え〜アブソリュートポジションN157W542E768S350。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB0655129年82時47分54秒。
西暦変換しますと1589年5月9日14時7分。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー087350これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
コードナンバー087350。
1589年上野国。
身を隠すようにして山に分け入る女性たち。
彼女たちが帰る場所は既にない。
時は戦国。
敵軍からの総攻撃を受け命からがら城より脱出してきたのだ。
数時間前に起きた城攻めは壮絶であり正室お遥の方は城主の夫を失った
え〜現在私は時空を超えて1589年戦国時代にいます。
戦乱の真っただ中です。
数時間前壮絶な城攻めが行われました。
その城からかろうじて脱出した方々に密着しているところです。
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼女たちにとって私は宇宙人のような存在です。
彼女たちに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼女たちに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
逃亡中のつかの間の休息。
しかし安堵はできない
やめて。
どこに敵が潜んでいるか分からない。
むやみに火をたく事は危険すぎる
四郎右衛門。
暗闇の中夜を明かさなければならなかった。
夜明けを待って彼女たちは再び出発した。
先導していくのは原田四郎右衛門。
落城した城主の家臣である。
彼の任務は城主の妻お遥の方を安全な生まれ故郷の領地まで連れていく事。
絶命した城主はお遥の方の命を四郎右衛門に託したのだ
御方様にインタビューしたいと思います。
ちょっとよろしいでしょうか。
はい。
ですが城の方にも…
お遥の方に仕え行動を共にするのが侍女の吉乃
それだけを…。
同じくお遥の方に仕える侍女のお鶴
ビクンってしたかと思ったら…
すさまじい城攻め。
逃げるだけで精いっぱいだった彼女たち。
持ち物は僅かな食料と四郎右衛門が持つ鉄砲一丁だけであった。
目指す領地までは先が長い。
緊迫した情勢の中最悪の事態も考えなくてはいけない。
もしもの時に備え侍女たちは鉄砲の撃ち方を習う事になった
早合を取り出し…。
(四郎右衛門)再び火ぶたを開け引き金を引く。
いつでも発砲できるように火縄には常に火をともしておかなければならない。
鉄砲は1543年の伝来以来およそ10年間で日本全国に普及したという。
当初種子島で模倣した鉄砲がつくられた。
それにちなんで種子島または火縄銃と呼ばれた
いいですか?結構重いですねえ。
私はカメラを置き鉄砲を構えてみた。
その数のピークは戦国時代末期。
日本中におよそ20万丁あったと推定されている
この中に…。
早合とは弾丸と火薬を一緒に詰めた包みの事である。
火縄銃は撃つのに時間がかかる。
その装填をスムーズに行うために開発されたのが早合であった
これから山を越えようとしているところです。
彼女たちが向かう先はお遥の方が生まれた国。
身寄りを失った彼女にとって頼るべきは生まれ育った所しかなかった。
目的地までの最短距離となる道には敵軍が潜んでいる可能性がある。
かなり遠回りとなるが四郎右衛門はより安全な山越えルートを選択した。
だがこのあと緊急事態となった!
(銃声)
突然の発砲!
(銃声)
敵軍なのか賊なのか。
こちらに向かって発砲を繰り返している
(四郎右衛門)お前も下がれ。
今発砲が発砲がありましたね。
およそ50m先ほどでしょうか。
発砲がありました。
(銃声)
どこから撃ってきているのか分からない。
必死にカメラを回す。
山の斜面に人影を捉えた。
四郎右衛門が鉄砲を準備し応戦する
(銃声)
(銃声)
(銃声)
(銃声)
見事敵に命中。
…がその時だった!
ああっ!
敵は1人ではなかった。
今度は矢を放ってきた
御方様。
(吉乃)伏せて!
(悲鳴)
(お鶴)御方様…。
何?早く取って!吉乃。
吉乃が応戦しようと鉄砲に弾を込める
(お鶴)ああっ!
(吉乃)入れ…。
(銃声)
初めての発砲。
体に大きな衝撃が走る
お鶴。
お鶴!
敵の矢が容赦なく次々と飛んでくる
再び発砲。
だが慣れない鉄砲のためなかなか命中しない。
再度弾を込める吉乃
矢の合間を縫って照準を合わせる。
そして…
(銃声)
ついにその弾丸が敵の体をとらえた
四郎右衛門は即死だった
(お鶴の泣き声)お鶴手伝って。
手を貸して!足外して!
襲いかかってきたのは野伏だと思われた。
山や森などに隠れ追いはぎなどを行う武装した農民である。
戦国時代は武将たちが華やかに活躍するばかりではない。
合戦の背後には雑兵による略奪や暴行が横行していた。
非力な女性だけの道行きは常に危険と隣り合わせであった。
だが彼女たちに悲しんでいる暇はない
身を守るため奪った具足を身に着け武装する
(吉乃)先を急ぎましょう。
女性たちが最も恐れていたのは人取りであった。
戦の混乱に乗じて女性や子供が生け捕りにされる事が多かった。
捕まった人々は人身売買の対象となってしまう。
それを商売とする商人たちも存在し海外へ売られていく者も珍しくなかった
(吉乃)御方様?それに四郎右衛門殿が亡くなって…。
(吉乃)私たちだけで守るのよ御方様を。
何でいつも諦めるの。
生き延びなければいけないの!
(吉乃)お鶴。
吉乃。
(吉乃)何でございましょう?
(吉乃)御方様…。
しかし…。
御方様。
頼りにしていた四郎右衛門を亡くし彼女たちに絶望感が漂い始めていた。
先に進むにはあまりに過酷でつらいものであった。
そしてついに…
今皆さんが茂みの中に入っていきました。
恐らく自ら命を絶つ事を決めたのでしょうか。
これが戦国時代というものなんでしょうか。
つらいですね。
武士階級の多くの女性たちは懐剣と呼ばれる短い刀を持っていた
死ぬ事しか選択の余地がなくなった戦国の女性たち。
タイムスクープハンターは取材対象と必要以上に接触してはならない。
彼女たちの行動を止める事はできないのだ。
だが彼女たちに異変が起こる
(お遥の方の泣き声)何かあったんですか?
(吉乃)御殿の代で…
お遥の方のつわり。
それが彼女たちに自害を思いとどまらせた。
おなかに授かった新しい命。
生をつなぐため彼女たちは決心したのだ
3人は道なき道を進んでいく。
生きるためにひたすら突き進んだ
(雷鳴)
敵兵や人取りから逃れるため更に険しい森を通っていく。
…と突然一行が歩みを止めた
森の先に人影が見える。
刀を振りかざす武装した男。
戦に便乗して村で略奪を繰り返す雑兵と思われる。
村人だろうか。
命乞いをしているらしい。
そして…。
恐ろしい光景に身動きができなくなる。
その瞬間…。
気付かれたのか雑兵がこちらに向かってくる
慌てて逃げる!パニックだ
そして最悪の事態に陥る事となる
うそ…。
どうしよう!御方様。
御方様!捜しに行かなきゃ。
森の先にお遥の方が連れ去られていく姿を見つけた。
人取りである
もはや彼女たちに躊躇している時間はなかった
(お鶴)扉は開いてないし。
吉乃。
危ないわよ。
侍でしょ?
侍女の吉乃が姿勢を低くしながら小屋に近づいていく。
もしもの時に備えお鶴が発砲準備に入る
先ほど人取りでしょうか。
御方様が小屋に連れ去られました。
今吉乃さんが小屋に近づいてます。
これから御方様を救出するのでしょうか。
…がその時だった!背後から近づく別の兵士。
とっさにお鶴が引き金を引く。
だが不発!
(兵士)おいお前何者だ!?
雨のためか火縄銃の着火に失敗したらしい。
すぐに新しい火薬を仕込む
(銃声)
…がその時小屋から先程の雑兵が姿を現した。
お鶴が必死に鉄砲を構える。
そして…
(銃声)
こちらの発砲にひるんで雑兵が引き下がる
隙をついて吉乃が逃げてくる。
お鶴の銃口が敵をとらえる。
そして…
(銃声)
ところが次の瞬間
(銃声)
事態は更に緊迫した状況に。
小屋から雑兵が発砲してきた。
敵はよほど慣れているのかものすごい速さで弾を装填し撃ってくる
(銃声)敵からの攻撃が続いてます。
身動きできない状態です。
(銃声)
(お鶴)弾がないの!
(銃声)
(吉乃)あっ…。
(銃声)
発砲の合間を縫ってお鶴が飛び出す。
だが…
(銃声)
足を撃たれた
痛っ!
(銃声)
悪くなる一方だ
おい!聞いてんのかお前ら!どうしよう…。
こう着状態が続いてます。
御方様に刀が突きつけられてます。
緊迫した状況が続いてます。
絶体絶命の状況の中吉乃が動く。
僅かに残った1本だけの矢を手に小屋に近づいていく
敵の気配を探り矢を構え攻撃態勢に入る。
そして…
あ今出てきました。
御方様です。
救出されました!敵は矢にうたれたもようです。
吉乃の放った矢は見事敵に命中。
決死の救出作戦が成功した。
しかし…
うりゃあ!
(銃声)
危険地帯を離れたのだろうか。
山を越えると辺りは穏やかな空気に包まれていた
同行取材をしてから私は初めて彼女たちの笑顔を見た。
生き延びるためやむをえず銃を手にした。
だが彼女たちも普通の女性なのだ
林を抜けるとすばらしい景色の丘に出た
この先に見える鍬形山の麓に行けば目指す領地に入る。
彼女たちにやっと安堵の表情が見えた。
この先も同行したいという気持ちを抑え今回の取材を終える事にした
じゃあ皆さん私はこの辺で失礼します。
そうですか。
ではくれぐれもお気を付けてお帰り下さい。
元気な赤ちゃんが生まれますよう願ってます。
お世話になりました。
こちらこそお世話になりました。
それではまたどこかで。
お気を付けて。
この時代女性が戦ったという言い伝えが数多くある。
例えば1541年伊予国の鶴姫は討ち死にした兄に代わって出陣し敵軍を撃退したという。
他にも勇敢に敵に立ち向かった女性の例は多い。
しかしそこで共に戦ったであろう侍女や身分の低い女性たちの名前が記録に残っている事はない
以上コードナンバー087350アウトします。
2015/07/29(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「サバイバル!戦火の女たち」[字]
「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は戦国時代、城を攻め落とされ、逃げる女たちに密着取材、脱出行をドキュメント。
詳細情報
番組内容
今回の取材対象者は、鉄砲を手にして戦った女性たち。戦国時代において、戦うのは男性の役目だったが、戦争の混乱の中では女性たちも刀や鉄砲を携え、戦わざるをえない状況が発生した。ある小さな山城が敵の総攻撃で攻め落とされ、城主の正室・お遙(よう)の方が、侍女の吉乃とお鶴の2人を連れて城から脱出した。同行した家臣が敵方の不意打ちで倒れ、女3人だけの絶体絶命のピンチに! 生き残りをかけた脱出劇を追う。
出演者
【出演】要潤
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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