ワシントン=杉山正
2015年7月29日14時46分
米国務省は27日、世界の人身売買をめぐる2015年版の報告書を発表した。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉国のマレーシアや、54年ぶりに国交を回復したキューバが昨年の最低ランクから格上げされ、一部議員からは「報告書の政治化」との指摘が出ている。
報告書は世界188カ国・地域を対象に、人身売買や強制労働などの実態を調べ、4段階にランク付けしている。
米国で6月に成立した貿易促進権限(TPA)法には、この報告書の最低ランクの国との貿易協定について議会での迅速な審議を認めない条項がある。報告書の発表前から、マレーシアが格上げされる見通しとの報道を受け、超党派の議員約160人がケリー国務長官に書簡を送り、格上げをしないように求めていた。マレーシアでは、ブローカーが介在した外国人労働者の劣悪な環境などが問題になっている。
報告書は、マレーシア政府が人身売買対策に関する法律改正に取り組んだことなどを評価。国務省は「政府が最低限の基準を満たすため重要な努力をした」と評価し、格上げとTPP交渉とは無関係だとした。
また、キューバについては、強制的な売春の対策に進歩があったとしている。
報告書を受け、人権団体や議員が非難。メネンデス上院議員(民主)は「政府は人身売買の被害者に背を向けた。明らかな報告書の政治化だ」との声明を出した。
一方、報告書は日本について、女子高生らを使った「JKビジネス」が少女売春の温床になっているとしたほか、「外国人技能実習制度」をめぐり、一部で強制労働の状況があると指摘した。昨年から引き続き、4段階のうち上から2番目の評価となった。(ワシントン=杉山正)
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