texas-no-kumagusuのブログ

トミオ・ペトロスキー(Tomio Petrosky、日本名:山越富夫)のブログです。


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私のプロフィールの「最近ハマっているものは?」に屁理屈の研究(霞ヶ関文学など)と書いてありますので、その霞ヶ関文学なるものを具体的な例で幾つか紹介します。

「悪法も法なり」

なんて甘っちょろいことを言っていたソクラテスも、この霞ヶ関文学は全くの想定外だったんでしょうね。人間を観察せよと言ってた割には、ソクラテスって無能だったんじゃないかしら。ソクラテスも「無知の知」なんて威張ってたんだから、無能と言われて怒る筋はありますまい。

ん、間違ったかな。ソクラテスは人間を観察して事実を知るより、

「理屈を洗練させよ」

って言ってたのかな。だったら、霞ヶ関文学は、ソクラテスの夢の実現だったのかしら。

◆先ずは、最も有名な古典的な例から。

憲法第9条第2項の
  
前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」

この「前項の目的を達成するため
」を挿入したことで、自衛隊が持てると言う理屈も立つようになった。


◆次は、最近国民が激怒した例。この例をクリックして拡大してみて下さい。

texas-no-kumagusuのブログ-復興予算
全国的緊急に」の一言で、原発事故に全く無関係な全国の施設の建設に復興予算を振り分けて、官僚たちは東北の被災者たちに行くはずの税金を合法的に盗むことが出来た。


以下、調べた物の一部を列挙する。

◆2012/08/01 共同通信の記事:
(原子力規制委員会の)田中(俊一)氏は原発の40年運転制限に関し

「古い原発の安全性確保のために必要。40年超の原発は厳格にチェックし、運転させない姿勢で臨むべきだ」

と表明した。

厳格に」というのは例外があるのが霞が関の読み方。例外を認めないときには、例外なくと言う。

◆「完全民営化」と「完全民営化」とが、霞ヶ関文学では全く別の物を意味する。

「完全民営化」は株式と経営がともに民間企業に譲渡される、文字通りの民営化を指すが、「完全に民営化」になると、法律上3パターンほどあり得る民営化のどれか一つを「完全に」実現すればいいという意味になる。

政府系金融機関が「完全民営化」されることで天下り先を失うのを嫌った官僚が、政治決定の段階では入っていなかったの一文字を法案の中に潜り込ませた。

◆単語の後にをつけることで、事実上何でも入れられるようにしてしまう。

◆「予算や権限を背景とした押しつけ的な斡旋による再就職(天下り)を根絶する」

だから押しつけでなく、相手から要望された場合は天下れる。

◆【歳入庁の創設など】(給付付き税額控除など) 再分配に関する総合的な施策と、その実現までに実施する簡素な給付措置、住宅の取得に関する(負担軽減)措置、歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制の構築に関する措置について、具体化に向けて検討し、結果に基づき速やかに必要な措置を講じなければならない

「講じなければならない」と言うのは「講じたいけど、講じられない」と言う状況も許す。

また、「速やかに」と言っているだけで、「可及的速やかに」とは言っていないので、しばらく放って置ける。

◆「与野党のコンセンサス(合意)により社会保障充実へのスキーム(枠組み)を整備して

の意味は「先に増税して」

◆「純減」と「削減」。
1000人の人間がいたとする。そのうち、100人を辞めさせ、新たに100人を採用。この場合を「削減」と言う。だから、人数は変わっていない。

本当に減らしたければ、「純減」と言う。

◆原発事故関連用語
  事故→事象、脱原発→脱原発依存老朽化→高経年劣化、経年変化→高経年化、汚染水→滞留水、除染→再表面化、人足手配師→協力企業、水素爆発→爆破弁開放

◆「えー、原子炉の内部と外部の圧力が変化して同じになるという現象がありまして・・」
「それって、爆発じゃないんですか」
「えー、爆発的事象、そういう呼び方をすることもあります」

◆原子力規制委員会設置法附則第6条の2では、元の官庁への異動を認めない。

しかし、但し書きで、「ただし、この法律の施行後5年を経過するまでの間において、当該職員の意欲、適正を勘案して特にやむを得ない事由があると認められる場合には、この限りではない。」

だから、自分たちの定年退職が差し迫っているこの法律を作製した今の官僚たちには、元の官庁への異動を認める。ただし、今から5年以降に退職する若年官僚のことなど知ったこっちゃない。その時はお前ら自分で霞ヶ関文学を駆使して、自分の保身を謀れ。

◆2012年9月3日東京新聞の朝刊:

『保安院によると、調査を終えた原発直下の断層は、2010年にできた原発の耐震安全性に関する審査の手引きに従い、自ら地震を起こす「主断層」、これにつながる「副断層」、さらに「これら以外」に分類する方針だ。
東京電力福島第一原発事故を受け、保安院は今年2月の専門家会議で、この手引について「活断層の真上で重要な建物の設置を認めない」との解釈を説明。これが「活断層上に原子炉があった場合は廃炉」との判断につながっているとされてきた。』 

しかし、手引きには活断層の真上に原子炉を設置することを「禁止する」との文言はなく「想定していない」との表現。保安院は解釈について「説明用の意訳であり、正式見解ではない」と説明する』

これらの例外の場合、活断層の真上でも重要な建物の設置を認める」という伏線。

◆カナダ人の日本語研究家イアン・アーシー(Iain Arthy)著『怪しい日本語研究室』で紹介されている『平家物語』の冒頭部分の「整備文訳」の抜粋。ここで「整備文」とはお役所言葉を意味する。

原文:
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕す。奢れる人も久しからず、只春の夜の夢の如し。猛き者も終には亡ぬ、偏に風の前の塵に同じ。

整備文訳:
 某宗教法人による教育放送を中心に示唆されているように、情勢や環境の悪化、退化、激動化等の変化が、人生、人間社会をはじめ、宇宙空間を形成する諸現象に随伴する不可避なファクターであると考えられる。現時点では指導的地位にある各政治・経済主体が整備している絶対優位についても、将来的には後進化、 劣後化に転ずる必然性を内包していることは、以前から指摘されている通りである。自信過剰により、各自の活動分野におけるヘゲモニーが長期間にわたって持続不能となるパラダイムが支配的であり、究極の結果としては、その優勢が全面的に排除される傾向が認められる。


◆他にも多くの例が日本語のアンサイクロペディア「お役所言葉」の項に載っていますので参考にして下さい。

凄いでしょう。こんな屁理屈が通ると信じているのは、やっと理屈を捏ねくり回すことを覚えた思春期の連中と、官僚の世界だけなんじゃないですか。でも、その官僚の凄いところは、この屁理屈を通してしまうところなんですね。

最後に、上のアンサイクロペディアの項に載っていた事例も紹介しておきます。

「お答えを申し上げます。先ずは近年のサブプライムを端緒とします世界同時株安に対しまして、内外のシンクタンクが様々なスキームで対応しておるということは公知の事実であろうかと存じます。そこで政府と致しましては、マスタープランの作成が喫緊の課題であろうかという風に考えておるところで御座いまして、可及的速やかな解決に向けまして、引続き鋭意努力して参る所存であります。

尚、燃料価格の高騰や環境問題その他等につきましては、各担当省庁におきましても現在鋭意解決に向けた努力をしておるという風に承知しておりますけれども、現段階におきましても必ずしも解決が為されていないということは誠に遺憾に存じております。

いずれに致しましても、先ずは斯様な現況を厳粛に受け止めねばならないという風に存じます。引続き、各方面と対応を協議するなどの、情報交換や解決に向けた連携を図りながら、所要の対策を講じて参りたい、こういう風に考えておる次第で御座います。」
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