実際のところ、介護人材はどれだけ不足するの?
需要と供給がアンバランスな「需給ギャップ」に悩まされている介護業界。後期高齢者人口が一気に増加する2025年、一体どれくらいの人材不足が見込まれるのでしょうか。
2025年には、全国で約40万人不足
厚生労働省の推計によると、必要とされる介護人材は253万人。それに対してこれからさまざまな施策によって実際に供給できる人材は215.2万人。つまり、37.7万人の人材が不足することになります。(『2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について』より)
単純に47都道府県で割り算をして考えると、各都道府県で8000人前後の人材が不足する計算になりますが…。実際は、都市部と地方部ではそれぞれ事情が変わってくるようです。
介護施設も人も増やせない「都市部」
2025年の東京都の高齢化率は25.2%。これだけ見ると、東京は全国平均の30%を下回るまだまだ若い街といえます。
ですが、東京をはじめとする首都圏は元々人口が多いのを忘れてはいけません。これからの10年間で首都圏の後期高齢者人口は175万人増加(『東京圏高齢化危機回避戦略』より)。それに伴い、今よりさらに80~90万人多くの医療・介護人材が必要になるのではとも言われています。
人件費も地価も高い都市部で、需要に見合うだけの介護施設を作り、人を雇うのは簡単ではありません。近場の埼玉や神奈川でも、東京からの利用者を受け入れることで次第に手いっぱいになっていきます。
高齢者人口は頭打ち or 減少する「地方部」
2025年には地方の高齢化もますます進んでいますから、当然介護需要も増えていくと思われますよね。
ですが都道府県別の「充足率(介護需要に対しどれだけ供給できるか)」からは少し興味深いデータが見えてきます。高知県や岩手県では、需要の上がるにも関わらず充足率は今とほとんど変わらない見込みです。青森県に至っては、むしろ今のほうが足りていないのです。
高齢化率は上がっても、高齢者人口は今とほとんど変わらないままか減少していく地方。自治体の存続が心配される一方で、介護サービス供給には余裕が出てくるようです。
「介護移住」は問題解決の糸口となるか?
近頃、都市圏の高齢者が介護を受けるために地方へ「介護移住」する動きがみられるようになってきました。
もちろん、「住み慣れた土地で十分な介護サービスを受ける」のがベスト。しかしこれからは、利用者がこんな選択を迫られる場面が増えてくるのかもしれません。
他人事ではない2025年問題。10年後に後悔しないよう、今から真剣に議論しておく必要があると言えます。