梅雨のない北海道旭川は夏を感じるようになった。
京都・大原からやって来た…北海道は真冬の札幌を一度訪ねた事があるだけ。
けれどもこの風景が懐かしい。
(ベニシア)何か野菜の花みたい。
ダイコンの花かな?きれい。
イギリスと全く同じですね。
これも…。
不思議ですね。
何かちょっと懐かしい。
こういう風景見たらイギリスを思い出すから。
何か美しい。
地球が見えるという所…イギリスもこういう場所あるの。
似てる。
このままにしてほしいよね。
これ以上ゴチャゴチャ…ものを作らないでホントにこんな美しいものを残して…。
今私たちの課題だと思うのね。
イギリスで生まれ育ったベニシアさんに故郷を思い出させる緑豊かな北海道。
北の大自然は人々にさまざまな恩恵を与えてきた。
広大な森林はすばらしい木材の宝庫。
かつて畑を開墾するために行った伐採。
今は質のよい木材を求めて林業が行われている。
冬の寒さが厳しいこの地では目の詰まったしっかりとした木が育ち世界でも知られた良質な木材になる。
明治の末旭川に木挽場が出来るとその木材を基に家具作りが行われるようになった。
当時家具職人たちも北海道に移住してきた。
品質のよい木材で作られた家具は人気となり旭川は家具の町として全国に知れ渡るようになった。
木の持ち味を生かしたシンプルでぬくもりに満ちた家具。
長く使われたあとは自然に返っていく家具でもある。
この大自然の中で生きる人の暮らしをのぞかせてもらいたい。
ベニシアさんあるお宅を訪ねた。
へえ〜犬がすごいな。
え〜何匹?こんにちは。
すごくたくさん犬がいるんですね。
びっくりした〜。
こちらのあるじカヌー職人の…みんなそりを引く犬です。
そり!?ああ冬の間に?犬ぞりをする子たちです。
みんなそりを引く犬たちなので働く犬なんです。
松原さん冬は北海道の大自然をフィールドにした犬ぞりツアーを主催している。
30頭のハスキーたちはそりを引くための犬。
ベニシアさんあっという間に仲良くなった。
どこに住んでるんですか?これが今僕の仕事場なんですけどもともと牛舎だった建物を自分で住めるようにして。
ここカヌーも作ってるの?はい。
夏の今の僕の仕事はカヌーを作る仕事です。
木で作ってるの?そうです。
え〜っ!?それも珍しいんじゃない?珍しい事ばっかりやってます。
今上にカヌーがありますから。
え〜っ。
プラスチックの素材が多い中木でカヌーを作っている松原さんは日本でも有数のカヌービルダーだ。
わ〜すごいな〜。
これ初めて見たんじゃない?木で…。
そうですか。
このデザインはアメリカインディアンの?そうです。
でもすごくかっこいいね。
カヌーのいいところは水に浮かんでしまうと木の方が軽いです。
それが不思議。
木の中に空気がいっぱい含まれてて浮力があるから実際浮かんだ時に逆に重たいって感じがしないんです。
プラスチックの方が重たいんですよ。
水に浮かぶと。
それがまた不思議。
不思議ですね。
乗ってみたいな〜。
これすごい。
乗る事ができるんですか?できます。
いきなり来て乗ってみたいって。
是非行きましょう。
工房から車でおよそ20分の…太陽が顔を出しカヌーを楽しむには絶好のコンディション。
(優香)気を付けて。
ありがとう。
ベニシアさん紹介します。
家内の優香。
初めまして。
初めまして。
見送りは妻の優香さんと息子の拓海くん。
拓海くんも一緒に行きたい。
お父さんが大好き。
はい分かった。
ちょっとだけね。
何か乗りたいみたい。
乗った事あるんですか?あります。
去年1歳になる前に。
じゃあ好きかもしれないね。
一緒に3人で?3人でその時。
いいですね。
(優香)行ってらっしゃい。
行ってきます。
バイバイ。
(優香)バイバ〜イ。
バイバイ。
カヌーに乗り込みいよいよ出発。
丈夫っていう感じあるね。
しっかりしてるね。
じゃあ行きますね。
湖を滑るように動き出す。
そうです。
もともとは狩猟を目的に作られたカヌー。
動物に気付かれないように音もなく進む。
ちょっと後ろを振り返ってみて下さい。
そんなにこいだ感じしないけど僕ら出た所あんなはるかかなたです。
え〜すごいね。
すごいでしょ?ビュ〜ンって来た訳じゃないんですけど。
水と空の間に身を委ねれば自然と一体になる。
とってもいい時期ですねホントに。
緑がだんだん濃くなってくるし。
はあ〜!お疲れさまでした!楽しかった〜!すごく楽しかった。
ありがとう。
ありがとうございました。
何かこんなにきれいな地球に生きてるからそれだけ楽しんだらいいっていう事よね。
こうやって人力で動く乗り物がとても体にいいしおなかも減るし。
おなかが減ったらおやつの時間。
いろいろ作ってきたんですけど。
うわ〜すごい。
知り合いの農家さんからお野菜をもらって。
優香さん手作りのおやつ。
地元で取れた新鮮な野菜やスコーンが並ぶ。
なるべく地元で取れるもので新鮮なものをとは思っていてアスパラとか。
今のごちそうはアスパラですね。
うんおいしい。
こういう自然の中に住んでるのはずっと恵まれていて…。
何で北海道?特に木でものを作る仕事だからその素材になる木が北海道の木が一番ベストなんですね。
そういう中で作る事で自然の中で使う道具だから北海道しかないって感じでした。
大阪生まれの松原さんが北海道に移住したのは23歳の時。
その後道庁の研修制度で北米を巡りカヌーの技術とともにアメリカの先住民の文化を学んだ。
カヌーは荷物を運び漁をするための大切な道具。
松原さん夏はカヌー冬は犬ぞりといった暮らしを実践している。
そして道具としてのカヌーやそりを伝統的な工法で再現している。
今作っているのはパドル。
水をかくための道具だ。
鉋を使い手作業で木を削っていく。
その道具は何かのため?初めて見た。
これ名前が南京鉋っていう鉋でどんな曲面も作れる。
ここがみんな水を捉える所で水がスムーズに流れるように。
そこまで考えるの。
はい。
とてもシビアです。
それもアメリカインディアンやってた?結局これはみんな生き物から学んでるんですけどクジラとかイルカとかのヒレのシェイプと同じイメージです。
ああそうか。
松原さんは木で何かを作りたいという思いからカヌーと出会った。
そして木製カヌーからさまざまな知恵を学ぶようになった。
松の匂いがすると思います。
う〜ん匂いいいね。
フレッシュウッドっていう感じ。
少しずつ削られた形になじんでいってもらうように全体をちゃんと削っていかなきゃいけないんですよ。
いっぺんに片っぽだけザクザクッて削っちゃうとバランス崩れて。
その辺はやっぱりもともと生きてた生き物なので…。
じゃあまたちょっとやってほっといてまたやって。
いっぺんにできないですね。
でも木も生きてるよね。
木は生きてますね。
だから切り倒されたんですけどホントに生きてるなって感じします。
絶対そうと思うのね。
ここの暮らしが長くなってくると似たような環境で育っている木ですからつらい冬を何回も何回も乗り越えて生きてきてる木なんだっていうのが分かると樹齢…ホントに200年とか300年とかそういう木を当たり前に使わせてもらっているのでこうやってザクザク削るんですけどここまでなるのに何百年かかったと思ってるんだっていう感じ。
暮らしてて分かる事はたくさんありますね。
北海道の大自然に寄り添う松原さんの暮らし。
使い手こそが最高の作り手。
松原さんの技にベニシアさんは感じた。
翌日。
ベニシアさん本格的なイングリッシュガーデンがあると聞いてやって来た。
カフェーのある入り口を抜けるとその奥に庭が広がっている。
ホンマに何かイギリスみたいね。
すごいな。
イギリスで貴族の家に生まれイングリッシュガーデンに親しんで育ってきたベニシアさん。
懐かしさが込み上げてくる。
こんにちは。
(砂由紀)こんにちは。
びっくりした。
イギリスにいるみたい。
ホントですか!?うれしい。
すご〜いきれい。
この庭を造った…プロのガーデナーだ。
上手ですね。
何年ぐらいやってるんですか?本格的に庭始めて今13年目ですね。
農場だったおよそ2,000坪の敷地を庭に造り替え13年前から公開している。
イングリッシュガーデンの特徴である自然の美しさを生かした庭園はガーデニングファンの間では有名だ。
ここサークルボーダーっていう名前を付けていてホワイトとイエローとレッドアンドピンクとブルーでテーマで花の色をつけていて。
ここは…ボーダーというのは細い帯状の花壇の事。
円形の庭を色ごとに4つに分けている。
上野さんきれいな色の花を見つけたらここに加えるのが楽しみだと言う。
これネギボウズ。
アリウム…。
あれは大好き。
私もすごく好きなのでいろんな箇所に隙間にはアリウムを植えて楽しんでるんですね。
ジギタリスはどうですか?毎年出てくる?2年で植え替えしてでも毎年出てくるのもあるんですけどやっぱり2年目が一番きれいなのでなるべく咲き終わったら新しい苗を植えるようにしてますね。
いろいろな植物を北海道に合うかどうか自分で植えて試して。
これすごくすてき。
家族で石を積んで。
わあすごい。
向こうにウォールガーデンあるでしょ?ああいう感じ。
そういうイメージで。
れんがのアーチを通った突き当たりにはベンチ。
庭の中で視線を集めるフォーカルポイントになっている。
道の両脇にはアリウムとキャットミント。
ここはロングボーダーで長いボーダーを造っていて。
細長い道の脇にさまざまな植物を植えている…ここには上野さんが気に入った野草も植えている。
あっこれまたもれんが。
びっくりした。
これ日本でもあるのねマレイン。
大原の川の近く歩いたらこのマレインが出るんですよ。
結構道端に生えてるような野草とかでも庭に入れるとすごくいいものもあるので。
これもかわいいよね。
アスチルベね。
これも道路脇とか山の中に生えてるんですけどこっちに持ってきてちょっと庭に入れてみたりとかいろいろ試してはいますね。
これあれでしょ?トラデスカンティアだからツユクサの園芸種。
昔はこれハーブですね。
そうなんですか?へえ〜。
あとデルフィニウムがこれから咲き始めて。
デルフィニウムはこれから。
大原はもうデルフィニウム終わりました。
やっぱり全然違いますね。
まだこれから咲くのがたくさんあるのでいつ来ても何か咲いてるように一応バランスは考えてデザインしてるんですよね。
それはやっぱりイギリスのガーデンで覚えた事でやっぱりイギリスのガーデンいつ行っても絶対何かきれいに咲いているのでやっぱりそこでガーデンデザインってすごいってすごく感動して。
ホストファミリーもオープンガーデンを毎月やっていてたくさんの人が来たりティーレイディーってケーキ食べたりとかすごく楽しかったんですよ。
それで自分も庭を造って農場にいろんな人が来てもらえるような場所を作りたいと思って家族で庭造り始めたんですよね。
イギリスで庭が与えてくれる豊かさを知った上野さん。
100年以上前に入植した開拓農家で生まれ育った。
でも家業は大変なので継ぐ気はなかったと言う。
アパレル会社に就職したもののほかにもっと合った仕事があるのではと思い辞職。
転機となったのは留学だった。
ガーデニング研修をしながら英語を学ぶというプログラムに参加しイギリスの庭のすばらしさを体験した。
自分も誰かに感動を与える庭を造りたい。
帰国後独学でガーデンデザインの勉強をしプロになった。
この庭園で真っ先に造ったのがホストファミリーの家で見たミラーボーダー。
道を挟んで左右対称に植物が並ぶ庭には自己流で北海道に合う植物を選び植えている。
ホントに見事と思うのは高さをすごく考えてやってますね。
そうですね。
背丈順に並ぶように。
低いのから少しずつ上がってね。
植物の立体感とかダイナミックなイメージを出したいのと。
すばらしい。
これはクレマチスで。
こっちもまたクレマチスでガーデンのバランスを感じるね。
でもミラーボーダーはこっち考えればこっちも出来ちゃうので結構こっちだけ考えればうまく出来ていくので。
ここの庭特にイギリスにどこでもある植物がたくさんそろってるのね。
イギリスに来たって気分になったけどでもホントに本物のイングリッシュガーデンと思うよ。
百点満点っていうか。
お〜すごい!すごいと思う。
いろんな人が造ってるの見た事あるんですけどこれはホンマにすごい。
うれしい!すごい。
これはホントのイングリッシュガーデン。
ホントですか?ありがとうございます。
上野さんここで一番古くからある庭に案内してくれた。
ここを抜けるとマザーズガーデンにつながっていきます。
マザーズガーデンは?私のマザーが造ってるガーデンなのでマザーズガーデン。
ここは上野さんが庭造りを始める前からお母さんが造っていた庭。
植物の自然のままの姿が生かされている。
お母さんの…あれですねコテージガーデンみたいに自由にさせてるのね。
そうですね。
より植物が伸び伸びとした感じにしてるので。
湧き出るような感じのダイナミックなガーデンですね。
私の母です。
ああ初めまして。
どうもようこそ。
上野さんの庭造りの先輩だ。
この植物の元気さと大きさでホントびっくりしてるのね。
もともと畜産をやってたので牛フンは結構ありましたね。
土をちょっと触っていいですか?はい。
ああやっぱり。
チョコレートケーキみたい。
(悦子)ちょっとしっとり。
(砂由紀)チョコレートケーキ。
ホンマにこんなクランベリーでこれだと植物がすごく根っこが深くまで行って高さがあって。
黒土ですしね。
黒土はいいんですよね。
畑だった場所を庭にし公開するという考えは母悦子さんの協力がなければできなかった事だ。
この上に何かありますか?こっちに行くと山に行けるようになっていて。
こっち行ってみますか?こちらを抜けて。
マザーズガーデンを抜けると現れるのは小高い丘。
かつては牛の放牧に使われていた。
すっご〜い。
すごい。
(砂由紀)すごくすてきですね。
何か天国みたい。
(笑い声)色がすごいね。
(悦子)何かホッとするという空間ですね。
ここは季節ごとに咲く花の種をまきあとは自然に任せているワイルドガーデン。
(砂由紀)いい眺めが待ってるんですよ。
(悦子)間もなく頂上です。
すごいじゃないですか。
ぐるりと見える。
あんまり大きい山じゃないんですけど。
でも眺めが…。
眺めがいいですね。
旭川って盆地になってるからずっと360度山に囲まれてる場所なんですよね。
(悦子)やっぱり草木はね生きてく者にとっては一番大事なもので。
精神的にも全てのものを包み込んでくれるという。
不思議な力ですね。
土いじったり多分植物をいじると何かちょっと気持ちも楽になったりとかそういうのは自分もありますね。
やっぱり美しい花美しいチョウチョウ緑がたくさんあって人間にはそれが一番必要なものじゃないかなと思うのね。
ベニシアさんはいつも言う。
庭はガーデナーの生き方そのもの。
この美しいガーデンは上野さんが歩んできた人生なのだ。
庭を眺めながらのアフタヌーンティー。
イギリスみたいって言ってもらえてすごくうれしかった。
イギリスの庭を造ろうと思ってもやっぱりイギリスを越える庭って出来ないなって自分の中で思ってて。
でもそれを北海道の気候で北海道ガーデンっていうふうにアレンジすればいいやと思って今自分の中では北海道ガーデンっていう感じで造っていて。
北海道イングリッシュガーデン。
ミックスだ。
人によって庭が変わるっていうか下手とか上手って言いたくないのね。
その人がいいと思ったからその人にとってはうれしいんでしょうね。
そうですね。
私も自分でホントに好きな花をどうやって組み合わせたら一番かわいくラブリーに見えるかなとかそういうのを見ながらやっててそれがすごく楽しい。
誰でも自分の庭を少しでも…プランターでも1つでも作って土を触るのが大事だと思うのね。
そうですよね。
トビタロウ。
飛ぶから。
今年産まれたの?今年産まれた。
もうだいぶ大きくなって。
これでまだ3週間?2週間か。
半月ぐらいかな?でもすごく大きく…。
北海道大自然の中自由そして自在に遊ぶ人たちと出会ったベニシアさん。
心豊かな時間を過ごした。
2015/07/29(水) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「北の自然に遊ぶ〜北海道・旭川 南富良野〜」[字][再]
北海道、南富良野に暮らし冬は犬ぞり、夏はカヌーの松原秀尚さん。そして旭川のガーデンデザイナー上野砂由紀さんを訪ねる。自然と調和し楽しむ暮らしに共感を覚える旅。
詳細情報
番組内容
北海道、南富良野に暮らし冬は犬ぞり、夏はカヌーの松原秀尚さん。この地に育った良質な木材に魅せられ移住したカヌー職人だ。工房を訪れ、そして木製カヌーに乗って、かなやま湖の自然を満喫する。次に訪れたのは旭川のガーデンデザイナー上野砂由紀さんが営むイングリッシュガーデン。英国式をベースに北海道の風土に合った植物で構成されるガーデンに感激。自然と調和し楽しむ北海道の人々の暮らしにベニシアさんは共感を覚える
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
おしらせ
[NHKワンセグ2]一部地域では高校野球を放送するために、放送をお休み、または放送時間を変更する場合があります
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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