102歳自殺:「苦痛思い涙こぼれる」 東電提訴の遺族
毎日新聞 2015年07月29日 21時57分(最終更新 07月30日 00時06分)
東京電力福島第1原発事故による強制避難を前に、福島県飯舘村の大久保文雄さん(当時102歳)が自殺したのは原発事故が原因として東電に計6050万円の損害賠償を求め福島地裁に提訴した大久保さんの遺族が29日、福島県庁で記者会見し、「102歳まで生きた人がなぜ自ら命を絶たなくてはいけなかったのか。東電には命の尊さを分かってほしい」と訴えた。
提訴したのは大久保さんの義理の娘の美江子さん(62)ら3人。美江子さんらによると、大久保さんは飯舘村で生まれ育ち、結婚して8人の子どもに恵まれ、99歳の白寿の祝いには村民が100人近く集まった。
しかし、穏やかな生活は原発事故で一変した。2011年4月11日、自宅で大久保さんと美江子さんの2人でテレビを見ていると、村全域が計画的避難区域になるとのニュースが流れた。大久保さんは「俺こっから出たくねえ。長生きしすぎたな」とつぶやき、翌12日朝に自室で首をつって亡くなっているのが見つかった。
飯舘村は今も全村避難が続く。美江子さんは「村はじいちゃんの全てだった。どんな気持ちで自殺したのか、その苦痛を想像すると今でも涙がこぼれる。東電には責任を認め謝罪してほしい」と話した。【土江洋範】