【コラム】不動産では火元だけに温もり…経済再生には限界=韓国(中央日報)
今回のプチバブルが形成された経緯がそこそこ細かく書かれていたのでピックアップしてみました。
たった1年間で大転換してしまったわけですが、そのタイムテーブルはこんな感じ。
・2014/07 不動産融資規制緩和
・2014/08 政策金利 2.5%→2.25%
・2014/10 政策金利 2.25%→2%(史上最低タイ)
・2015/03 政策金利 2%→1.75%(史上最低値)
・2015/03 家計負債ほぼ1100兆ウォンに
・2015/04 家計負債、この1ヶ月で約9000億円増加
・2015/06 政策金利 1.75%→1.5%(史上最低更新)
・2015/06 上半期だけで家計負債が33兆6000億ウォン増加(前年同期比4倍弱)
・2015/07 不動産融資 再規制へ
……わけが分からないよ。
記事中にあるように、短期的に経済を盛り上げるためには不動産ローンの緩和規制しかないということだったのですが。
その反動が危険すぎるのです、韓国では。
これまで3-5年ほどは元本返済をせずに利息だけを払い続けて、不動産価格が上昇したら売り抜けるという手段を執ってきたのです。投資の一環として、ですね。
かつては高い経済成長率があったのでできたことでした。
今回の不動産融資規制緩和でも、新規融資された不動産ローンの返済パターンは70-80%が利息のみ返済を選択しているとのことです。
これが規制強化で利息返済のみができる期間が1年だけになるとどうなるか。
多くの人間が不動産ローンを使わなくなります。つまり、不動産の需要が少なくなるのですね。
それでなくても人口ボーナスが枯渇するであろうこの1〜2年くらいから実需自体も少なくなるところへ、ダブルパンチで需要が枯れます。
今回の決定は突然だったので、好況だった需要をにらんで建設途中のものも多くあると思われます。相当なだぶつきが生じるでしょうね。
当然、不動産価格は下落する。
個人資産の7割が不動産、高齢者の資産に至っては9割が不動産であるという韓国では不動産価格の下落は経済の死を意味します。
詳しくはこちらのエントリを参照してください。
どうすべきだったかというと、そもそも不動産ローンの規制緩和をすべきじゃなかったのです。
するにしても一気に需要を喚起するのではなく、段階を踏んでじわじわとやっておけばよかったのですが。
まあ、それじゃ経済成長の数値を上げるという目的にはあわなかったんでしょうね。
いやしかし、どこかで見た風景ですこと。
崔ギョン煥(チェ・ギョンファン)経済副首相は就任前から熱かった。昨年7月の人事聴聞会でこのように話した。「真夏に冬服を着ている。住宅取り引き規制を正常化する。家計負債が少し増えるだろうが、貸し出し構造が改善されればリスクが減ることになるだろう」。すぐに行動が従った。就任するやいなや住宅担保認定比率(LTV)と総負債償還比率(DTI)規制をそれぞれ60%と70%に緩和した。簡単に言えば金融会社からお金を借りやすくさせた。つまずいた景気をさっと回復させる考えだった。
韓国銀行もやり込めた。表現は穏やかだった。「経済活性化のために韓国銀行金融通貨委員会が適切な決定をすると期待する」。本音では基準金利を下げろという意味だ。李柱烈(イ・ジュヨル)総裁率いる韓国銀行金融通貨委員会は最初はあたふたしたが、それなりに一貫性を見せた。金融通貨委員会の動きを細かく観察した市場ではこうした結論を出した。「崔副首相が下げろと言えば下げるだろう」。
基準金利は昨年中旬以降下がり続け現在1.5%だ。金融会社ではすばやく金を借りて行けと金庫の扉を開けた。韓国銀行は金利を下げ利子負担を減らしてくれた。市中には「金を借りて家を買え」という信号があふれた。
反響は大きかった。今年に入って6カ月でソウルのマンションは6万5000戸余りが取り引きされた。2009〜2014年の上半期基準平均取引量は3万2000戸だった。価格も高騰した。この6カ月間のソウルのマンション価格上昇幅は2.2%に上った。やはり過去6年間で最大の上昇だ。
このくらい焚き口に燃料を投じて火をつければ温もりは徐々に広がっていくのがこれまでの韓国経済の公式だった。いくらうまくいかなくても途中までは暖められた。不動産は景気浮揚効果が大きい業種だ。マンションを作れば左官からインテリアまで雇用効果が大きい。供給される各種資材の規模も大きい。短期間に景気を浮揚するために伝家の宝刀のように不動産のカードを切る理由だった。
1年が過ぎた。雰囲気は本当におかしい。火元から遠い側まで温もりは広がっている。ところがそれがすべてだ。これすらすぐに冷めそうで心配だ。崔副首相が就任した昨年7〜9月期から経済成長率は4四半期連続0%台で底を免れなかった。今年4〜6月期も0.3%にとどまったが、それでも建設投資が1.7%成長し持ち堪えた。民間消費は0.3%減少し、純輸出の成長寄与度は4四半期連続でマイナスを記録した。中東呼吸器症候群(MERS)の影響が大きかったがMERS以前の4〜5月にすでに鉱工業生産は減り始めており投資も低調だった。 (中略)
容易な道を選んだ副作用は深刻だ。不動産という甘いアメに酔った瞬間家計負債は1100兆ウォンを超えた。負債の堤防が崩れた。怖じ気づいたのか。突然急旋回した。1年で「むやみに金を借りるな」に急変した。
庶民は当惑する。崔副首相が誇る「取り引き活性化」の裏面には暗い影もにじんでいる。家を買った相当数は買いたくて買ったのではない。急騰する伝貰価格に押されやむを得ず金を借りた人たちだ。伝貰価格は依然として天井知らずに高騰する。来年からは金を借りるのも難しくなる。伝貰にも住めず住宅担保貸付を受けるのも難しくなれば選択はひとつしかない。「月貰」。月貰を払えば消費はさらに減る。生活はさらに苦しくなる。不動産の焚きつけが湿った燃料に転落するのは時間の問題だ。
(引用ここまで)
今回のプチバブルが形成された経緯がそこそこ細かく書かれていたのでピックアップしてみました。
たった1年間で大転換してしまったわけですが、そのタイムテーブルはこんな感じ。
・2014/07 不動産融資規制緩和
・2014/08 政策金利 2.5%→2.25%
・2014/10 政策金利 2.25%→2%(史上最低タイ)
・2015/03 政策金利 2%→1.75%(史上最低値)
・2015/03 家計負債ほぼ1100兆ウォンに
・2015/04 家計負債、この1ヶ月で約9000億円増加
・2015/06 政策金利 1.75%→1.5%(史上最低更新)
・2015/06 上半期だけで家計負債が33兆6000億ウォン増加(前年同期比4倍弱)
・2015/07 不動産融資 再規制へ
……わけが分からないよ。
記事中にあるように、短期的に経済を盛り上げるためには不動産ローンの緩和規制しかないということだったのですが。
その反動が危険すぎるのです、韓国では。
これまで3-5年ほどは元本返済をせずに利息だけを払い続けて、不動産価格が上昇したら売り抜けるという手段を執ってきたのです。投資の一環として、ですね。
かつては高い経済成長率があったのでできたことでした。
今回の不動産融資規制緩和でも、新規融資された不動産ローンの返済パターンは70-80%が利息のみ返済を選択しているとのことです。
これが規制強化で利息返済のみができる期間が1年だけになるとどうなるか。
多くの人間が不動産ローンを使わなくなります。つまり、不動産の需要が少なくなるのですね。
それでなくても人口ボーナスが枯渇するであろうこの1〜2年くらいから実需自体も少なくなるところへ、ダブルパンチで需要が枯れます。
今回の決定は突然だったので、好況だった需要をにらんで建設途中のものも多くあると思われます。相当なだぶつきが生じるでしょうね。
当然、不動産価格は下落する。
個人資産の7割が不動産、高齢者の資産に至っては9割が不動産であるという韓国では不動産価格の下落は経済の死を意味します。
詳しくはこちらのエントリを参照してください。
どうすべきだったかというと、そもそも不動産ローンの規制緩和をすべきじゃなかったのです。
するにしても一気に需要を喚起するのではなく、段階を踏んでじわじわとやっておけばよかったのですが。
まあ、それじゃ経済成長の数値を上げるという目的にはあわなかったんでしょうね。
いやしかし、どこかで見た風景ですこと。
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