参院平和安全法制特別委員会は30日の理事懇談会で、安全保障関連法案の法的安定性を軽視したとも受け取れる発言をした礒崎陽輔首相補佐官を8月3日に参考人招致することを決めた。礒崎氏に公の場で謝罪や発言撤回を求める野党の要求を与党が受け入れた。野党は更迭を求めて攻勢を強めており、参考人招致で幕引きになるかは見通せない。
「法的安定性が『関係ない』のであれば、法案そのものが吹き飛ぶ」。理事懇談会では民主党理事の北沢俊美元防衛相が礒崎氏の招致をこう迫った。与党は招致に消極的だったが、礒崎氏に批判的な声が与党内にも広がったことから受け入れざるを得ないと判断した。
自民党では30日、山東派の山東昭子会長が「(政府の)一員が逆に補佐しない形になっていることは非常に残念だ」と苦言を呈した。額賀派の額賀福志郎会長も礒崎氏は自ら説明責任を果たすべきだとの認識を示した。
公明党も漆原良夫中央幹事会会長が「首相を補佐する人が足を引っ張るのでは仕方がない。国会審議に大きな影響を及ぼしている」と記者会見で述べるなど、与党内に懸念が広がった。
野党は衆院の審議で憲法学者が安保法案を憲法違反と指摘した「違憲性」の問題に続き、礒崎氏の発言で法案の根幹がさらに揺らいだと批判を強める。
30日の特別委では、民主党の広田一氏が「暴言、妄言だ。安倍政権の姿勢を体現している」と礒崎氏の更迭を首相に要求。首相は「法的安定性の確保は当然だ。疑義をもたれるような発言は慎まなければならない」と釈明に追われ、首相自身が礒崎氏を電話で注意したことも明らかにした。
野党は3日の参考人招致で礒崎氏に謝罪や辞任を迫るとともに、4日に開く特別委の集中審議などで首相の任命責任を問う構えだ。
参考人招致実現で勢いづく野党は、新国立競技場の計画見直しをめぐる下村博文文部科学相の責任追及も強めそうだ。自民党の吉田博美、民主党の榛葉賀津也両参院国会対策委員長は30日、新国立問題を巡って8月10日に首相が出席して参院予算委員会の集中審議を開くことで合意。衆院予算委員会も7日に集中審議を開く方向で調整している。
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