内海智裕
2015年7月30日16時33分
「内定承諾書を出すように言われた」「7月末までに入社誓約書の提出を求められた」。内定を獲得した後でも、別の企業への就活を続けたい、そんな時どうすればいいか。学習院大学では、就活の継続や内定辞退の作法について、ロールプレイング(模擬体験)を取り入れた講座を開いている。同大キャリアセンターは「ほかの大学にはない講座だ」という。
■「それオワハラだね」
「内定承諾書、書かされた人? そのとき何を言われた?」
今月、同大で開かれた「内定に関する講座」。キャリアセンター担当事務長の淡野健さんが聞くと、学生たちが数人手を挙げた。「他の会社は受けないでと言われた」「これ以上就職活動しないで下さいと言われた」「7月末までに誓約書を求められた」。次々答えた。
淡野さんは「それオワハラだね」と返す。「オワハラ=就職終われハラスメント」は今年の就活生の間で広がっている就活用語だ。他社に学生を奪われたくない企業が、内定を出す条件として、就活の終了を学生に求める行為だ。
背景には、経団連の指針による就活スケジュールの後ろ倒しがある。今年の採用活動では、経団連に加盟していない中小企業などが採用活動を先行させ、これからはじまる大手企業の採用選考を前に、内定を出した学生の引き留めに懸命だ。淡野さんは「これまでも同様の事例は存在したが、就活終了を条件化することが、本年のスケジュール変更に伴う大きな特徴といえる。条件化すること自体、問題でありハラスメントだ」と指摘する。
■人事はグイグイ引き留める
講座ではまず、なぜ企業は学生を引き留めようとするのか考える。「企業は1人採用するのにいくらお金をかけていると思いますか」。「企業にとって採用は重要な経営判断です。簡単に断れると考えないこと。断る時は誠意を持って」と話す。その上で、「ただし、新卒の就活は一生に1度。納得できる活動を」と話した。
学生が直面しやすい2つのケースとして、「内定獲得後に内定承諾書の提出を求められたが、まだ就活を続けたい場合」(ケース1)、「内定を辞退する方法」(ケース2)を取り上げた。
ケース1の場合は、行きたい企業の一つならば、必要な書類は期限までに提出し、「納得するまで続けたい」と就活の継続を極力告げるようにという。「ほかの企業の内定を獲得したらどうするの?」「いつ最終判断するの?」が企業が聞きたいポイント。「まだ決められませんが、御社は第1志望群です」などと返答例も紹介した。
ケース2では、実際に出席した学生と模擬面談を実施。「辞退するならば、直接会って謝るように」と、人事への面談約束を取りつける電話のかけ方からスタート。面談では採用担当役の淡野さんが、人事がよく使う「引き留め策」を再現した。
学生から、「先日、内定をいただいたのですが、より優先順位の高い会社から内定をいただきまして。そのことについて話をしたいと思って参りました」。
これを受けて、人事担当の淡野さんはこう迫った。
「より優先順位が高い会社って言うけど、ウチが第一志望って言ってなかった? もう就活やめるって承諾書も書いてくれたよね」「その会社受けてないって言ってたよね」「いつからその会社受けてたの?」「辞退されると採用目標が達成できない」
学生を困惑させるような言葉をぶつけた。
内定辞退役の学生は「グイグイ来られて、何も言えないまま話が進んでしまいそうだった」と言う。
淡野さんはリクルート出身。人事の内情に詳しく、採用担当者の経験もあり、その経験が生かされている。内定を辞退する際のポイントとして、「変なウソはつかない、採用担当者から突っ込まれるだけ。嫌みの一言は覚悟する」と注意する。また、ロールプレイングについて、「学生にとって、企業に電話をかけて辞退を告げることは勇気がいる。一方、社会に出たら『嫌なこと』から目を背けてはいけないのは当たり前。これを大学時代に少しでも経験することが大事です。そして現場感を養う上でも効果は大きい。まわりの学生も見て学ぶという効果がある」と話している。
■内定講座の3カ条
・企業の内定は経営判断の要素。評価をしてくれたことに感謝し、簡単に辞退できると思わない。電話1本やメール1本ですまさない
・就活のスケジュール・計画を立てること。どの企業にいつまでに就活を行うか。判断基準は何か、自分なりに考える
・新卒の就活は一生に1度。納得できる活動を(内海智裕)
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