最低賃金:首相が主導 過去最大の18円増

毎日新聞 2015年07月29日 22時06分(最終更新 07月30日 00時45分)

最低賃金の全国平均と前年度からの伸びの推移(時給方式に変更以降)
最低賃金の全国平均と前年度からの伸びの推移(時給方式に変更以降)
最低賃金の引き上げに伴い賃上げ対象となった労働者の割合
最低賃金の引き上げに伴い賃上げ対象となった労働者の割合

 厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会」(会長、仁田道夫・国士舘大教授)の小委員会は29日、2015年度の最低賃金(時給)の目安額に関し、全国平均で18円引き上げることを決めた。3年連続で2桁の引き上げで、上げ幅は日額から時給に変更した02年度以降最大。今回は、審議会とは別に、安倍晋三首相が大幅引き上げの意向を表明。安全保障関連法案を巡る内閣支持率の低下に、「経済の好循環」で歯止めをかける思惑がうかがえる。

 審議会は労働と経営双方の代表者と、学者ら有識者の3者で構成する。所得や物価などによって全国を4区分。A=19円▽B=18円▽C、D=いずれも16円−−の目安を示した。人口を加味した加重平均が18円になる。Aは過去最高だった前年度と同じ、B〜Dも過去最高。一方、最高と最低の格差は214円となり、前年度から3円広がった。

 今後、各都道府県の最低賃金審議会が目安を参考に地域別の新賃金を決定し、10月をめどに順次、適用される。目安通りなら全国平均は780円から798円になる。菅義偉官房長官は29日の記者会見で「(安倍政権になって)3年間で約50円の大幅引き上げだ。今後、小規模事業者の環境整備などに政府として全力を挙げて取り組む」と述べた。

 今回は、物価上昇に加え、今年の春闘が17年ぶりの高水準で妥結したことを踏まえ、労働側は大幅引き上げを主張。経営側は中小企業の支払い能力などから消極姿勢を見せていた。

 だが、審議会の議論と並行して政府が大幅引き上げへの地ならしを進めていた。安倍首相は16日の経済財政諮問会議で大幅引き上げの検討を指示。23日の諮問会議では宮沢洋一経済産業相が引き上げの環境整備のため、中小企業支援策を提示した。最低賃金が審議会の「外側」で議論されたことには厚労省内からも「聞いたことがない」と驚きの声が上がった。ある同省幹部は「支持率対策だ」との見方を示す。【東海林智、阿部亮介】

最新写真特集