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Another life online~ファンタジーな世界で最強の農家~ 作者:リアルチートが欲しい

見習い農夫編

22/119

21話目 旅の支度。

 突発的なボス戦をからくも勝利した俺たち。
 今、俺たちは旅立ちの準備をしている。
 あの後は大変だった。村人たちは致命傷は無いものの傷だらけ、セリーナは気絶したのか疲れて寝落ちしたのか強制ログアウト(ベッドやソファでなら寝られるらしい。)してしまった。
結局、比較的元気な俺とヘルマンさんで村人たちを引きずって村に戻ったのだ。
 で、流石に疲れたのでその日はログアウトし、現在に至る。
ちなみに、〈ナイト〉を槍で抑えきっていたヘルマンさんだが…。
 何でも王国の兵士だったが、足を悪くしてやめたらしい。

「でも、良かったのか?〈クイーン〉のドロップ貰ってさ。倒したのはお前だぞ?」
 そう、セリーナは自分には必要ないからとドロップをまる投げしてきたのだ。
「いいです。結局、弓は貰っちゃいましたし、私が〈クイーン〉に集中出来たのはテッドさんが約束通り、〈ナイト〉を釘づけにしてくれてたからです。弓だけでも貰い過ぎですよ。」
 それに村の人からも報酬出ましたしねぇ。 とセリーナは呟く。
 そう、報酬がでたのだ。5000eと蜂蜜×10、だ。
 2人を送る宴を開くと言っていたが、報酬まで払った村の懐は寂しい限りだろう事が予想出来たので丁重に断った。

「で、セリーナはなに作ってるんだ?」
「はい、蜂蜜キャンディと、ハーブキャンディ、あと、お弁当です!」
「弁当?」
 弁当と聞いてセリーナの手元を覗く。
小さな鍋が2つ火にかけられている。
「…弁当、これ?」
「ふふっ、コレはキャンディですよぅ。」
 そう言ったセリーナは鍋を火から外し、鍋の中身をスプーンですくい、もう一本のスプーンで器用に球体にし水を張ったボウルの中に落とす。
「本当は違うやり方もあるんですけど、ゲームだとコッチの方が楽なんです。」
「ほーう。」
 どうぞ、と出来たて蜂蜜キャンディを貰ったので食べてみる。
「うむ、甘い。」
「甘いの苦手ですか?」
「いや、好きなほうだが。」
 セリーナは良かったー。といって出来たキャンディについた水を拭い、粉をふるってコーティングしていく。
…終わったようだ。
「じゃあ、お弁当作りますね?」
 セリーナはベーコンやレタスなどを切り、黄色っぽい粉を水で溶く。
「弁当、何?」
「トルティーヤってわかります?」
 なるほど、黄色っぽい粉はトウモロコシの粉らしい。
 セリーナは生地を薄く焼いて行く。
生地が焼きあがったら野菜と厚めに切ったベーコンを生地の上に乗せて、アイテムストレージからビンを出して中身をかけてから巻いていく。
「そのビンは?」
「セリーナ特製、サルサソースですよー。」

・[なんちゃってトルティーヤ]
 :トウモロコシ粉の生地でベーコンと野菜を巻いた料理。酸味の効いた手作りサルサソースが食欲をそそる。
 HP回復:13%

「おー、うまそう。」
 名前になんちゃってがついてるが、失敗扱いではないようだ。思わず手をのばすがセリーナに遠ざけられてしまった。
「だ、ダメです!コレはお弁当です!…お腹減ったんですか?」
「…あー、いや、匂いにつられて。」

 セリーナはうーん?と考えている。
「じゃあ、何か作りましょう。テッドさんも手伝ってくれますか?」
何か作ってくれるらしい。
「じゃあ、この小麦粉をふるってボウルに入れて下さい。」
「おう。」
「で、これも混ぜてください。」
「なに、これ?」
「砂糖に塩、イースト菌です。」
「終わった。」
「それじゃあ牛乳を入れまーす。滑らかになるまで混ぜてください。」
「まかせろ!」
「混ざりましたねぇ、じゃあ、30分ほど寝かせます。」
「!?」
「で、これが30分寝かせた生地です。」
「!!?」
「熱したフライパンで焼きます。」
「…。」
「表面がプツプツ穴が出てきたらひっくり返して…。」
「…(ぐぅー。)」
「お皿に乗せて、出来ました!」
「ホットケーキ?」
「パンケーキです!」
「何が違うの?」
「…何が違うんでしょう?」
「アイテム名は?」
「…あ、えっと。」

・[パンケーキ]
 :軽食の定番の1つ。蜂蜜やメイプルシロップをかけてもよし。ベーコンやスクランブルエッグと食べてもいい。
 HP回復:8% MP回復:5%

「パンケーキでした!」
「パンケーキか!」
「お茶煎れますね?」
「…食べていい?」
「どうぞ、どうぞ~。」
「いただきます!」
 貰った蜂蜜をとろりとかける。
 …なんか、こういうの小学生以来かも。
 ナイフは使わず、フォークだけで一口大にして口に入れる。
 記憶の中のホットケーキと違い、そのものの甘味は少し薄い、しかし蜂蜜は記憶のそれより濃厚だ。食感もフワフワ感に加えてモチモチ感もある。個人的にはガキの頃のおやつのホットケーキよりはこのパンケーキのが好きかもしれない。
 美味しいが、それと思い出があいまってどことなくほっとする味な気がする。
 …なるほど、ほっとケーキか。
…、
……、
「時間の流れって残酷だよな…。」
「ふぁい!?…ン、ゴクッ、どうしてそんな感想が出たんですか!?」 目を白黒させるセリーナを見て、若いっていいな、とか考えてしまった。



New Skill !!
・[料理]
 :素材アイテムを一定の手順で料理アイテムに変換する事が出来る。

…あれ?


 パンケーキを食べ、準備も終わったので村を後にしようとしたら、村人達が見送りに集まってきた。
 そうそう、[料理]のスキルについてセリーナに聞いたんだが「えー、そうなんですか?おめでとうございます!」と、棒読みで答えた。
何のつもりかはしらないが「計画通り!」なようだ。
 まあ、有用なスキルだから文句はないが…。

「2人共、ありがとな!また村による事があったら、その時こそ宴を開くから楽しみにしててくれ!」
 村人代表でヘルマンさんが礼をのべてくる。
「あー、いいさ。報酬も貰ったし、何の問題も無い。…宴は…、そうだな、楽しみにしておく。」
「はい!その時までには立派な料理人になって美味しい料理を作ります!」
 …いや、俺らの為に開いてくれんだから大人しくしてろよ。
 ヘルマンさん達もそんなセリーナに苦笑いしている。…セリーナはよくわかってないのかキョトンとしていた。

 和やかに別れようとする俺たちの耳に、ブーーン、と言う虫の羽音が聞こえた。
 すわっキラービーか!?と身構える俺とセリーナの前に猫サイズの淡い蜂蜜色の蜂が1匹現れた。
「警戒しなくて大丈夫だ。その子はハニービーの〈ナイト〉だな。」
 ヘルマンさんの言葉に、その蜂をマジマジと見る。
 その名に違わぬ蜂蜜色に、首や足の関節の一部を飾るフワフワの白い毛。若干デフォルメされた丸みを帯びた身体、つぶらな瞳。
「…か、かわいいですぅ…!」
 そう、かわいいのだ。キラービーは何だったんたと言う程に。
 ハニービー〈ナイト〉はセリーナに近寄り、その手に咥えていた花を落とす。

・[カンパニュラ]
 :ホタルブクロ科の花。紫色の可愛らしい花が鈴なりに咲いている。花言葉は「感謝」、「ありがとう」。ハニービー達の信頼の証。

次に俺の所にもきて、小さな袋を俺の手に落とす。

・[カオリレンゲの種]
 :ホタルブクロの小袋に入った種。ハニービー達の信頼の証。

「…これはハニービー達のお礼、なのかな?」
「…これは、…ちょっと、涙腺にきますぅ~…!」
 宣言通り、セリーナは目をうるうるさせている。

 暖かい村人達の言葉と、ハニービーの眼差しを背に俺達は王都に旅立った。
諸説あるようですが、食事がパンケーキで、おやつがホットケーキかなぁ、と作者は思ってます。
あと、テッド(の中の鉄人)は大学生です。十分若いですよ?
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