ガラパゴス化した「大御所」
07-30,2015
「日本の難民受け入れに関する誤解」というタイトルで吹浦氏が日本の難民制度について書いているので、それに対する簡単な反論を書きます。
彼の言いたいことを簡単にまとめると、「ずっと参与員やってたんだけど、本当の難民じゃない人が難民申請しているんだよ。ほんと、やつら日本で働きたいだけじゃん。うそばっかついて。同性愛者って言っているのに結婚して子供がいたり。みんな同じこと言うし、裏で糸引いているブローカーが絶対いるんだよ。昔は入管批判してたけどこれじゃあ批判できないなあ。国連が言うような基準で受け入れたら無秩序になっちゃうよ。日本は島国で経験ないんだから。あ、あと難民が出ないように出身国を応援しないとね」ということです。
国連機関による難民認定のハードルが低いという不可解な主張や、性的マイノリティに対する理解の甘さ、更に就労目的と難民性が同居するという事実を理解しない発言は、彼が難民法および難民認定について限られた知識しか持っていないことを露呈している。参与員制度の大きな問題点は、まさに、彼のような難民法素人が、難民認定という人の一生を左右する業務についている点にある。彼には是非、少なくともUNHCRが行っている難民認定のトレーニングを受けることを薦めたい。難民認定はジョークじゃないんですよ。今の参与員制度では事務局の入管が資料を準備するので、ちゃんとトレーニングやらないとこのように丸め込まれる人も出てくる。難民行政がおかしいことを示すには、シリア出身者がほとんど認定されていないという事実だけで僕には十分だ(もちろん他にもあるが)。
この種の反論は全難連に任せるとして、僕がもう一つ難民研究という視点から指摘したいことは、「この古い思考回路じゃ難民問題は絶対に解決しない」ということだ。今、世界の難民をめぐる一番の問題は、6000万人と言われる強制移動者にどう対処していいのか全くわからないという状況だ。「誰が本当の難民か」を追求してもいいが、そんな作業は追いつかない。難民が出ないようにと言ったところで紛争は長期化し、難民送り出し国の開発なんて夢物語、20年も30年も難民キャンプで生活するといった「長期化する難民状況」が当たり前になっている。その一方で可動性やトランスナショナルなつながりなどを通して人々のリジリエンスも高まり、従来の恒久的解決(帰還、再定住、統合)が想定する直線的なサイクルは現実を反映しなくなった。人々はいろいろな動機と問題を抱え、様々なネットワークや方法を駆使してダイナミックに移動しようとするし、しないかもしれない。
このように複雑で多方向的な移動が主流となっている状況の中で、いまだに「就労目的」や「本当の難民」といった言葉を並べ、更に途上国の開発を主張するといった1990年代的発想は、まるで役に立たない。彼は本当に、出身国の開発を進めることで今の難民状況が進展するとでも思っているのだろうか。彼は難民問題に何十年も従事してきたと言う。しかし、この古い凝り固まった古典的な難民問題理解を恥ずかしげもなく主張するようでは、インドシナ難民以降完全にガラパゴス化したと評価されても仕方がないだろう。
彼の言いたいことを簡単にまとめると、「ずっと参与員やってたんだけど、本当の難民じゃない人が難民申請しているんだよ。ほんと、やつら日本で働きたいだけじゃん。うそばっかついて。同性愛者って言っているのに結婚して子供がいたり。みんな同じこと言うし、裏で糸引いているブローカーが絶対いるんだよ。昔は入管批判してたけどこれじゃあ批判できないなあ。国連が言うような基準で受け入れたら無秩序になっちゃうよ。日本は島国で経験ないんだから。あ、あと難民が出ないように出身国を応援しないとね」ということです。
国連機関による難民認定のハードルが低いという不可解な主張や、性的マイノリティに対する理解の甘さ、更に就労目的と難民性が同居するという事実を理解しない発言は、彼が難民法および難民認定について限られた知識しか持っていないことを露呈している。参与員制度の大きな問題点は、まさに、彼のような難民法素人が、難民認定という人の一生を左右する業務についている点にある。彼には是非、少なくともUNHCRが行っている難民認定のトレーニングを受けることを薦めたい。難民認定はジョークじゃないんですよ。今の参与員制度では事務局の入管が資料を準備するので、ちゃんとトレーニングやらないとこのように丸め込まれる人も出てくる。難民行政がおかしいことを示すには、シリア出身者がほとんど認定されていないという事実だけで僕には十分だ(もちろん他にもあるが)。
この種の反論は全難連に任せるとして、僕がもう一つ難民研究という視点から指摘したいことは、「この古い思考回路じゃ難民問題は絶対に解決しない」ということだ。今、世界の難民をめぐる一番の問題は、6000万人と言われる強制移動者にどう対処していいのか全くわからないという状況だ。「誰が本当の難民か」を追求してもいいが、そんな作業は追いつかない。難民が出ないようにと言ったところで紛争は長期化し、難民送り出し国の開発なんて夢物語、20年も30年も難民キャンプで生活するといった「長期化する難民状況」が当たり前になっている。その一方で可動性やトランスナショナルなつながりなどを通して人々のリジリエンスも高まり、従来の恒久的解決(帰還、再定住、統合)が想定する直線的なサイクルは現実を反映しなくなった。人々はいろいろな動機と問題を抱え、様々なネットワークや方法を駆使してダイナミックに移動しようとするし、しないかもしれない。
このように複雑で多方向的な移動が主流となっている状況の中で、いまだに「就労目的」や「本当の難民」といった言葉を並べ、更に途上国の開発を主張するといった1990年代的発想は、まるで役に立たない。彼は本当に、出身国の開発を進めることで今の難民状況が進展するとでも思っているのだろうか。彼は難民問題に何十年も従事してきたと言う。しかし、この古い凝り固まった古典的な難民問題理解を恥ずかしげもなく主張するようでは、インドシナ難民以降完全にガラパゴス化したと評価されても仕方がないだろう。
スポンサーサイト