三輪さち子、小野甲太郎 石松恒
2015年7月30日22時02分
「絶対にない」「断じてない」「いささかもない」――。安倍晋三首相が安全保障関連法案の参院審議で、こんな断定調を増やしている。法案に対する世論の不安を払拭(ふっしょく)するためとみられるが、「断定」の根拠はというと、いま一つはっきりしない。
「戦争に巻き込まれることは絶対にない」。集団的自衛権を使えるようにしたことで、米国の戦争に巻き込まれないのかという懸念に対し、首相は30日の特別委員会でこう言い切った。
あくまで日本の防衛のために集団的自衛権を使うのであり、それと関係ない戦争に自衛隊は出せないとの理屈だ。ただ、首相がふだんから「日米同盟」を強調しているだけに、野党や憲法学者からは、米国に助けを求められれば、何らかの理屈を付けて米国の戦争に加わることにならないかとの指摘がある。「事実上の戦争参加だ」との批判がある。
徴兵制の議論でもそうだ。首相は「徴兵制の導入は全くあり得ない。今後とも合憲になる余地は全くない。子どもたちが兵隊にとられるという徴兵制が敷かれることは断じてない」と繰り返した。確かに、政治的にもほとんど取りえない選択だ。
だが、首相自らが長年の憲法解釈を変更し、歴代内閣が使えないとしてきた集団的自衛権の行使を認めた。その首相が「将来、徴兵制について憲法解釈の変更がないと断じることは説得力がない」(民主党幹部)。
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