デストラーデ「野茂は人間だけど、イチローはエイリアンだね」
webスポルティーバ 7月29日(水)14時0分配信
久しぶりに来日を果たした元西武のオレステス・デストラーデ。前編では90年代の西武黄金時代についての話を中心に聞いたが、今回は日本人メジャーリーガーを中心に、これからの日本野球について熱く語ってもらった。
◆前編はこちら>>デストラーデが語る「西武黄金時代と日本野球」
―― デストラーデさんは90年から3年間、日本でプレイし、93年にメジャーリーグに復帰しました。その数年前に、セシル・フィルダーやビル・ガリクソン、ウォーレン・クロマティが日本球界を経て、メジャーリーグで活躍しました。日本人にとって、日本と大リーグとの距離が縮まった印象があります。
「私は、メジャーリーグと日本の一軍との距離は遠くに感じていなかったよ。結局、日本の選手やファンが、大リーグを精神的な部分(マインド)で遠いものと考えていただけじゃないかな。実際、アキ(秋山幸二)の身体能力はメジャーリーグでオールスターに出場する選手ぐらい高かった。ラルフ・ブライアントやブーマー・ウェルズ、マイク・ディアスといったほとんどの外国人選手が『アキは間違いなくメジャーで通用する』と話していたからね。キヨ(清原和博)のパワーもメジャーで通用しただろうし、渡辺久信も素晴らしい投手だった。ただ……アキが実際にメジャーリーグに行っていたら、成功するのは難しかったと思うんだ。技術ではなく、マインドの部分での準備ができていなかったからね」
―― 95年に野茂英雄さんがドジャースと契約し、衝撃を与えるほどの活躍を見せてくれました。
「野茂さんの成功を確信していたよ。フォークや身体能力の高さだけでなく、野茂さんは素晴らしいマインドを持っていた選手だったからね。ドジャースという名門チームを選び、それなりの成績ではファンも納得しない。プレッシャーは相当なものだったんじゃないかな。でも、野茂さんはそれをものともしない強いマインドがあった。だから、あれだけの活躍ができたんだ」
―― 野茂さんと対戦経験があっただけに、他の選手からアドバイスを求められることはなかったですか?
「カルロス・バイエガをはじめ、何人かのラティーノの友人たちがアドバイスを求めて来たよ。僕は『野茂は本当にすごい投手で、私もいっぱい苦しめられたんだから、あなたも同じ苦しみを味わいなさい』と。野茂さんの攻略につながる秘訣を知っていたんだけど、あえて教えなかったんだ(笑)。1年後、バイエガは『野茂は本当にすごかった』と言ってきたよ(笑)」
―― 野茂さんがメジャーに挑戦してから20年、日本とメジャーリーグの距離はグッと近くなったと思います。
「野茂さんが大きな橋を渡ったから『自分もメジャーリーグに行ける』と、あとに続く選手が出てきた。イチロー、松井秀喜も強いマインドを持った選手だったね。新庄(剛志)は、打率などを見ると決していい選手ではなかったけど、彼らと同じく強いマインドを持っていた。だからメジャーリーグでもプレイできたと思うんだ。今の日本人の選手は子どもの頃からメジャーリーグを目指している。20年前とは全然違う。そういう強いマインドがあるから、日本はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2度のチャンピオンになれたんだよ」
―― 野茂さんから数えて、日本人メジャーリーガーの20年の歴史で、投手は安定した活躍を見せていますが、野手は厳しいように感じます。最近は試合に出ることも難しい状況です。
「こればかりはケガでどうにもならないこともあるし、契約の大きさがプレッシャーになっていることもある。ただ基本的なことを言えば、日本人野手にとってメジャーリーグはとてもタフな場所だということだね。メジャーリーグは30球団あって、1チームにつき12人ぐらいの投手がいる。日本とは投手の数が全然違う(笑)。これだけの投手の情報を勉強するのは大変なことだよ。だからこそ、松井秀喜は素晴らしい選手だと思うんだ。しかも、ヤンキースという名門でスターになった。彼は本当にスマートな選手だったね。ホームランは打者にとって魅力のあるものなんだけど、松井はそれを犠牲にして打点や得点が大事だと理解していた。だから、ジョー・トーリやデレク・ジーターは、松井のことが好きだったんだ」
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