
ですからそのあと9時頃まですぐ近くのレストランで食事を。
どうして会う事に?お話ししたくありません。
私警察を信用してませんから。
どういう事ですか?27年前警察は詳しい捜査も説明もなく娘の死を自殺と断定しました。
私は今でもその事が納得出来ないんです。
お嬢さんの死は他殺だと?わかりませんがでも盗作事件に何かしら関係している事は確かなんです。
ではあのスケッチブックがお嬢さんのものである事は認められるんですね?黙秘ですか?もうお話しする事は何もありません。
結局相沢千恵には完璧なアリバイがあってシロだった。
えっ完璧なアリバイなの?ああ。
犯行時間の7時から8時の間びわこ花噴水の前にいるのを出店の主人そのあと1時間をレストランの店員が目撃してんだよ。
あーじゃあやっぱりあの藤娘の絵は殺人予告じゃなかったんだ。
まあねえ。
へぇーじゃあ犯人は一体誰なんだろう?んーやっぱり秀雄だな。
はあ?もう新ちゃんいい加減にしてよ。
犯人は藤子さんだ。
いや相沢千恵さんだ。
やっぱり秀雄さんだってわけわかんないんだけど。
秀雄で決まりなの!はあ?秀雄秀雄秀雄がなんですか?梅子片付けなさい。
もう!だからさ秀雄さんにも完璧なアリバイがあるわけよ。
7時から9時の間この花街道にいて一歩も外に出てないの。
どうやって藤子さん殺すのよ?何かアリバイトリックがあるんだよ。
その…例えば遠隔操作で殺したとかな。
はぁー遠隔操作いいわね〜。
遠隔操作で私もこの部屋片付けてほしいわ。
私寝転びながら遠隔操作ピッピッピッて…。
若女将の美奈片付けアバウト!ハハッ敏腕刑事の新ちゃん推理がアバウト。
いらっしゃいませ。
もうご存じよね?二宮藤子さんが殺された事。
やっぱり27年前の盗作はあなたが絡んでいたのね。
だから毎年緋沙子の命日には緋色のバラを供えてるんでしょ?ねえ。
緋沙子は自殺じゃなくてあなたに殺されたんじゃないの?二宮藤子殺しに関して動機があるのは立花秀雄と相沢千恵だがこの両者には完璧なアリバイがある。
新太郎。
はい。
立花秀雄は平井写真館の店主平井次郎の誕生会に出席していました。
7時から9時までの間は外へは一歩も出ていない事を私の妻中川美奈が確認しています。
一方の相沢千恵ですが7時に二宮藤子と会う約束をしていたようです。
ところが藤子は現れず8時までその場にいてその後9時までレストランで食事をしていた事が確認されています。
立花秀雄も相沢千恵も完璧すぎるアリバイが気になるな。
はい。
あなた昼間来た人って…。
お前には関係ないよ。
誰が藤子さんを…。
美奈さん業者さんがお見えになりました。
業者さん?いやねもう忘れちゃったの?客室を改装する件です。
あー!バリアフリーの。
もういいから早く行きましょう。
はい。
高齢者の方が少しでも使いやすいように改善したいと思っております。
例えばボタン1つでなんでも出来るような。
ではこちらのドアを自動ドアに取り替えられてはいかがでしょう?リモコンで開け閉めが操作出来ます。
へぇー。
あらタイマー付きなのね。
はい。
タイマー…タイマー!?タイマーってお義母様なんですか?いやあねあなたなんにも聞いてないの?聞いてませんでした。
申し訳ありません。
リモコンの自動ドアの話です。
はい。
タイマーをセットしておけば自動で開け閉めが出来るんですって。
それって遠隔操作じゃないですか!?ちょちょちょ…。
なぁに?えっ?ちょっとちょっと…!小百合さん早い!早過ぎ!
(小百合)よいしょよいしょよいしょよっこらしょっと。
はいはい…。
政子ちゃんはい。
はい。
よし。
さあ…。
準備完了です。
よーしじゃあ母さんタイマーを一番その短い時間にセットして。
はい。
政子ちゃん手伝おうか?大丈夫!私にだって出来るわよ。
あそう。
あの人形小百合さんにそっくりっすよね。
(梅子)下膨れといい首の太さといい。
ちょっと失礼な事言わないでくれる?この近江美人に向かって。
お…近江美人!?ええわたくし近江米で育った純粋な近江美人なの。
育ち過ぎだっつーの。
なんて?あっお美しゅうございます。
そうでしょう?そっくりだろ。
54321ゼロ。
おっとっとっと!出来た!遠隔操作。
若女将お見事!警部これで相沢千恵と立花秀雄のアリバイが崩れました。
となると犯人を特定するには物証しかないな。
ええ。
(携帯電話)はいもしもし。
鑑識から報告書が来ました。
二宮藤子の遺体に付着していた茶色いシミの分析結果です。
うんそれで?それがですね…。
うんわかった。
犯人がわかりました。
えっ?ええっ…!ごめんください。
あ美奈ちゃん。
秀雄さん悪いんだけど私と一緒に来てくれる?晴美さんも。
今日はなんでしょう?一連の事件の犯人がわかりました。
ご足労願えますか。
美奈ちゃんなんで先生と相沢さんが?お二人にも聞いて頂きたくて。
実は藤子さんを殺害した犯人がわかりました。
実は藤子さんを殺害した犯人がわかりました。
この中に犯人が?犯人は27年前藤子さんが盗作したという証拠品のスケッチブックを奪うために琵琶湖新報の笹木まどかさんを殺害したんです。
そしてその罪を藤子さんに被せるために自殺を偽装して藤子さんを殺害した。
待ってください!秀雄さんと私はアリバイがあります。
ええ。
晴美さんのおっしゃるとおりここにいらっしゃる皆さんにはアリバイがあります。
でもそれが成立しなくなったんです。
遠隔操作で殺害出来る事がわかったんです。
どういう事なんだ?犯人はタイマーをセットし…。
電動カーテンレールを使って藤子さんを殺害したんです。
無人の犯行現場で。
犯人の決め手となったのは藤子さんの遺体の衣服に付着していた茶色いシミ。
鑑識の分析の結果それがなんなのか判明し犯人に結びつきました。
ですが殺害動機がいまひとつわかりません。
ねえ秀雄さん何を隠してるの?27年前本当は何があったの?ちょっと美奈さん秀雄さんは犯人じゃありません!ええ晴美さん秀雄さんは犯人じゃないわ。
じゃあ誰が犯人なんですか?犯人は…。
平井先生です。
茶色いシミは酸化したフィルムの現像液でした。
恐らく何かの拍子に藤子さんの衣服に付着したんでしょう。
殺害現場は…先生の写真館ですね?私思い出したんです。
先生が私たちの写真を撮ってくださった時…。
(美奈の声)電動カーテンがあった事を。
そしてそのあと…。
先生あのですねえっと…あっこの琵琶湖どこかご存じありませんか?さあ…。
写真をされる先生なら琵琶湖の事は知り尽くしてるはずです。
先生全てを話してください!ああ…。
私が二宮藤子と笹木まどかを殺した。
先生…。
どうして先生が…。
先生俺…。
秀雄!先生の誕生日の席に俺が話した事は全て事実です。
だけど一つだけ隠していた事がある。
それは緋沙子の絵を藤子さんに金で売った事。
お願い!私が緋沙子さんの絵をもとにして描いた事黙っていて。
そんな…。
賞金の500万円秀雄君にあげるから。
それがずっと後ろめたかった。
すみませんでした。
どうしてそんな事を…。
秀雄はその金を実家の借金返済にあてたんだ。
借金?親父さんの印刷工場が倒産しかかってた。
先生は盗作の件をご存じだったんですか?ああ。
新聞で見た大賞作品が…。
(平井の声)前に見た絵とそっくりだった。
そして秀雄を呼び出して聞いてみたら初めは黙り込んでたが何もかも話してくれたよ。
お前のした事は間違ってる。
泥棒と同じだ。
友達のしかも亡くなった友達の遺作を売るなんて人として人間として恥ずかしいと思わないのか?秀雄!うんざりだ!なんだと?うんざりなんだよ!偉そうにいつでも説教ばっかりたれて!あんたみたいな奴偽善者っていうんだよ!お前のその捻じ曲がった根性をたたき直してやる!コラ!なんだよ!
(平井)コラッ秀雄!金を返してこい!嫌だ!秀雄!返すもんか!父さんも母さんもやっと取立て屋から解放されたんだ!金は返すもんか!
(秀雄)返すもんか!返すもんか…返すもんか…!私はなんにも言う事が出来なかった。
秀雄のした事は悪い事だ。
だがその秀雄を正す事が出来なかった私はもっと悪い。
教師失格。
だから学校も辞めた。
先生どうして笹木まどかさんを…?27年前の盗作疑惑を調べていた彼女は秀雄の件で何か知ってるんじゃないかって私を訪ねてきた。
無論私は何も知らないと答えたが…。
(平井の声)大津絵の展示会で笹木まどかを見て怖くなった。
もしや盗作の話を2人にぶつけるんじゃないか。
だからあの夜…。
(車のクラクション)例の件で話があるんだ。
乗ってください。
さあ。
取材をやめろ?冗談じゃないわよ。
頼む。
秀雄は近々五代目松山を継ぐ。
今騒ぎになって世間にたたかれたら…。
なっ?秀雄にも店にも傷がついてしまう。
なあ頼む…。
(まどか)離してよ!
(平井)聞いてくれ!
(悲鳴)笹木さん!警察へ行く事は出来なかった。
このまま私が黙ってれば彼女は事故死として処理され27年前の秘密も守る事が出来る。
そう思った。
だが翌朝…。
記事が出て最初に疑われるのは二宮藤子だってわかってた。
やがて秀雄のところにも警察が行くだろう。
もしかしたら相沢緋沙子という女子高生の事まで調べ上げるかもしれない。
不安だった。
だがそんな時…。
そうそうそうそう秀雄さんのところねおめでたなんです。
えっ?今5か月!そうか…。
嬉しかったよ。
あの秀雄が父親になるって聞いてね。
あいつにもついに守らなきゃいけない家族が出来た。
決心がついた。
私があいつを守ってやろう。
そう思った。
えっ?スケッチブックを?二宮さんあなた相沢緋沙子のスケッチブック捜してるんですよね?実は私が持ってるんですが。
あぁ…。
(平井の声)睡眠薬入りのコーヒーを…。
(平井の声)だが手袋に現像液がついてたとは…。
美奈ちゃんもうちょっと。
あは〜い。
もうね野菜もいいですよ。
(平井の声)あとは美奈ちゃんの推察どおり。
う…うう…。
罪深い事はよくわかってる。
だがどうしても秀雄の人生を守ってやりたかった。
大津絵の五代目となり父親になる秀雄の人生を。
俺のせいにしないでくれ!先生それは思い上がりだよ。
俺のためだって言いながら自分のした事を納得して満足してる。
そんなのありがた迷惑でしかないよ。
いつまでも俺の事を生徒扱いしておかしいよ!何が「守ってやりたかった」だよ!そんなの時代遅れだよ。
そうだな。
私の身勝手な思い上がりだ。
辞めて27年も経つのにまだ教師の気分でいる。
教師への…未練かもしれん。
27年前先生は私たち生徒一人一人に本当に親身になってくださいました。
私ね先生その事は今も感謝してます。
笹木まどか及び二宮藤子殺害容疑で逮捕します。
お前のせいじゃない。
先生!あんたの人生一体なんだったんだよ!バカな生徒のために二度も人生棒に振って…。
あんた大バカだよ!俺なんかのために…。
俺なんかのために…!
(千恵)「朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり」。
娘の自殺を認めたくなかったんです。
だからあなたが緋沙子の死にかかわってるんじゃないかって…。
今になってやっと緋沙子の気持ちがわかりました。
あの子あなたと一緒に描いたこの絵をこの世に残していきたかったんですね。
でももう娘の事は忘れてください。
あなたは娘に十分償ってくださいました。
娘も許してくれてるはずです。
お元気で。
こういう写真もいいもんねぇ。
ああ。
でも結婚した頃より老けたわよねぇやっぱり私は。
そんな事ないよ。
美奈は昔も今も変わらずきれいだ。
本当?ありがとう新ちゃん…。
美奈ちゃん…。
(政子)美奈さんそろそろ時間ですよ。
あらっ記念写真?ええ。
なかなかいいじゃないの。
平井先生が撮ってくれたんだ。
平井先生…。
平井先生の取った行動は間違っていたけれどでも情のあるいい先生だったわね。
ええ。
あところで新太郎昇進の話どうなったの?美奈さんのおかげで手柄は挙がったんでしょ?いやあの…来年あたり昇進出来そうだよ。
まあよかったわ〜。
何口からでまかせ言ってんの。
美奈さんちょっと携帯貸してくれる?殿山さんに電話するから。
ああ私今ちょっと持ってない…。
あ僕持ってるよ。
ええーっ!?あっお義母様あの宴会のごあいさつの時間です。
参りましょう。
じゃああとでかけるか。
行きましょう。
はいいってらっしゃい。
あなたお茶。
ああありがとう。
(政子)本日はびわ湖花街道をご利用頂きまして誠にありがとうございます。
わたくし大女将の中川政子でございます。
若女将の中川美奈でございます。
日頃のお疲れを癒やして頂きたくわたくしども従業員一同心を込めてサービスをさせて頂きます。
どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ。
(拍手)
(小百合)みんな急いでね!ちょっと手伝ってあげてちょうだい!何回ってんの?何回ってんの?あはい!
歴史情緒あふれる京都で2015/07/28(火) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
温泉若おかみの殺人推理[再][解][字]
滋賀おごと温泉〜盗まれた琵琶湖の謎!!疑惑の女流画家は遠隔操作で殺される!?
詳細情報
◇番組内容
大好評シリーズ第23弾!新聞記者殺人事件の背景には、有名画家の盗作疑惑と女子高生の変死事件が絡んでいた…!? 滋賀・おごと温泉を舞台に、若おかみが殺人トリックを暴く!!
◇出演者
東ちづる、羽場裕一、岡田茉莉子、若林豪、山村紅葉、鶴見辰吾、中島ひろ子、根本りつ子、下條アトム、高林由紀子 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
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