高い技術力で次世代を担う革新の種を生み出そうとする東大発ベンチャーを追う。
アップル、アマゾン、グーグル――米企業が技術トレンドをけん引する状況が長く続いている。これら世界の巨人に対抗するべく、高い技術力を武器として革新の種を生み出そうという動きが国内でわき上がりつつある。その先頭を走るのは、国内屈指の才能が集まる東京大学を発祥としたベンチャー企業だ。
「グーグルの先を行く技術を狙っている」。トレードマークのTシャツを着て会議室に現れたプリファード・ネットワークス(PFN、東京・文京)の西川徹社長は、涼しい顔でそう言い切った。同社が取り込む人工知能は、従来と比べて高い精度を実現できるディープラーニング(深層学習)と呼ばれる技術だ。
ディープラーニングは、網の目のような脳の神経細胞をモデルとして処理の階層を深くする技術。従来の人工知能よりも高い精度でデータ内部に隠れたパターンを認識できる。幅広い用途への応用ができることから産業界からの期待も高い。現在でも、映像を解析して人の流れを分析する、大量の文章をジャンルごとに分類するといった一部の用途で使われ始めている。
プリファード・ネットワークスの実機デモ。深層学習の機能を持つ複数のロボットをコース内で走らせる。始めはロボット同士がぶつかってしまうが、学習が深まるにつれて、お互いをよけながらスムーズに走行できるようになる。
グーグルも関連ベンチャーを買収するなど、ディープラーニングの開発を強化している。IT界の盟主というべき強大なライバルに対し、独自性のある技術と国内企業との連携で対抗していくと西川氏は自信を見せる。
■ファナックやトヨタと共同開発
PFNの設立は2014年3月。東京大学の赤門にほど近い地下鉄・丸ノ内線の本郷三丁目駅に隣接するビルにオフィスを構える。ソフトウエア技術者を中心に約25人のスタッフが集まる。
西川氏がPFNの母体となる会社を起業したのは06年だった。東京大学大学院で共に研究した仲間や国際的なプログラミングコンテストで知り合った京都大学のソフトウエア技術者を集めた。研究で培った自然言語処理の技術を背景としてWeb向けの検索エンジンやデータ分析サービスを開発し、実績を上げてきた。
PFNを分社化した理由は、事業を人工知能に特化し、出資を得やすくするためだ。実際、14年10月にはNTTからの出資受け入れを発表した。同時期にトヨタとの自動運転車の共同開発を明らかにしたほか、15年6月にはパナソニックや産業用ロボットのファナックとの協業も公表した。
日本を代表する企業がPFNをこぞって後押しする理由は2つある。1つは深層学習をハードウエアと組み合わせることができるため応用の範囲が広いこと。もう1つは技術の独自性。売り物は、個々のロボットが学習の経験をリアルタイムに共有できる「分散学習」だ。
産業用ロボットであれば、工場内に配置した複数のロボットにディープラーニングを処理する演算装置と各種センサーを取り付け、ネットワーク回線でつなぐ。センサーの情報を解析し、ロボットに動作を考えさせつつ、作業を実行する。その後、続けてセンシングする。そのループを回していくことで、各ロボットがシステム全体を効率化する動作を学習していく。
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