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パスピエが、7月29日にシングル『裏の裏』をリリースした。同曲はカットアップ風に刻んだイントロとバンドの原点に近いメロディーラインが特徴的で、キャッチーさと実験的要素を上手く融合させている楽曲だ。素朴なサウンドの「かざぐるま」やピチカート・ファイヴのカバー「スパイ対スパイ」など、カップリングも充実した内容となっている。今回リアルサウンドでは、もはや恒例ともいえるバンドの中心人物・キーボードの成田ハネダと、パスピエの特徴の一つであるアートワークや歌詞を手がけるボーカルの大胡田なつきに話を訊き、改めて提示された「パスピエらしさ」や楽曲解説、海外で学んだことや『フェスミックスCD』を出す定義について、大いに語ってもらった。
「第三者から見た『パスピエらしさ』って何だろうと改めて考える機会になった」(成田)
――前回のインタビューでは、フランスへ旅立つ前の心境を伺いましたが、実際に行ってみてどうでした?(参考:パスピエが語るポップミュージックの最適解 「キャッチーと奇をてらう、どちらかに寄りすぎてもダメ」)
成田ハネダ(以下、成田):思ったよりお客さんが来てくれて、日本のバンドにある種の物珍しさや興味を持ってくれているのだなと感じました。あと、今回の海外遠征ですが、諸事情によりメンバー+コンダクターだけで行くことになって、海外の媒体さんやレーベルとのやりとりも、全て自分たちがやりました。僕はてっきり「クールジャパン」的な文脈に位置付けられて呼ばれたのかと思っていたのですが、実際訊いてみたら、プランナーはアジアの骨太なバンドが聴きたくて声を掛けてくれたそうなんです。ワーナーミュージックのロンドン支社にも足を運んで、色々とアドバイスを貰いました。
大胡田なつき(以下、大胡田):見えるものや感じるもの、吸ってる空気すらも違う気がして。ここにいながら曲を作ったり、歌を書いたりしたら全然違うものができるんだろうなと思いました。
――先日の『印象D』を見て思ったのですが、5人がバンド内でそれぞれ個を立たせるパフォーマンスが目立つようになりました。ライブへの意識は海外を含めたここ最近の公演でどう変わりましたか。
成田:海外において、初めて見る観客に囲まれてライブを行うことで、メンタル的に改めてアップデートされ、初心に戻った感覚がありました。日本では、年末に武道館を控えているなかでどんどん大きいステージもやらせてもらえるようになったし、ホーム的な雰囲気のある『印象D』ではいろんなチャレンジが出来ました。
大胡田:私も、すごくダイナミックに動いてみたり、思いっきり叫んでみたりと挑戦を続けて、武道館に向けてバンドとともにまとまった形になっていければいいという考えです。
――ニューシングル『裏の裏』の アートワークのイメージですが、今回のテーマと、何にインスピレーションを受けたのかを教えてください。
大胡田:楽曲タイトルが「裏の裏」なので、合わせ鏡のようなものにしたのですが、描き進めていくうちに万華鏡みたいになりました。色は塗り方を水彩系から厚塗りのタッチに変えたことも大きいです。
――ジャケットも毎度工夫されていますが、今回はどのように加工を?
大胡田:ジャケットは艶感を出してもらって、より瑞々しさが味わえるようになりました。あと、『裏の裏』にちなんで、初回盤だけ歌詞カードをトレーシングペーパー(裏側が透けて見える紙)の裏側に印刷しているので、パッと見はわからないかもしれませんが、気付いてほしい(笑)。この先は手触りや質感といったような、素材面でのチャレンジにどんどん挑戦していきたいです。
――楽曲自体は、再びテレビアニメ『境界のRINNE』(NHK系)のオープニングに起用(「トキノワ」はエンディングテーマ)されていますが、今回はどういうテーマで作りましたか。
成田:先方からは「パスピエらしく」というリクエストがありました。
――パスピエの音楽って、意図的に不定形にしていて、ひとつの「らしさ」に収まらない部分があると思うのですが…。
成田:だから難しいお題でしたね。第三者から見た「パスピエらしさ」って何だろうと改めて考える機会になりました。
――そしてこの曲に辿りついたわけですが、メロディの感じは「トロイメライ」などの『ONOMIMONO』収録曲に近いですよね。
成田:この曲はデビュー前に作ったもので。時期でいうと「トロイメライ」「最終電車」「電波ジャック」の原案が出来ていたときに、この曲の元になったものがあったんです。バンド自体は、僕がクラシックを経由したうえで「バンドを組みたい。音だけで面白いことを伝えたい」と思ってパスピエを始動させ、ライブバンドとしてシフトした時期を通り過ぎていて。そのうえで「改めて打ち出したいパスピエらしさ」を考えたとき、デビュー前の楽曲を今の僕らがリメイクすることが、表現技法として近いのかなと思ったんです。もちろん『境界のRINNE』の主題歌でもあるので、それも踏まえた和テイストに仕上げつつ、当時のサウンド感で表現していきました。
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