集団的自衛権:機雷掃海の根拠揺らぐ ホルムズ封鎖で

毎日新聞 2015年07月30日 21時37分(最終更新 07月31日 00時13分)

 参院平和安全法制特別委員会の30日の審議で、集団的自衛権を行使して中東・ホルムズ海峡で機雷掃海を行えるとする政府の根拠が揺らぎ始めた。ホルムズ海峡が機雷封鎖され原油を輸入できなくなっても、電力供給に与える影響は限定的だとの指摘が出たためだ。安倍晋三首相は「乗用車の使用に支障が生じる。救急車などのガソリンはどうなるか」と反論したが、「説得力に欠ける」との批判が出ている。

 政府はこれまでホルムズ海峡が機雷で封鎖されれば、「電力不足によるライフラインの途絶が起こり、病院への電力供給が滞る可能性がある」などと説明してきた。

 中西健治氏(無所属クラブ)は資源エネルギー庁の調査で、2014年の一般電気事業用の総発電電力の電源別構成比が、液化天然ガス(LNG)46.2%▽石炭31%▽石油9・3%−−となっていると指摘し、日本が輸入する原油の8割が通るホルムズ海峡が封鎖されても、電力供給のうち約7%が滞るに過ぎないと主張した。

 中西氏は「1万1000キロも離れたホルムズ海峡の機雷掃海を、自衛権の行使として説明するのは無理がある。これで国民の権利が根底から覆される明白な危険があると考えるか」と追及。首相は「機雷が敷設されてしまったら、どこかの国が(掃海を)やらなくてはいけない」と理解を求めた。

 首相はさらに、ホルムズ海峡を通過するのはLNGもあると反論。「(ホルムズ海峡の封鎖で)夏のピーク時に(電力)供給力の約4分の1を失うことになる」と必要性を強調したが、中西氏は、LNGの最大の輸入先はオーストラリアで、マレーシアやロシアなど他国からの輸入で対応可能だと指摘した。

 政府は、集団的自衛権の行使を認められるのは「国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」としている。首相はホルムズ海峡での機雷封鎖も、こうした状況に該当すると説明してきたが、今後、野党が追及するポイントとなりそうだ。【飼手勇介、樋口淳也】

最新写真特集