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東芝の原発事業に1000億円単位の減損リスクも

週刊ダイヤモンド編集部
2015年7月27日
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 ところが、11年3月の福島第1原発の事故で環境は一変した。世界中で原発の新規建設の受注が厳しくなった。競合メーカーの独シーメンスは原発から撤退し、米ゼネラル・エレクトリックも、原発を非中核事業へと遠ざけ始めた。

 「このころから監査法人との間で議論が出るようになった」と、東芝の内部に詳しい関係者が語るのは、「WHの減損」という巨大なリスクについてだ。

 東芝はWHを高額で買収したため、純資産と買収価格との差額ののれんが約3500億円も発生した。のれんについて、東芝は米国会計基準の下で毎年1回の減損テストを実施している。しかし明らかな事業環境の悪化にもかかわらず、減損を行った形跡がないのだ。

 その後、WH株の20%分を約1250億円で追加取得せざるを得なかった経緯もあり、いまだに多額ののれんを抱えているもようだ。

 このため、東芝への信頼が失墜した今、取引先、競合メーカー、市場関係者、監査業界などあらゆる目が、WHの減損リスクを追い掛けている。これまでの会計判断に不正はなかったのか──。彼らの目はそう問い掛けているのだ。

 その先に見え隠れするのは、最悪の“連鎖シナリオ”だ。WHののれん減損を迫られた上、東芝が大幅な赤字に陥り、その影響で繰延税金資産の取り崩しにまでつながってしまうというものだ。

 繰延税金資産は、税金の払い過ぎを後に取り戻せることを見越し、資産計上するもの。このため、赤字で将来税金を納めないとなると、その資産性に疑問符が付く。損益計算書上で費用を計上し、取り崩さなくてはいけない可能性が出てくるのだ。

 ここで東芝におけるその二つの資産の規模を示した下の図を見てほしい。WHをはじめ、買収攻勢を続けてきた“勝負師”の東芝は、貸借対照表(BS)上でのれんが大きく膨らんでいる。これら脆弱な二つの資産だけで株主資本の7割も占める状況なのだ。

 巨額減損という最悪のシナリオが起きると、財務は一気に窮地に陥ってしまい、不正会計のインパクトをはるかに上回る可能性がある。「懸念はない」と強調した冒頭の前田CFOの発言は、こうした業界から向けられる疑いへの火消しという意味合いもあったのだ。

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